黒川 一美
日本FP協会 AFP認定者、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学院修了後、IT企業や通信事業者のセールスエンジニア兼企画職として働く。出産を機に退職し、自分に合ったお金との向き合い方を見つけるため、FP資格を取得。現在は3人の子育てをしながら、多角的な視点からアドバイスができるFPを目指して活動中。
2023年1月20日(最終更新日:2024年5月10日)
キャッシュレス
2020年度、経済産業省がキャッシュレス化に取組む自治体を「モニター自治体」に選定しました。こうした動きに代表されるように、キャッシュレス決済を導入する自治体が増えています。自治体のキャッシュレス化推進は利用者の利便性向上のみならず、職員の業務効率改善にも寄与します。
今回は、自治体のキャッシュレス決済の現状や取組み、コロナ禍を経て特に活発になった自治体のキャッシュレス決済キャンペーンなどについて解説します。
行政のデジタル化が進むなか、キャッシュレス決済を導入する自治体が増えています。
2022年に日本経済新聞が編集・発行する日経グローカルによって発表された「キャッシュレス決済の取り組み状況(電子地域通貨も含む)」では、全国815市区のうち、「すでに導入済み」が70.4%(574市区)、「22年度に導入」が14.2%(116市区)です。さらに「23年度以降に導入予定」1.7%(14市区)、「時期は未定だが導入する・したい」2.6%(21市区)を合わせると、合計89.0%がキャシュレス決済の導入に積極的であることがわかります。
この調査は全国の792の市と東京23区を合わせた815市区を対象としたもので、かなり確度の高い調査といえるでしょう。
経済産業省の取組みとしては、キャッシュレス化に取組む「モニター自治体」と連携して、全国の自治体にキャッシュレス化のノウハウや課題を周知し、自治体におけるキャッシュレス決済の導入を推進しています。このように、国としても自治体のキャッシュレス決済の導入を後押ししています。
自治体でキャッシュレス決済が進む理由として、下記の2つが考えられます。
前述のとおり、経済産業省はキャッシュレス化に取組む先進的な自治体を「モニター自治体」に選定し、そのノウハウや課題を全国の自治体に共有することで、自治体のキャッシュレス決済の導入を推進しています。また、コロナ禍を機に感染症拡大防止の観点から、人同士の対面機会やものに触れる機会を減らす目的でキャッシュレス化を進めた自治体もあるようです。
国が推進しているため行政においてもデジタル化が進んでおり、今後も自治体のキャッシュレス決済導入の流れは加速することが予想されます。
自治体におけるキャッシュレスの導入シーンとしては、税金や公共料金の支払い、地域イベントや商店街のキャッシュレスキャンペーンなどが挙げられます。行政サービスや地域のイベント参加時にキャッシュレス決済を利用できるため、行政手続きが迅速に行われるだけではなく、住民の手間を減らすメリットもあります。自治体のキャッシュレス決済の導入が進むことで、キャッシュレス社会の促進とともに、行政サービスの近代化と住民の生活の利便性向上が期待できるでしょう。
自治体がキャッシュレス決済を導入するメリットはさまざまあります。主な4つのメリットは下記のとおりです。それぞれのメリットを見ていきましょう。
自治体がキャッシュレス決済を導入すると、職員の「業務効率の向上」に寄与します。たとえば、住民がキャッシュレス決済を利用することで現金の受渡しが減るため、現金を数える手間や時間が減ります。また、釣り銭の渡し間違いによるトラブルの心配もありません。特に現金を取扱う部署にとって、キャッシュレス決済は業務効率向上の有効なツールとなります。
自治体がキャッシュレス決済を導入することで、住民のキャッシュレス決済データを利活用できることもメリットです。キャシュレス決済データは、地域課題の発見や改善につなげられる可能性があります。実際、2020年から2021年にかけて、和歌山県田辺市や埼玉県秩父地域、福島県会津若松市では、観光資源に訪れた人のQRコード決済や来店情報、個人属性情報を収集することで、観光客を呼び寄せる仕かけ作りや来店予想の精度向上などにつなげるデータの利活用方法が検証されました。今後は決済データの利活用により、地域課題の解決を図る自治体が増えるかもしれません。
