坪谷 亮
FPサテライト株式会社 取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 日本FP協会 認定CFP®
大学時代にFPについて知り、22歳までにCFP®を取得。
FPや金融業界の現状を知り、お客さまとの利益相反を一度も起こしたくないという思いから、2022年にFPサテライト株式会社入社。個人、法人両方のコンサルティングを中立的な視点からサポートしている。
2023年10月4日
キャッシュレス
用語解説
オンラインショッピングを中心に多く利用されている後払い決済。後払いというと、広い意味ではクレジットカード決済やキャリア決済なども含まれますが、本記事ではそれらと区別して、ECサイトで利用されている後払い決済サービスの仕組みやメリット、選び方のポイントなどを解説します。また、最近よく聞かれるようになった「BNPL」についても併せて見ていきましょう。
ECサイトを中心に利用されている後払い決済とは、商品などを購入して受け取りが完了した後に、請求書によって代金を支払う決済方法です。請求書は、商品に同梱される場合と、商品が届いた後に別送される場合があり、近年ではメールで送られることもあります。
請求書を受け取った利用者は、期日までに、コンビニエンスストアや銀行、郵便局などで代金を支払います。
欧米で注目を集めている後払い決済「BNPL(Buy Now, Pay Later)」とは、財務省によると‘‘実店舗やECにおいて、事業者が小売店に代金を立替払いし、消費者が原則手数料を負担することなく、後払いや分割払いで事業者に支払う仕組み‘‘とされています。BNPLは、手数料が事業者負担となり、利用者は基本的に4回払いまで利息や手数料がかかりません。分割払いのニーズがある欧米では、クレジットカードに代わって急速に市場が拡大しています。
日本においても、EC市場拡大に伴いさまざまな後払い決済が増えつつありますが、分割払いにおける費用面よりも、「ECサイトでクレジットカード情報の入力は避けたい」といったセキュリティ面におけるニーズが高い傾向があります。
引用:財務省「日本におけるBNPLの成長性について」
前払いと後払いの違いについては、下記の記事をご覧ください。
ここからは、後払い決済の仕組みについて見ていきましょう。後払い決済には、EC事業者が直接利用者とやりとりする方法と、後払い決済代行会社と契約する方法の2パターンがあります。
EC事業者が自社で後払い決済を提供する場合は、EC事業者から直接、利用者に請求書を送付し、入金確認や万が一入金が遅れた場合の催促も行う必要があります。また、代金の未回収リスクに対しても、EC事業者で対応しなければなりません。
EC事業者内で処理が完結するため手数料はかかりませんが、売上があるたびに請求書の発行などを行うため、販売数が増えるほど業務負担も増加します。
後払い決済の導入には、後払い決済代行会社と契約し、後払い決済サービスを利用する方法もあります。後払い決済代行会社を利用すれば、利用者への請求や与信、請求書発行、督促などの煩雑な業務をすべて代行可能なので、手間がかからない上、代金の未回収リスクも防ぐことが可能です。ただしその分、後払い決済代行会社へ所定の手数料を支払う必要があります。
後払い決済代行会社と契約した場合の一般的な後払い決済の流れは、下記のとおりです。
<後払い決済代行会社よる後払い決済の流れ>
1. ECサイトなどで、利用者が商品を購入し後払いを選択
2. 決済代行会社経由で利用者の与信を行い、その結果をEC事業者に通知する
3. EC事業者から利用者へ商品を発送する
4. 決済代行会社が商品代金を立て替え、手数料を差し引いた金額をEC事業者に入金する
5. 決済代行会社から利用者に請求書が送付され、利用者はコンビニや郵便局、銀行などで商品代金を支払う
6. コンビニや郵便局、銀行と決済代行会社が代金の精算を行う
■後払い決済代行会社による後払い決済サービスの仕組み
EC事業者が後払い決済を導入すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。主な導入メリットをご紹介します。
EC事業者が後払い決済を導入すれば、利用者はクレジットカードを使わなくても後払いができます。そのため、学生や専業主婦(夫)、高齢者など、クレジットカードを持っていない、または使う習慣があまりない層にもアプローチができるでしょう。
商品が手元に届いてから支払いをする後払い決済は、利用者にとってあんしん感があり、より幅広い顧客に対応できるようになります。
ECサイトで避けたいのが、商品をカートに入れながらも購入に至らず離脱してしまう、いわゆる「カゴ落ち」です。後払い決済では、クレジットカード番号などの煩雑な情報入力の必要がありません。「ほしい」と思ったときにスムーズに購入手続きを完了できるので、サイトの離脱防止効果も期待できます。
後払い決済代行会社を利用する場合は、代金は利用者ではなく決済代行会社から入金されます。あいだに決済代行会社が入ることで、未回収リスクを軽減できるメリットがあります。
さらに、決済代行会社は利用者の与信審査なども行うため、受注後のキャンセルや失注のリスクも軽減できます。
後払い決済代行会社を利用すると、後払い決済にかかるEC事業者の業務負担を大幅に軽減することができます。通常、EC事業者が後払い決済を提供する場合、請求書の作成と発行、入金管理、督促業務などを自社で行わなければなりません。後払い決済代行会社に依頼すれば、これらの業務をすべて任せることができるので、商品の販売により集中できるようになります。
後払い決済は、EC事業者だけではなく、利用者にもメリットがあります。利用者にとっての後払い決済の主なメリットは、下記のとおりです。
