黒川 一美
日本FP協会 AFP認定者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学院修了後、IT企業や通信事業者のセールスエンジニア兼企画職として働く。出産を機に退職し、自分に合ったお金との向き合い方を見つけるため、FP資格を取得。現在は3人の子育てをしながら、多角的な視点からアドバイスができるFPを目指して活動中。
2023年1月20日(最終更新日:2025年4月30日)
キャッシュレス
経営ノウハウ
個人事業主
飲食店の事業者は、店舗にキャッシュレス決済を導入すべきか検討しているのではないでしょうか。キャッシュレス決済を導入するメリットは理解しているものの、初期導入費用や決済手数料はできるだけ抑えたいですよね。
本記事では飲食店でキャッシュレス決済を導入するメリットや、導入する際の注意点について解説します。今後のインバウンド需要に対応するためにも、キャッシュレス決済の導入も検討してみましょう。
経済産業省の調査によると2023年のキャッシュレス決済比率は39.3%と、個人消費額の約4割がキャッシュレス決済だったことがわかります。直近10年の推移を見ると、2013年のキャッシュレス決済比率は15.3%だったため、現在はキャッシュレス決済が普及しつつあるといえるのではないでしょうか。
※参照:経済産業省「2023年のキャッシュレス決済比率を算出しました」
キャッシュレス決済の決済手段別の内訳は、以下のとおりです。
キャッシュレス決済比率のなかでは、クレジットカード(83.5%)が最も多く利用されています。電子マネーやQRコード決済の比率は現在ではそれほど高くありませんが、コード決済の比率は増加傾向にあります。政府がキャッシュレス決済を推進しているため、今後も利用率が伸びることが予想されます。
経済産業省による別の調査では業種別のキャッシュレス決済導入比率が発表されており、Webアンケートに回答した全業種の事業者1,189社のうち約7割がキャッシュレス決済を導入していると回答しました。
多くの店舗でキャッシュレス決済の導入が進んでおり、先ほどの調査「2023年のキャッシュレス決済額および比率の推移」でも、キャッシュレス決済の利用額は個人消費の約4割(39.3%)となっています。なお、飲食店では85.4%の事業者がキャッシュレス決済を導入していると回答しています。
キャッシュレス決済は、お客さまの利用額や店舗の使い方によって向き・不向きがあります。飲食店に向いているキャッシュレス決済には次のようなものがあります。
それぞれの特徴と、向いている理由について解説します。
クレジットカードはキャッシュレス決済のなかで最も利用額が高い決済手段です。クレジットカード決済を導入するには決済端末が必要になるものの、お客さまが利用する可能性の高いクレジットカード払いに対応できます。クレジットカードは利用可能額も大きいので、客単価が高い店舗での導入はより有効といえるでしょう。
ICカードやスマートフォンの電子マネーを利用して支払う方法です。タッチ決済に対応した決済端末を導入すれば、かざすだけで決済が完了するためスムーズに会計処理が行えるようになります。レジ待ちの解消を課題としている場合は、電子マネーを導入することで緩和が見込めます。
スマートフォンのアプリを利用して支払う方法です。QRコード決済の方法には、お客さまが提示したスマートフォンの画面を店舗側が読み取る「ストアスキャン方式」と、店舗に設置してあるQRコードをお客さまが読み取る「ユーザースキャン方式」があります。
なお、ストアスキャン方式では、1つの決済端末で複数の決済事業者のQRコードを利用することも可能です。一方、ユーザースキャン方式では、初期費用をかけずにキャッシュレス決済を導入することができます。
飲食店でキャッシュレス決済を利用すると、お客さまにとって以下のようなメリットがあります。
キャッシュレス決済を利用すれば、現金がなくても支払いができます。食事に行く前にわざわざATMでお金をおろしたり、手持ちの現金を気にしながらメニューを選んだりする必要がありません。急な食事や飲み会の誘いも、「今、手持ちのお金がないから」などと断らずに済みます。
キャッシュレス決済は、支払いが非常にスピーディーです。現金を使わないので、会計時に財布から現金を取り出したり、釣銭を受け取ったりすることがありません。キャッシュレス決済の種類によっては、店頭の決済端末にカードやスマートフォンをかざすだけで支払いが完了します。さらに、個人間送金の機能を備えたスマートフォン決済アプリや電子マネーなら、割勘も非常にスムーズです。