自治体のキャッシュレス決済の導入は、職員だけでなく住民にも利便性や満足度が向上するというメリットがあります。具体的には、キャッシュレス決済が導入されれば、住民はATMに行って現金を引出す手間がなくなり、持ちものはスマートフォンだけで済むようになるでしょう。また、釣り銭を待つ時間がなくなり、支払いもスピーディーになるなど、キャッシュレス決済は住民の利便性や満足度の向上にも寄与します。
自治体のキャッシュレス導入は、商店街の課題発見やお店の集客に貢献できることもメリットのひとつです。住民のキャッシュレス決済データの利活用が進めば、商店街の課題発見や改善につなげられるでしょう。
また、自治体がキャッシュレス決済事業会社と共同でポイント還元キャンペーンを行うケースも増えています。こうしたキャンペーンを行うことで、キャッシュレス決済が普及し利便性が向上すれば、観光客や近隣の住民が地域のお店をより気軽に利用しやすくなります。
自治体がキャッシュレス決済を導入する際にはどのようなポイントがあるのでしょうか。導入前に押さえておきたい3つのポイントについて解説します。
自治体がキャッシュレス決済を導入する際は、多様なキャッシュレス決済を導入することがポイントです。より多くの住民にキャッシュレス決済を利用してもらうために、できるだけ多くの種類のキャッシュレス決済サービスを導入することをおすすめします。加えて、ユーザーの多いサービスを優先的に導入することも重要です。サービス利用状況を可視化するために、調査を実施してもよいでしょう。
主なキャッシュレス決済の種類については、下記のとおりです。
・クレジットカード決済
クレジットカード決済は、お買物やサービスの支払いを行う際にクレジットカードを用いて取引を処理する決済方法です。キャッシュレス決済のなかで最も多く利用されている決済方法です。
・デビットカード決済
デビットカード決済は、カード利用時に、登録した銀行口座から即時に購入額が引かれる決済手段です。即時引落しで、支払いが即座に反映されることが特徴です。
・電子マネー決済
電子マネー決済は、事前にチャージした金額を利用して即座に商品やサービスの支払いができる決済手段です。少額の支払いに向いています。
・QRコード決済
QRコード決済は、スマートフォンのアプリを使用し、QRコードを読み取ることで支払いができる決済手段です。安全かつ迅速に支払いを完了でき、店舗、個人ともに導入しやすいのが特徴です。
キャッシュレス決済については、下記の記事をご覧ください。
キャッシュレス決済とは?種類やメリット・デメリットを徹底解説
自治体がキャッシュレス決済を導入するにあたり、セキュリティへの配慮は必須です。キャッシュレス決済事業者の選定にあたっては、審査基準に「セキュリティ」や「サービス利用者保護のための取組みおよび体制」など、安全性に関する項目を入れるのも有効です。
自治体がキャッシュレス決済を導入する際、最初は一部の部署や施設、窓口で試験的に導入するなど、段階的に進めることがポイントです。多くの自治体では意思決定主体が多岐にわたるため、一度に全部署・全窓口にキャッシュレス決済を導入するのは現実的に難しく、実現できたとしても時間がかかります。そのため、日常的に決済業務が発生する一部の部署や施設、窓口で試験的に導入した方が効率的でしょう。
自治体のキャッシュレス決済の具体的な取組み事例を見てみましょう。主な事例として3つご紹介します。
東京都八王子市では市民の満足度向上を目的に、2018年に「八王子市情報化計画」を策定し、窓口や公共施設におけるキャッシュレス化の検討などをはじめました。2020年12月よりキャッシュレス決済アプリ、2021年2月からはクレジットカードを用いた市税・国民健康保険の支払いサービスを開始し、証明書発行などにかかる手数料の支払いもキャッシュレス決済に対応しています。
東京都台東区では区民の利便性向上および効率的な行政運営の推進を目標に、2021年3月以降からキャッシュレス決済サービスの導入を進めています。具体的には、同区では各種証明書発行などにかかる手数料や図書館や資料館など公共施設におけるグッズ代金、台東区循環バスの乗車代などの支払いについて、キャッシュレス決済に対応しています。
東京都三鷹市では、新型コロナウイルス感染症対策および市民の利便性向上を目的に、2021年1月以降、市政窓口にキャッシュレス決済とセミセルフレジ(現金自動精算機)の同時導入を行いました。効果として、市民課総合窓口で発行していた年間約52,000件の証明書などにかかる現金の受渡しの手間が減少し、利用者の滞在時間の短縮につながりました。