前述したように、後払い決済はクレジットカードを持っていなくても後払いができる決済方法です。クレジットカードを持っていない人や、年齢や収入などによってクレジットカードを作れない人でも、後払いでオンラインショッピングを楽しめます。
後払い決済では、商品が実際に手元に届いてから支払いを行います。そのため、「お金を支払ったのに商品が届かない」という心配がありません。また、万が一注文と違う商品や不良品、粗悪品などが届いた場合も、支払い前であれば返品手続きをスムーズにできます。実店舗と同じように、商品を確認してから支払いができるので、あんしん感につながるでしょう。
後払い決済では請求書や払込票などを使って支払いをするため、Web上にクレジットカード情報を入力する必要がありません。
最近では、偽のECサイトにクレジットカード番号などを入力させて情報を盗み取る「フィッシング詐欺」の被害も増えています。クレジットカードを使わない後払い決済なら、このようなネット犯罪の被害に遭うリスクを防ぐことが可能です。
「クレジットカードを使わずにオンラインショッピングをしたい」というときには、商品発送前に銀行振込などで代金を支払う前払いや、商品到着と同時に代金を支払う代金引換などの方法もあります。
しかし、これらの決済方法は代金を支払うタイミングが決まっており、それに合わせてお金を用意しなければなりません。一方、後払い決済の場合、送られてくる請求書の支払い期限は、一般的には2週間程度、長ければ2~3か月程度です。この期間内ならいつでも都合のよいタイミングで支払いができるので、余裕を持った買物が可能です。
後払い決済の導入を検討するとき、未回収リスクや事務負担の軽減といったメリットから、「自社で提供するよりも後払い決済代行会社と契約して後払い決済サービスを利用したい」と考えるEC事業者は多いかもしれません。後払い決済サービスを選ぶ際には、次のようなポイントに気をつけましょう。
後払い決済サービスを選ぶ際は、代金の入金保証があるかどうかをしっかり確認しておくとあんしんです。保証がついていれば、利用者からの支払い状況にかかわらず決済代行会社から立替払いが行われるため、代金未回収リスクを防げます。
後払い決済代行にかかる手数料や利用料金は、後払い決済サービスによって異なります。1回の決済ごとに発生する決済手数料と、固定の月額料金を組み合わせたケースが多いですが、決済代行会社によっては複数のプランを用意していることもあります。自社の商品の取引額に応じて、最適なプランを設定するようにしましょう。
自社で運用しているECシステムと連携できない後払い決済サービスだと、導入にあたってシステム改修が必要になってしまいます。費用や手間を抑えるためには、自社のシステムと連携可能な後払い決済サービスを選ぶことをおすすめします。
後払い決済サービスによって、与信枠の上限(利用限度額)は異なります。商品購入時に利用限度額を超えてしまった場合は、せっかく後払い決済を導入しても、利用者は自社サイトから商品を購入できなくなります。自社のECサイトの平均購入額などを確認し、与信枠の上限が平均購入額を上回る後払い決済代行サービスを選択するのがポイントです。
後払い決済代行会社からの入金は、「月末締め翌月末払い」など、あらかじめ定められたサイクルで行われるのが一般的ですが、場合によっては、複数の入金サイクルに対応しているケースもあります。キャッシュフローを悪化させないように、後払い決済サービスの入金サイクルについてもよく確認しておくことが大切です。
ECサイトであんしんかつ便利に使える決済方法が、ドコモの「d払い」です。d払いは、オンラインショッピングの利用代金やオンラインゲームでのプレイ料金などを、月々の電話料金と合算して支払うことができます。利用者は、d払いの利用代金を、月額最大10万円(税込)まで月々の携帯電話料金と合算して支払えます。
d払いでは「立替払いモデル」を採用しており、代金未回収リスクは原則としてドコモが負います。立替払いモデルの利用に伴う手数料は発生しないため、EC事業者の負担はありません。ECサイトに後払い決済の導入をお考えなら、ぜひドコモのd払いをご検討ください。
d払いについては、下記の記事をご覧ください。
スマートフォンからでもダウンロードいただけます
よくあるご質問
後払い決済(BNPL)とは?
ECサイトを中心に利用されている後払い決済とは、商品などを購入して受け取りが完了した後に、請求書によって代金を支払う決済方法です。請求書は、商品に同梱される場合と、商品が届いた後に別送される場合があり、近年ではメールで送られることもあります。
後払い決済の仕組みとは?
後払い決済には、EC事業者が直接利用者への請求や督促などをやりとりする方法と、後払い決済代行会社と契約する方法の2パターンがあります。後払い決済代行会社を利用すると利用者への請求書発行、督促などを代行可能なので、代金の未回収リスクも防ぐことが可能です。
EC事業者が後払い決済を導入するメリットは?
EC事業者が後払い決済を導入すると、利用者にとってあんしん感があり、より幅広い顧客に対応できるようになります。また、スムーズに購入決済手続きを完了できるので、サイトの離脱防止効果も期待できます。ほかにも決済代行会社が入ることで、未回収リスクを軽減できるメリットがあります。
監修者プロフィール
坪谷 亮
FPサテライト株式会社 取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 / 日本FP協会 認定CFP®
大学時代にFPについて知り、22歳までにCFP®を取得。
FPや金融業界の現状を知り、お客さまとの利益相反を一度も起こしたくないという思いから、2022年にFPサテライト株式会社入社。個人、法人両方のコンサルティングを中立的な視点からサポートしている。
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