坪谷 亮
FPサテライト株式会社 取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 日本FP協会 CFP®認定者
大学時代にFPについて知り、22歳のときにCFP®を取得。
FPや金融業界の現状を知り、お客さまとの利益相反を一度も起こしたくないという思いから、2022年にFPサテライト株式会社に入社。個人、法人両方のコンサルティングを、中立的な視点からサポートしている。
2024年1月29日
経営ノウハウ
個人事業主
飲食店を開業したものの、想定していたほど売上が伸びずに困っている経営者もいるのではないでしょうか。その場合は、来店客数や客単価を上げる方法を洗い出し、店舗のコンセプトに合わせた幅広い施策を立てることが有効です。
ここでは、飲食店の売上アップをめざすための基本的な考え方と、すぐに実践できる売上アップの9つの施策についてご紹介します。
飲食店の売上が思うように上がらないときは、まず売上予測と実際の売上を比較し、店舗運営の課題を分析した上で、課題に対する打ち手を考えて実行していくことが必要です。
飲食店の売上は、「来店客数×客単価×来店頻度」という式によって分解することができます。「来店客数」とは来店したお客さまの人数、「客単価」とは1回の来店でお客さまが支払う平均金額、「来店頻度」とは、お客さまがどのくらいの頻度で来店するかを表します。これらの要素のなかで、どこに課題があるかを把握し、具体的な目標を決めて施策を立てます。
また、売上がアップしたとしても、経費なども増えて利益が出なくなってしまうと経営は安定しません。売上アップを考える際は、コストの削減についても併せて検討するほうがいいでしょう。
飲食店の来店客数を上げる施策を考える際は、店舗のコンセプトを今一度見直します。ターゲットにしたい顧客層に合わない手を打っても、来店客数の増加が期待できないからです。
どのような人が顧客ターゲットなのかを改めて明確にした上で、「顧客層に合わせた情報発信を強化して、店舗の認知度を上げることで集客アップを狙う」「お客さまの来店動機を分析して、顧客層に合った新メニューの作成やサービスの軌道修正に活かす」といった施策を考えていきます。
飲食店の客単価を上げる方法としては、看板メニューのリニューアルのほか、季節限定メニューや追加注文しやすいメニューの開発などがあります。また、接客時の声かけで追加注文を促す方法も考えられるでしょう。
こうした施策を考える場合にも、顧客ターゲットを念頭に置くことが大切です。どの顧客層に対して、どのサービスをどのような価格帯で提供するかまで検討します。たとえば、学生や若手ビジネスパーソンなどに対しては、ボリュームの多さをウリにしたメニューを開発することなどがあります。
飲食店が売上を安定的に上げるには、来店頻度を増やすことがポイントとなります。そのためには、新規のお客さまの獲得だけでなく、リピーターやファンを増やしていく施策が必要です。新規来店客には積極的に看板メニューをすすめるほか、ポイントカードやクーポンの活用も効果的です。メニュー、インテリア、接客などにおいて顧客満足度を高める努力も大切でしょう。
また、店舗の回転数を上げることも、お客さまの来店頻度を増やすことにつながります。注文後の料理提供や片付けのスピードを上げる工夫のほか、接客時や会計時の時間短縮としてセルフオーダーシステム、POSレジ、キャッシュレス決済の導入も効果的です。
売上がアップしても、それ以上にコストがかかっては意味がありません。店舗を持続的に経営するためには、ランニングコストをしっかり意識することが大切です。
飲食店のコストのなかで、大きな比率を占めるのが売上原価です。まずは、原価率を適正な範囲に抑えることが重要になります。
メニュー数を欲張りすぎると必要な食材の種類が増え、原価率が上がるとともに、店舗のコンセプトからもぶれてしまう可能性があります。競合店と差別化できる看板メニューを1、2品に絞って打ち出し、同じ食材から複数のメニューを開発することで原価率を下げ、比較的安価な看板メニューを多く提供することで利益を出すのもひとつの方法です。その利益をほかの食材に回し、高付加価値なメニューを限定的に提供するのもいいでしょう。
また、飲食店のコストのなかでは、人件費も大きな比率を占めます。人件費の削減には、混んでいる時間帯、客数が少ない時間帯を見極めた適切な人員配置をするほか、POSレジやキャッシュレス決済によるオペレーションの効率化も有効です。
続いては、飲食店の売上アップをめざすための具体的なアイディアを、9つご紹介します。自分の店舗でできることから着手してみてください。
来店客数や来店頻度を上げるためには、まず店舗の看板メニューの開発が重要です。ジャンル、食材、調理方法などに工夫をこらし、競合店にはない独自性のあるメニュー開発をめざします。