現在さまざまな自治体では、キャッシュレス決済サービスを用いるとポイントがもらえるキャッシュレスキャンペーンを随時開催しています。
過去に開催されたキャッシュレスキャンペーンを機に、キャッシュレス決済をはじめた人もいるでしょう。その意味で、同キャンペーンは人々にキャッシュレス決済を広める効果があったといえます。
なお、ドコモが提供しているQRコード決済サービス「d払い」を用いるとdポイントが還元される、d払いキャッシュレス決済キャンペーンも随時開催中です。
キャンペーンの対象店舗はd払いアプリから、下記の図のように簡単に3タップで確認できます。
キャンペーンが開催される自治体や時期、ポイント還元率などについて、下記のページをご確認ください。
d払いキャッシュレス決済キャンペーンでは、d払いで支払った金額に対して一定の割合でdポイントが付与されます。ここでは、進呈されたdポイントの具体的な使用方法を4つ見ていきましょう。
dポイント加盟店ではdポイント1ポイント=1円として、お買物につかうことができます。全国に約10万店舗あるdポイント加盟店のなかには、飲食店や通販サイトなどでおなじみのお店・サービスも多くあります。
普段よく利用しているお店があるかどうかについては、下記のページをご覧ください。
dポイントは、下記の2社のポイントとも交換できます。
よく利用するお店・サービスのポイントとの交換を検討してみてはいかがでしょうか。
dマーケットは映画や音楽、アニメなど20種類以上のサービスを利用できるポータルサイトです。dポイントはdマーケットでも利用できます。
dポイントのつかい方に悩んだ場合でも、多様なサービス・商品と交換できるdマーケットであれば、つかい道を見つけられるでしょう。
dポイントは、携帯電話機やオプション品などドコモ商品の購入代金および故障修理代金の支払いにも利用できます。ドコモ商品を購入する際は、ぜひ利用を検討しましょう。
国(経済産業省)の後押しもあり、キャッシュレス決済を導入する自治体が増加しています。キャッシュレス決済の導入時には「多様なサービスを導入する」「セキュリティに配慮する」といった注意が必要ですが、導入を実現できれば住民と職員の双方に大きなメリットがあります。
また、d払いなら、各自治体でキャッシュレスキャンペーンも実施中です。d払いを用いるとさまざまなつかい道のあるdポイントが付与されるため、利用者にもメリットがあります。
自治体にキャッシュレス決済を導入する際は、ぜひd払いの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
スマートフォンからでもダウンロードいただけます
よくあるご質問
自治体がキャッシュレス決済を導入するメリットは?
キャッシュレス決済を導入すると、自治体職員の「業務効率の向上」にも寄与します。現金を取扱う部署にとって、キャッシュレス決済は業務効率向上の有効なツールとなります。また、住民のキャッシュレス決済利用データを活用することで、地域課題の発見や改善につなげられる可能性があります。詳しくはこちらをご確認ください。
自治体のキャッシュレス決済導入時の注意点は?
より多くの住民にキャッシュレス決済を利用してもらうために、できるだけ多くの種類のキャッシュレス決済サービスを導入することが大切です。多くの自治体では一度に全部署・全窓口にキャッシュレス決済を導入するのは現実的に難しいため、試験的に導入するとよいでしょう。詳しくはこちらをご確認ください。
自治体のキャッシュレス決済の導入状況は?
日本経済新聞が編集・発行する日経グローカル調査で、全国815市区のうち70.4%の自治体がキャッシュレス決済を「すでに導入済み」ということがわかりました。経済産業省の取組みとしては、全国の自治体にキャッシュレス化のノウハウや課題を周知し、自治体におけるキャッシュレス決済の導入を推進しています。詳しくはこちらをご確認ください。
監修者プロフィール
黒川 一美
日本FP協会 AFP認定者、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学院修了後、IT企業や通信事業者のセールスエンジニア兼企画職として働く。出産を機に退職し、自分に合ったお金との向き合い方を見つけるため、FP資格を取得。現在は3人の子育てをしながら、多角的な視点からアドバイスができるFPを目指して活動中。
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