ポイント還元などの特典があることも、利用者にとって大きなメリットです。たとえば、クレジットカードやスマートフォン決済アプリを使って支払いをすると、利用金額に応じたポイントを付与されることが一般的です。たまったポイントは、支払いに使ったり、ほかの商品に交換できたりするので、同じ金額を現金で支払うよりお得に感じられるでしょう。
飲食店がキャッシュレス決済を導入するメリットは、以下のとおりです。
経済産業省の資料によると、訪日外国人の約7割「クレジットカードなどが利用できる場所が今より多かったらもっと多くお金を使った」と回答しています。そのためインバウンド需要を取込むなら、キャッシュレス決済の導入は必須といえるでしょう。
決済端末の導入には一般的に初期導入費用がかかりますが、キャッシュレス決済ができる環境を整備しておくことで機会損失を回避できます。
現金決済の場合は従業員とお客さまが接触する時間が長くなり、物理的な受渡しが発生します。電子マネーやQRコード決済などのタッチ型決済の場合は、物理的な受け渡しが発生しないスムーズな会計となるため、衛生的な決済が行えるようになります。現金決済に不安を覚えるお客さまも、あんしんして会計できるようになるでしょう。
キャッシュレス決済を導入することにより、会計にかかる時間を短縮できます。
経済産業省の調査によると、キャッシュレス決済の場合はレジ業務に要する時間を約35%も短縮できるそうです。現金決済では26.1秒かかっていましたが、キャッシュレス決済の場合は16.9秒で済んだとされます。
お客さまが現金を用意する時間を待たずに済むほか、釣銭を手渡す時間を削減できることが時間短縮の要因といえるでしょう。
キャッシュレス決済は、飲食店のお客さまにとって非常に便利ですが、以下のような注意点もあります。
キャッシュレス決済には、クレジットカード決済や電子マネー決済、QRコード決済などのさまざまな種類があり、どの決済方法を導入しているかは飲食店によって異なります。
たとえば、クレジットカードは使えても電子マネーには対応していない店舗もあります。キャッシュレス決済を利用する際には、その店舗が使いたいサービスに対応しているかを確認しておくことが大切です。
キャッシュレス決済では、どうしても不正利用のリスクをゼロにはできません。特殊な機器でクレジットカード情報を盗み取るスキミングや、偽のメールやWebサイトからカード情報を盗み出すフィッシング詐欺など、不正利用の手口は年々多様化かつ複雑化しています。
あやしいWebサイトに情報を入力しない、クレジットカードを適切に保管する、キャッシュレス決済に利用するスマートフォンにロックをかけるなど、セキュリティ対策を忘れないよう十分に講じる必要があります。
キャッシュレス決済は便利な反面、「お金を使っている」という感覚が薄くなり、つい使いすぎてしまうことがあります。利用明細やアプリなどでこまめに支払履歴を確認し、使いすぎや無駄遣いを避けるよう意識する必要があるでしょう。
飲食店がキャッシュレス決済を導入する際の注意点は、以下のとおりです。
クレジットカードや電子マネーに対応するためには、決済端末を導入する必要があります。決済端末を導入する初期費用の目安は、0〜5万円ほどです。決済端末の機能や必要な周辺機器によって費用が変わるため、店舗に合った端末を選ぶようにしてください。
キャッシュレス決済の導入にあたって初期費用を抑えたい場合は、ユーザースキャン方式のQRコード決済の導入を検討するとよいでしょう。まずはQRコード決済を導入してキャッシュレス決済の効果を検証し、効果があった場合は決済端末を導入するといった方法も有効です。
決済端末を導入する場合は、補助金や助成金を利用する方法もあります。一般的には事前申請が必要で、申請が通過すれば、決済端末の購入費の全額または一部の助成を受けることが可能です。
キャッシュレス決済に利用できる補助金については、こちらの記事(ID7へリンク)で詳しく解説しています。
キャッシュレス決済を利用する場合は、決済手数料として売上の一部を支払うことになります。決済手数料の目安は導入するサービスにもよりますが、2〜7%が目安です。
なお、決済手数料が無料になるキャンペーンを実施している際など、タイミングが合えば決済手数料がかからない場合もあります。現在、d払いではWebサイトから新規で申込むと、2.6%の決済手数料が無料になるキャンペーンを行っています。
手数料無料キャンペーンについて詳細はこちらからご確認ください。
