黒川 一美
日本FP協会 AFP認定者、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
FPサテライト株式会社 流山サテライトオフィスマネージャー
大学院修了後、IT企業や通信事業者でセールスエンジニア兼企画職として働く。保険や税制の執筆業務を得意とし、年間約150本の執筆・監修を行う。通信事業者での経験を活かし、通信費削減に関する情報提供にも力を入れる。地域とのつながりを重視し、3人の子育てをしながら「地域×FP」をテーマに空き家問題や創業支援に取組む。
2022年12月22日(最終更新日:2026年9月1日)
経営ノウハウ
個人事業主
所得税は、個人の所得に対してかかる税金です。個人事業主は、確定申告で自分の所得を計算し、納めるべき所得税を申告・納付しなければなりません。近年では、自動で所得税額が計算される確定申告ソフトなども多く登場していますが、正しい納税と効果的な節税のためには、所得税の仕組みを知っておくことが大切です。
ここでは、所得税の仕組みや、個人事業主の所得税の計算方法、節税ポイントなどについて解説します。

所得税は、1月1日から12月31日までの1年間に得られた個人の所得に対してかかる国税です。
個人事業主の所得は主に事業所得に分類されます。
ここでは、事業所得を前提に所得税の仕組みを解説します。
まず、所得税を計算する上では、収入と所得の違いを知っておくことが重要です。
収入とは、1年間に入ってきたお金のことで、個人事業主の場合は売上などが該当します。事業所得の場合、この収入から必要経費を差し引いた金額が、所得です。
所得税の額は、所得から所得控除を差し引いた課税所得に、所定の税率を掛けて算出されます。所得税は累進課税制度が採用されており、所得が多くなるほど税率が上がります。
また、2013年から2037年までは、東日本大震災の復興財源を確保するため、復興特別所得税が加算され、所得税とあわせて納付することを覚えておきましょう。
個人の所得は、その性質に応じて10種類に区分されます。たとえば、個人事業主が事業によって得た所得は事業所得ですが、会社員の所得は給与所得となります。
所得の種類ごとの概要と計算方法は、下記のとおりです。
■所得の種類の概要と計算式
| 所得の種類 | 概要 | 所得の計算方法 |
|---|---|---|
| 事業所得 | 農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業そのほかの事業から生じる所得 | 収入金額-必要経費 |
| 不動産所得 | 土地や建物、船舶、航空機など、所得税法上の不動産等の貸付けから生じる所得 | 収入金額-必要経費 |
| 利子所得 | 預貯金や公社債の利子、合同運用信託、公社債投資信託、公募公社債など運用投資信託の収益分配による所得 | 収入金額=所得金額 |
| 配当所得 | 法人から受ける剰余金や利益の配当、剰余金の分配、基金利息、投資法人からの金銭の分配、投資信託や特定受益証券発行信託の収益の分配などによる所得 | 収入金額-株式などを取得するための借入金の利子 |
| 給与所得 | 俸給や給料、賃金、歳費、賞与などによる所得 | 収入金額-給与所得控除額 |
| 譲渡所得 | 土地、建物、株式、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することによって生じる所得 | 収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額 |
| 一時所得 | 懸賞や福引きの賞金品、競馬や競輪の払戻金、生命保険の一時金など、営利目的の継続行為によらず、労務や資産譲渡の対価でもない一時的な所得 | 収入金額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円) |
| 山林所得 | 山林を伐採して譲渡したり、立木のままで譲渡することにより生じる所得 | 収入金額-必要経費-特別控除額(最高50万円) |
| 退職所得 | 退職時に勤務先から受ける退職手当(退職金)、社会保険制度などにより退職時に支給される一時金、企業型年金規約や個人型年金規約にもとづいて支給される老齢給付金など | (収入金額-退職所得控除額)×1/2 |
| 雑所得 | 公的年金や非営業用貸金の利子、副業の所得など、ほかの9種類の所得のいずれにも該当しない所得 | 以下(1)~(3)の合計額 (1)公的年金等の雑所得:収入金額-公的年金等控除額 (2)業務にかかる雑所得:収入金額-必要経費 (3)そのほかの雑所得:収入金額-必要経費 |