その上で、人気のメニューをグレードアップしたり、ボリュームアップしたりして金額を上乗せすれば割高感が薄れ、客単価アップにつながりやすくなります。
また、追加オーダーしやすいおつまみやデザートといった安価な単品メニューや、「ドリンクセット」「晩酌セット」など、お得感のあるセットメニューの導入も検討してみましょう。
「1日10食限定」や「季節限定」など、期間限定で特別メニューを展開することは、ファンやリピーターの来店意欲を高めるのに効果的です。「今しか味わえない」という制限を設けることで、足を運んでもらえる機会が増えます。金額をやや高く設定することで、客単価アップの効果も期待できるでしょう。
また、コーヒー店が人気ベーカリーとセットメニューを企画するなど、ほかの飲食店とのコラボレーション企画もインパクトがあります。
こうした限定企画を必要なタイミングで提供するために、日頃からアイディアをストックして、準備しておくことをおすすめします。
飲食店の集客は立地頼みだった時代もありましたが、デリバリーサービスが広く認知された昨今、店舗の認知度と利用頻度アップのためにデリバリーをはじめることも一案です。店舗周辺より広範囲のお客さまに利用してもらう機会が生まれ、デリバリーをきっかけとしてファンやリピーターを獲得できる可能性もあります。
また、来店が集中する時間帯にテイクアウトを実施することも、混雑を避けたいお客さまの利用機会の損失を防ぐのに効果的です。イートインと両立して取り組むことができれば、売上アップの可能性は高いでしょう。
地域のお祭りやイベントに積極的に出店したり、パーティー会場などで料理を振る舞う出張販売を行ったりして、店舗の宣伝につなげる方法もあります。地域での認知度を上げ、新規のお客さまを呼び込む効果が期待できるでしょう。
営業時間を増やすのも売上アップのひとつの方法です。夜しか営業をしていない店舗で、新たにランチやモーニング営業をはじめるなどすれば、シンプルに売上を増やせるというメリットがあります。また、ランチやモーニングを利益が出るかどうかのギリギリの安価な価格設定にしてお得感をアピールすることで、集客を促し、認知度の向上や新規のファン獲得を狙うという戦略も考えられます。ただそのためには、メインの売上を作る時間帯で、しっかりと利益を出せることが前提となります。
営業時間を延長したり再設定したりする場合は、時間帯ごとの顧客ターゲットと目的を明確にしていくことがポイントとなるでしょう。
飲食店の存在を知ってもらうために、グルメ情報サイトに店舗情報を掲載することは有効です。今は、グループで食事を楽しんだり、歓送迎会などを開いたりする際に、グルメ情報サイトで予約を入れるケースが多くあります。グルメ情報サイト経由で来店したことを機に、リピーターになってくれるお客さまもいるかもしれません。
「売上の8割は、全顧客のうち2割の優良顧客から生み出されている」といわれるとおり、飲食店の継続的な売上は、店舗を強く愛してくれるリピーターやファンを、どれだけ多く獲得できるかにかかっています。
その点からも、ポイントカードやクーポン発行などを活用し、リピートすればするほどメリットが大きくなる仕組みを用意することは非常に効果的です。「来店5回で看板メニューが無料」など、既存のお客さまに限定した企画の実施は、さらなるファン化を促進するので、積極的に取り組みましょう。
比較的若い層を顧客ターゲットにした店舗であれば、InstagramなどのSNSを活用することも有効です。アカウント作成や運営に費用はかからず、手軽にはじめられるのがメリットですが、定期的に来店してもらうためには、価値のある店舗情報を発信し続けることが大切です。
また、ユーザーへ情報発信やデジタルクーポンの発行などができるアプリを活用すれば、特に既存のお客さまのリピーター化に力を発揮するでしょう。
売上アップと併せて利益を出すためには、オペレーションの効率化による人件費の削減を検討することも必要です。たとえば、店舗にPOSレジを導入すれば、会計業務が削減され、売上の分析も自動化されるなど、大幅な業務効率化が図れます。
また、キャッシュレス決済を導入すれば、顧客満足度だけではなく、会計時間の短縮、会計時のミス軽減などにも効果的です。現金を持ち歩かない顧客層の来店機会損失の防止にもつながるでしょう。
こうしたオペレーションの効率化によって、スタッフがよりていねいな接客に力を注げるようになることも大きなメリットといえます。
飲食店のレジについては、下記の記事をご覧ください。
飲食店のキャッシュレス決済導入については、下記の記事をご覧ください。
売上アップの施策のなかには、ただ実践するだけでは思うような効果が見込めない場合もあります。ここでは、売上アップの施策を行うときの注意点について解説します。