導入するサービスによっては、売上の入金が月1回または2回になる場合があります。食材の仕入れなどの事情ですぐに資金が必要な場合は、入金サイクルが短いサービスを導入するとよいでしょう。
経済産業省が行ったアンケート調査では、多くの事業者が「月1回または2回の入金サイクルでも対応可能な範囲」と回答しています。現金決済がまだ多いこともあり、キャッシュレス決済の売上については入金に時間がかかったとしても対応できるということでしょう。
キャッシュレス決済のニーズや利用率は、近年ともに上昇傾向にあります。飲食店でも、キャッシュレス決済を導入することで、売上アップや顧客層の拡大につながる可能性があるでしょう。
たとえば、以下のようなタイプのお店では、キャッシュレス決済の導入が向いているといえます。
宴会やパーティーなど、団体客の利用が多い飲食店では、キャッシュレス決済の導入がお客さまの利便性向上に効果的です。団体での利用は計金額も大きくなるため、現金払いではお金を数える手間と時間がかかります。
キャッシュレス決済が利用できる店舗なら、高額の会計でもスピーディーに決済でき、釣銭の数え間違いなどもありません。支払いのために、幹事が当日多額の現金を持ち歩く必要もないでしょう。「会計がスムーズにできる」というメリットから、団体利用のお店選びで有利になる可能性があります。
飲食費単価が高い飲食店も、キャッシュレス決済の導入がおすすめです。単価の高い店で現金払いにしか対応していないと、お客さまは、来店前にわざわざ現金を用意しなければなりません。また、来店後も、「手持ちの現金で足りるだろうか」「合計金額はいくらになるだろうか」といったことが気になり、心から食事を楽しめない可能性もあるでしょう。
キャッシュレス決済に対応していれば、お客さまは持ち合わせの現金の心配をせずに好きなメニューを注文できます。さらに、クレジットカードをはじめとした後払いシステムのキャッシュレス決済なら、給料日前など、お金に余裕がないときでも来店が可能になります。
前述したように、キャッシュレス決済はインバウンド(訪日観光客)対策に非常に効果的です。海外の多くの国では、日本よりもキャッシュレス決済が普及しています。外国人観光客にとっては、日本円での現金払いに限定されるより、普段使い慣れているキャッシュレス決済で支払いができる飲食店の方が利用しやすいでしょう。
キャッシュレス決済であれば、日本円に両替する手間や手数料もかからず、食事の際にいちいち現金の持ち合わせを確認する必要もありません。日本での食事は、外国人観光客にとって楽しみの1つといえます。キャッシュレス決済を導入することで、外国人観光客の集客アップや高額利用につながる可能性もあります。
回転率の高さを求められる飲食店では、会計に時間がかかると、業務効率や顧客満足度を低下させてしまうおそれがあります。
たとえば、ビジネス街の飲食店、ランチタイムやディナータイムに混雑する飲食店、テイクアウト専門店などでは、スピーディーなサービス提供が求められます。このような店舗では、会計時に現金の受け渡しの手間と時間のかからないキャッシュレス決済がおすすめです。
キャッシュレス決済ならカードやスマートフォンを読み取るだけで決済が完了するため、会計時間の短縮と回転率アップにつながります。
飲食店でキャッシュレス決済を導入したいと思っても、「何を基準に選べばいいのだろう」と迷ってしまう人は多いかもしれません。
キャッシュレス決済を導入する場合は、以下の基準をもとに比較して選ぶとよいでしょう。
上記のなかで特に意識したいのは、初期導入費用と入金サイクルです。クレジットカードや電子マネーの導入を考えている場合は決済端末の導入が必要になりますが、QRコード決済のユーザースキャン方式であれば基本的に無料で導入できます。
売上の入金サイクルについては月1回または2回が主流で、それ以外で入金が必要な場合は早期振込手数料がかかる場合があります。
d払いのユーザースキャン方式の場合は、以下のとおりです。
店舗でd払いを導入すると、次のようなメリットがあります。
d払いを活用すれば、1億人のdポイントクラブ会員にアプリを通じてメッセージやキャンペーン情報を配信できるため、店舗の存在をアピールできるようになります。dポイントクラブ会員であるお客さまが来店した場合はdポイントの利用も見込めるため、売上アップも期待できるでしょう。
d払いの送金機能を利用すれば、お客さまが割り勘をしやすくなります。代表者がd払いで会計を行った場合、ほかのお客さまは代表者にd払いで代金を送付すればいいため、代金の受渡しがスムーズに完了します。