所得税は原則としてすべての所得に課税されますが、なかには、社会政策などの理由により課税されない非課税所得もあります。
確定申告で所得の計算をする際には、非課税所得を含めません。また、非課税の適用については手続きが不要なものが多いものの、制度によっては事前の手続きや条件を満たす必要があります。
非課税所得の種類と主な例は下記のとおりです。
■非課税所得の種類と主な例
| 非課税所得の種類 | 主な例 |
|---|---|
| 利子・配当所得関係 | ・障害者等の少額預金の利子 ・勤労者財産形成住宅貯蓄の利子 ・非課税口座内、未成年者口座内の少額上場株式等に係る配当等 |
| 給与所得・公的年金関係 | ・傷病者や遺族などが受け取る恩給、年金 ・文化功労者年金法の規定による年金 |
| 譲渡(山林)所得関係 | ・生活に通常必要な動産の譲渡による所得 ・国や地方公共団体等に財産を寄附した場合の譲渡所得 |
| その他 | ・学資金および扶養義務を履行するために給付される金品 ・相続、遺贈または個人からの贈与により取得するもの ・心身の損害や突発的な事故により資産に加えられた損害にもとづいて取得する保険金、損害賠償金、慰謝料 |
個人事業主の所得税は、1年間の収入から経費と所得控除を差し引いた課税所得に、所定の税率を掛けて算出されます。そして、その所得税額から税額控除を引いて、所得税の納付額(基準所得税額)が決まります。
所得税の確定申告で申告・納付するのは、基準所得税額と復興特別所得税額を合わせた金額です。また、報酬から源泉徴収されている個人事業主は、確定申告で源泉徴収税額が精算されます。
所得税の計算の流れは、下記のとおりです。

では、ステップごとに、個人事業主の所得税の計算方法を見ていきましょう。
なお、ここでは、事業所得以外の所得は基本的にないものとします。
まずは、1月1日から12月31日までの収入(売上)から事業にかかった経費を引き、1年間の所得を算出します。
<所得の計算式>
所得=収入-経費
個人事業主の収入(売上)は、入金があった日ではなく、商品やサービスを提供した時点で計上する「発生主義」による処理が原則です。
たとえば、取引先が「月末締め、翌月末払い」という条件だった場合、12月に納品した商品やサービスの代金が入金されるのは翌年1月ですが、売上は当年12月に計上します。
また、経費として計上できるのは、事業を行うために必要な支出のみです。事業と関係ない私的な支出を経費にすることはできません。経費を不正に計上すると、ペナルティの対象になる可能性があるため注意しましょう。
経費の計上にあたっては、領収書やレシートなどの支払いを証明できる書類を保管しておく必要があります。領収書が発行されない場合は、クレジットカードの利用明細や、請求書などでも代用が可能です。
なお、事業所得のほかに不動産所得や雑所得などがある場合は、合算して年間の合計所得金額を求めます。ただし、退職所得や山林所得などは、ほかの所得とは区別して税額を計算する分離課税の対象となります。
1のステップで計算した所得から所得控除を差し引きます。これが課税所得となります。
<課税所得の計算式>
課税所得=所得-所得控除
所得控除とは、各納税者の個人的な事情などを考慮して税負担を軽減するために、所得から一定の金額を差し引くことができる制度です。
基礎控除、生命保険料控除、社会保険料控除など、全部で16種類あります。
■所得控除の種類
| 控除の種類 | 控除の適用対象 |
|---|---|
| 基礎控除 | 合計所得金額が2,500万円以下 |
| 雑損控除 | 災害や盗難、横領によって、所定の要件に該当する資産に損害を受けた場合 |
| 医療費控除 | 納税者本人と生計を一にする家族のために支払った1年間の医療費が、一定額を超えた場合 |
| 社会保険料控除 | 自分や生計を一にする家族の社会保険料を支払った場合 |
| 小規模企業共済等掛金控除 | 小規模企業共済法に規定された共済契約にもとづく掛金(小規模企業共済掛金やiDeCoの掛金など)を支払った場合 |
| 生命保険料控除 | 保険会社などに生命保険料や介護医療保険料、年金保険料を支払った場合 |
| 地震保険料控除 | 保険会社などに地震保険料を支払った場合 |
| 寄附金控除 | 国や地方公共団体などに対して特定寄附金を支出した場合 |
| 障害者控除 | 納税者本人や生計を一にする配偶者または扶養親族が、所得税法上の障害者に当てはまる場合 |
| 寡婦控除 | 所定の要件を満たす寡婦(配偶者と離婚・死別し、その後再婚していない女性)で、下記の「ひとり親」に該当しない場合 |