売上アップをめざす場合、割引や値上げは慎重に行う必要があります。メニューを一律割引にすれば、多くのお客さまが来店し、売上アップにつながる可能性はありますが、利益率はそれだけ下がってしまいます。反対に、値上げをした場合、たとえ付加価値は上がっていても、単価が高すぎればお客さまが離れてしまいかねません。
割引や値上げは闇雲に行わず、店舗のコンセプトや顧客層を考え「どのメニューをどの価格帯で提供すれば顧客満足度が高まるか」「集客にプラスになるか」「利益をどこで上げるか」といった視点を持つことが大切です。
たとえば、お酒を出す店舗が開店直後に少しでも集客するため、赤字覚悟で「ハッピーアワー」などの時間帯割引をすることがあります。その場合は、ディナータイムにつかえるクーポンを渡すなど、次の来店につなげる施策とセットにすると効果的です。
また、ボリューム重視の男性のお客さまが顧客ターゲットである店舗なら「このメニューを3割値上げする代わりに、従来の倍量を提供します」という値上げの方法もあります。倍量になれば原価率が下がるため、店舗としてはお客さまに割高感を与えることなく、利益を出せるのです。
売上アップのための施策を行うと、ついそれだけで満足してしまいがちですが、実践した後には必ず効果を測ることが大切です。どのような施策も「それだけで売上が確実に上がる」というものではありません。売上アップをめざすには、効果測定によって「何が有効だったのか」「何がよくなかったのか」を把握し、その結果を踏まえて、次の打ち手を考え、継続して取り組んでいくことが必要です。
効果測定はPOSレジを導入していれば、データが自動化できて便利です。POSレジを導入していない店舗であっても、簡単な手元集計でもいいので効果測定に取り組むことが肝心です。売上や来店数などの量的なデータのほか、お客さまの感想やスタッフのコメントなど、質的なデータも取れるとなおいいでしょう。
飲食店の売上アップのためには、来店客数、客単価、来店頻度について総合的に施策を打つことと同時に、業務効率化やコスト削減も大切です。そのために、店舗にキャッシュレス決済を導入するのもひとつの方法です。
会計時間の短縮や、売上集計業務の効率化による人件費の削減だけではなく、新規のお客さまの獲得や顧客満足度にもつなげることができます。
飲食店の売上アップを目的にキャッシュレス決済を導入するなら、ドコモの「d払い」をおすすめします。d払いは、スマートフォンのアプリをつかって行うキャッシュレス決済のことです。d払いなら、9,000万人を超えるdポイントクラブ会員に店舗の存在をアピールでき、集客・売上アップを見込めるでしょう。
また、ドコモでは、d払い加盟店で利用できる「スーパー販促プログラム」を提供しています。「スーパー販促プログラム」をつかえば、お客さまに加盟店からのメッセージやキャンペーン情報を配信でき、集客や利用単価アップといった施策ができるようになります。
飲食店に新たにキャッシュレス決済を導入する際は、ぜひドコモのd払いをご検討ください。
スマートフォンからでもダウンロードいただけます
よくあるご質問
お店の売り上げを伸ばす方法はありますか?
売上を上げるための具体的な9つの施策例はこちら。①定番メニューのリニューアル②限定メニューやコラボレーション企画などの開発③テイクアウトやデリバリーの開始④イベント販売や出張販売⑤営業時間を増やす⑥グルメ情報サイトへの掲載⑦ポイントカードやクーポンの発行⑧SNSなどの活用⑨キャッシュレス決済の導入
飲食店の売り上げを上げる要素は?
飲食店の売上は、「来店客数×客単価×来店頻度」という式によって分解することができます。「来店客数」とは来店したお客さまの人数、「客単価」とは1回の来店でお客さまが支払う平均金額、「来店頻度」とは、お客さまがどのくらいの頻度で来店するかを表します。どこに課題があるかを把握し、具体的な目標を決めて施策を立てます。
客単価を上げるには?
飲食店の客単価を上げる方法としては、看板メニューのリニューアルのほか、季節限定メニューや追加注文しやすいメニューの開発などがあります。また、接客時の声かけなども考えられるでしょう。その際、顧客ターゲットを念頭に置くことが大切で、どの顧客層に対してどのサービスをどのような価格帯で提供するかまで検討します。
監修者プロフィール
坪谷 亮
FPサテライト株式会社 取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 日本FP協会 CFP®認定者
大学時代にFPについて知り、22歳のときにCFP®を取得。
FPや金融業界の現状を知り、お客さまとの利益相反を一度も起こしたくないという思いから、2022年にFPサテライト株式会社に入社。個人、法人両方のコンサルティングを、中立的な視点からサポートしている。
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