またレジで会計を行う際にお客さま同士の代金の受渡しを待たずに済むため、店舗の業務効率の向上にもつながるでしょう。なお送金機能を利用し割り勘をするためには、お客さま同士がd払いに登録している必要があります。
ドコモでは、dポイント・d払い加盟店を対象とした「スーパー販促プログラム」を提供しています。スーパー販促プログラムとは、ドコモの会員データと決済データを組み合わせた販売促進ツールのことです。店舗でdポイント・d払いを利用したことがあるお客さまに向けて、チラシやダイレクトメッセージ、クーポンを配信できるようになります。
スーパー販促プログラムを利用することで、お客さまの属性や購買履歴をもとにしたマーケティング戦略を立てられるようになります。スーパー販促プログラムを利用して、お客さまに効果的なアプローチを行いましょう。
現在d払いでは、Webサイトから新規で申込んだ場合、2.6%*2の決済手数料が無料になるキャンペーンを実施しています。決済手数料を負担に感じている事業者は、この機会にキャッシュレス決済の効果を検証してみてはいかがでしょうか。
キャンペーンの詳細はこちらからご確認ください。
*2 メルペイとの共通のQRコード決済を利用した場合。
飲食店にd払いを導入する手順は、以下のとおりです。
1. Webサイトから申込む
2. メールで届く審査結果を待つ
3. 店舗用ステッカーなどのスタートキットが届くと利用を開始できる
Webサイトからの申込みであれば最短5分で完結します。審査に通過すれば、スタートキットが届き、すぐに利用を開始できます。簡単にはじめられるので、気軽に申込みをしてみてはいかがでしょうか。
キャッシュレス決済の利用率は年々増加傾向にあり、今後も拡大すると予想されています。飲食店が売上アップや集客アップ、業務効率化をめざす上で、キャッシュレス決済は非常に有効な手段になるでしょう。飲食店がャッシュレス決済を導入することで、会計にかかる時間を短縮できるほか、インバウンド需要にも対応できるようになります。
飲食店が新たにキャッシュレス決済を導入するなら、d払いがおすすめです。d払いなら、初期費用をかけずにキャッシュレス決済を準備できます。この機会にd払いを導入して、効果を試してみてはいかがでしょうか。
※QRコードは、株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
スマートフォンからでもダウンロードいただけます
よくあるご質問
飲食店がキャッシュレス決済を導入するメリットは?
キャッシュレス決済を導入することで、インバウンド需要に対応できます。また、非接触でスムーズな会計となるため、衛生的な決済が行えるようになり、会計にかかる時間も短縮することができます。詳しくはこちらをご確認ください。
飲食店がキャッシュレス決済を導入する際の注意点は?
クレジットカードや電子マネーといった決済手段を導入する場合は、専用の端末が必要になります。決済端末の初期費用は導入する会社にもよりますが、1〜5万円ほどを目安とするとよいでしょう。また、決済手数料や導入するサービスによっては、売上の入金に時間がかかるものもあるため事前に確認しましょう。詳しくはこちらをご確認ください。
キャッシュレス決済を導入する場合はどんな基準で比較する?
キャッシュレス決済を導入する場合は、初期導入費用、決済手数料、振込手数料や入金サイクルを確認して比較しましょう。特に意識したいのは、初期導入費用と入金サイクルです。売上の入金サイクルについては月1回または2回が主流で、それ以外で入金が必要な場合は早期振込手数料がかかります。詳しくはこちらをご確認ください。
飲食店が払うキャッシュレス決済の手数料はいくら?
キャッシュレス決済を利用する場合は、決済手数料として売上の一部を支払うことになります。決済手数料の目安は導入するサービスにもよりますが、2〜7%を目安とするといいでしょう。ただし、現在は決済手数料が無料になるキャンペーンを実施している会社もあるため、決済手数料がかからない場合もあります。
監修者プロフィール
黒川 一美
日本FP協会 AFP認定者/2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学院修了後、IT企業や通信事業者のセールスエンジニア兼企画職として働く。出産を機に退職し、自分に合ったお金との向き合い方を見つけるため、FP資格を取得。現在は3人の子育てをしながら、多角的な視点からアドバイスができるFPを目指して活動中。
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