| ひとり親控除 | 配偶者がおらず、生計を一にする子どもがいて、所定の要件に該当する場合 |
| 勤労学生控除 | 所定の要件を満たす勤労学生である場合 |
| 配偶者控除 | 納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下で、所得税法上の控除対象配偶者がいる場合 |
| 配偶者特別控除 | 納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下で、一定の要件を満たす配偶者がいる場合 |
| 扶養控除 | 所得税法上の控除対象扶養親族となる人がいる場合 |
| 特定親族特別控除 | 生計を一にする19歳以上23歳未満の親族などがいて、その合計所得金額が所定の要件を満たす場合 |
2のステップで計算した課税所得の1,000円未満を切り捨てた金額に所定の税率を掛け、そこから所定の控除額を引いて、所得税額を求めます。
所得税の税率は5~45%の7段階に分かれており、所得が多くなるほど税率が上がります。
<所得税額の計算式>
所得税額=課税所得(1,000円未満切り捨て)×税率-控除額
課税所得に対する所得税の金額は、次の速算表をつかうと簡単に計算できます。

3のステップで計算した所得税額から税額控除(所得税額から差し引かれる金額)を引いて、納めるべき所得税額を算出します。これを基準所得税額と呼びます。
<基準所得税額の計算式>
基準所得税額=所得税額-税額控除
税額控除とは、課税所得をもとに計算した所得税額から一定の金額を差し引ける制度で、二重課税の防止などのために設けられています。代表的な税額控除は、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)や配当控除などです。
適用できる税額控除がない場合は、3で計算した所得税額が、そのまま基準所得税額となります。
東日本大震災の復興財源を確保するため、2013年から2037年までは、所得税に復興特別所得税が加算されます。復興特別所得税の額は、4のステップで計算した基準所得税額の2.1%です。
<復興特別所得税の計算式>
復興特別所得税=基準所得税額×2.1%
基準所得税額と復興特別所得税を合計した金額が、申告納税額となります。
<所得税および復興特別所得税の申告納税額の計算式>
申告納税額=基準所得税額+復興特別所得税
個人事業主は報酬や料金の内容によって、支払時に源泉徴収されることがあります。その場合は、確定申告の際に申告納税額から源泉徴収税額を差し引き、その差額を納付しましょう。
源泉徴収税額が申告納税額を上回る場合は、確定申告を行うことで納め過ぎた分の金額が還付されます。
個人事業主は、所得を得た翌年に確定申告を行い、所得税を自ら申告・納付する必要があります。税務署などから納税額の通知が来るわけではないので注意しましょう。
所得税の申告と納付の期限は、下記のとおりです。
<申告期限と納付期限>
申告期限:所得を得た翌年の2月16日~3月15日
納付期限:所得を得た翌年の3月15日
※開始日・期限日が土日祝日の場合は、翌平日
なお、前年の申告納税額などをもとに計算される予定納税基準額が15万円以上となる場合は、予定納税の対象となり、7月と11月に所得税の一部を前払いすることになります。
予定納税の対象になった場合は、6月中旬頃に税務署から予定納税額の通知が届きます。
個人事業主が所得税を納付するには、現金のほか、振替納税やスマホアプリ納付などさまざまな方法があります。
所得税の納付方法は、下記のとおりです。
■所得税の納付方法
| 納付方法 | 概要 |
|---|---|
| 振替納税 | 事前に届出をした預貯金口座から、自動引き落としで納付する方法。利用するには、税務署へ「預貯金口座振替依頼書」の提出が必要 |
| ダイレクト納付 | e-Taxを利用して、事前に届出をした預貯金口座から引き落として納付する方法。初回のみ事前に「ダイレクト納付利用届出書」の提出が必要 |
| インターネットバンキング等 | インターネットバンキング口座やATMから納付する方法 |
| クレジットカード納付 | 「国税クレジットカードお支払サイト」からクレジットカードで納付する方法。納付税額に応じた決済手数料がかかる |
| スマホアプリ納付 | 「国税スマートフォン決済専用サイト」からスマホ決済アプリを利用して納付する方法。納付税額が30万円以下の場合に限られる |
| コンビニ納付(QRコード) | 国税庁ホームページから納付情報のQRコードを作成し、コンビニエンスストアにて現金で納付する方法。納付税額が30万円以下の場合に限られる |
| 現金で納付 | 金融機関や税務署の窓口で、納付書を用いて現金で納付する方法 |
※参照:国税庁「【税金の納付】」
個人事業主にとっては、税金を計算するだけでなく節税対策も重要です。ここからは、個人事業主に効果的な節税ポイントをご紹介します。
<個人事業主の所得税の節税ポイント>
個人事業主が確定申告で青色申告を選ぶと、さまざまな節税メリットを受けられます。
たとえば、所定の要件を満たして青色申告を行うと、最大65万円の青色申告特別控除を適用でき、所得から控除することで税負担を軽減できます。そのほかにも、赤字の繰越や、届出を行い一定の要件を満たせば家族への給与を経費にできる制度などもあるため、事前に確認しておきましょう。
なお、青色申告を行うには、税務署へ「所得税の青色申告承認申請書」の提出が必要です。
事業に必要な経費を正しく計上することで、結果として課税対象となる所得を抑えることができます。
経費が発生した際には領収書やレシートを保管し、漏れのないように計上しましょう。自宅や車、携帯電話などを事業とプライベートで兼用している個人事業主の場合は、事業使用分の金額を経費計上する「家事按分」も可能です。
とはいえ、過剰な経費が利益を圧迫し、事業運営に影響をおよぼしては本末転倒です。節税のために経費を増やそうとするのではなく、事業実態にもとづいて正しく計上する必要があります。
確定申告の際には、所得控除を忘れずに申告しましょう。個人事業主が適用することが多い所得控除は、基礎控除のほか、医療費控除、社会保険料控除、生命保険料控除などです。また、小規模企業共済やiDeCoに加入している場合は、掛金の全額が小規模企業共済等掛金控除の対象となります。
所得控除は、条件に該当していても、自ら申告しなければ適用されません。所得控除の申告を忘れると、税金の納め過ぎになってしまう可能性があります。
自営業については、下記の記事をご覧ください。
個人事業主の所得税は、1年間の収入(売上)から経費を差し引いた所得をもとに計算されます。ただ、所得にそのまま税率を掛けるのではなく、所得控除や税額控除などを考慮した計算が必要です。個人事業主が税負担を抑えるには、売上や経費を正確に記帳した上で、青色申告や各種控除などを上手に活用するとよいでしょう。
記帳を効率化したい場合は、売上をデータで管理できるキャッシュレス決済の導入が効果的です。特に、飲食店や小売店などの店舗ビジネスや、ネット通販などの個人向けサービスでは、キャッシュレス決済を導入することで、現金以外の支払方法を希望するお客さまにも対応できるようになります。
新たにキャッシュレス決済を導入するなら、d払いがおすすめです。
d払いを導入すれば、現金を数える手間を省けるだけでなく、QRコード決済の売上をデータで管理することも可能です。個人事業主にもメリットの多いd払いを、ぜひご検討ください。
※QRコードは、株式会社デンソーウェーブの登録商標です。
※本記事は、2026年6月現在の法令・税制にもとづいて作成しています。制度内容は変更される場合があります。
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よくあるご質問
個人事業主が払うべき税金は?
個人事業主にかかる主な税金は、以下の4種類です。
・所得税および復興特別所得税
・住民税
・消費税
・個人事業税
売上高1,000万円を超えるとどうなりますか?
原則として消費税および地方消費税の確定申告が必要になります。
納める消費税額は、課税売上にかかる消費税額から課税仕入にかかる消費税額を控除(仕入税額控除)して計算を行います。
個人事業主の所得税はいくらですか?
課税所得金額によって税率が変わるため、金額は一律ではありません。
「(収入−経費−所得控除)× 所定の税率 − 控除額」で計算します。例えば課税所得500万円の場合、税率20%・控除額42万7,500円となり、所得税額は57万2,500円となります。
監修者プロフィール

黒川 一美
日本FP協会 AFP認定者、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
FPサテライト株式会社 流山サテライトオフィスマネージャー
大学院修了後、IT企業や通信事業者でセールスエンジニア兼企画職として働く。保険や税制の執筆業務を得意とし、年間約150本の執筆・監修を行う。通信事業者での経験を活かし、通信費削減に関する情報提供にも力を入れる。地域とのつながりを重視し、3人の子育てをしながら「地域×FP」をテーマに空き家問題や創業支援に取組む。
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