黒川 一美
日本FP協会 AFP認定者、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学院修了後、IT企業や通信事業者のセールスエンジニア兼企画職として働く。出産を機に退職し、自分に合ったお金との向き合い方を見つけるため、FP資格を取得。現在は3人の子育てをしながら、多角的な視点からアドバイスができるFPを目指して活動中。
2024年5月10日
個人事業主
店舗開業
お祝いやイベントなどで花をプレゼントする機会が多くあるため、花屋はたくさんの人に喜んでもらえる仕事として憧れる人もいるでしょう。ただ、花屋を開業しても経営していくのは難しいといわれることがあり、ほかの業種にはない準備もあります。
ここでは、花屋を開業するために必要な準備や、花屋の経営が難しいといわれる理由、花屋開業を成功させるポイントなどについて解説します。
一般的に、花屋の開業には1年程度の準備期間がかかるといわれています。「フラワーショップを開きたい」「自分で花屋を経営したい」と思ったら、早めに準備に取りかかることをおすすめします。花屋を開業するまでの流れは、下記の図のとおりです。ひとつずつ具体的な内容を見てみましょう。
花屋の開業準備でまず行うべきことは、「どんな店舗にしたいか」というコンセプトの決定です。一口に花屋といっても、ターゲットとする顧客層や利用してもらいたいシーン、めざす雰囲気など、店舗によってコンセプトは異なります。コンセプトの設計は、店舗の場所や外観、内装、提供する商品やサービスにも影響します。具体的な開業準備に取りかかる前に、店舗の軸となる方向性をしっかりと定めておきましょう。
コンセプトを考えるときには、「5W2H」の手法が役立ちます。5W2Hとは、「When(いつ)」「Where(どこで)」「Who(誰に)」「What(何を)」「Why(なぜ)」の5Wと、「How(どのように)」「How much(いくらで)」の2Hの要素から情報を整理するフレームワークです。たとえば、次のように、自分のめざしたい店を5W2Hで考えてみましょう。
<花屋のコンセプト設計例>
「5W2H」でコンセプトが固まったら、次に事業計画書を作成しましょう。事業計画書とは、事業をどのように運営し、どうやって収益を上げていくのかをまとめた書類です。考えたコンセプトを具体化し、仕入れや見込み客数、コストなども踏まえた現実性の高い事業計画を立てます。
事業計画書は、開業時や開業後に融資を受ける際に必要になります。たとえ融資を受ける予定がなくても、事業計画書を作成することによりビジネスとして客観的に見つめ直す機会となるため、融資の有無を問わず、作成することをおすすめします。事業計画書は、日本政策金融公庫のWebサイトに「創業計画書」としてテンプレートがありますので、参考にしてみてください。
日本政策金融公庫「創業計画書」については、こちらのページをご覧ください。
コンセプトの設計や事業計画書の作成と並行して、決定しておきたいのが開業形態です。最近では、テナントを借りる以外に、自宅で開業したり、ネットショップで花を販売したりするケースも増えています。実店舗を構えれば、切り花1本から花束、アレンジメントまで顧客のニーズにきめ細かく対応できます。貸店舗ならコンセプトに合った立地で出店することもできますし、自宅開業なら賃料がかかりません。一方、ネットショップは店舗にかかる費用を抑えられる上、基本的に受注販売となることが多いため、大量の在庫を抱えずに済みます。
貸店舗で開業する場合は、物件選びに時間がかかるので、早めに探しはじめるとよいでしょう。駅前や商店街、住宅地など、コンセプトに合った立地を検討し、出店を検討するエリアに競合店舗があるか、人の流れはどうなっているかなどを調査します。
花屋を開業するにはさまざまな資金が必要になります。株式会社日本政策金融公庫の「2023年度新規開業実態調査」によると、開業資金(全業種)の平均は1,027万円、中央値は550万円です。
ただ、実際に必要な資金は、開業形態などによって大きく異なります。たとえば、実店舗を構えるなら、物件取得費や内装・外装工事費、作業台・ショーケース・フラワーキーパー・ロールスクリーンといった什器・備品費などがかかります。花の仕入れや配達のために車を準備するなら車両費も必要です。そのほか、開業してからの家賃や仕入れ、人件費などの運転資金も考慮しておかなければなりません。
なかでも金額が大きくなりやすいのが、物件取得費です。花屋の運営にはある程度の広さが必要なため、一般的には事業用の貸店舗を借りることになります。その場合、居住用の物件とは異なり、敷金や礼金に加えて賃料数か月分の保証金がかかります。物件によっても異なりますが、一般的には、初期費用として家賃の5~8倍程度の金額が必要になるでしょう。条件のよい物件ほど賃料は高くなりますから、物件取得費も多くかかることになります。
ネットショップでの開業なら、これらの物件取得費はかかりません。ただし、ネットショップの場合は全国にライバルがいることになり、実店舗よりも競争率は高くなります。
下記に、花屋開業にかかる資金内訳の目安を挙げます。
■花屋の開業資金内訳の例
物件取得費 | 100万~300万円 |
---|---|
内外装工事費 | 100万~400万円 |
設備・備品購入費 | 10万~150万円 |
広告宣伝費 | 5万~30万円 |
車両費 | 0~200万円 |
合計 | 1,215万~1,080万円 |
必要な金額を自己資金だけでまかなうことが難しい場合は、開業時に利用できる「小規模事業者持続化補助金」や地方自治体の助成金・補助金制度などを利用するのもひとつの方法です。それぞれ申請要件が定められているので、該当するかどうかを確認しましょう。
貸店舗や自宅で開業する場合は、内装の工事が必要です。具体的には、電気工事や水道工事、床工事、照明、塗装、看板などです。特に、生花を扱う花屋では、水回りの工事は欠かせないでしょう。内装工事を行う際には、実用性だけではなく見た目のイメージも十分考慮することが大切です。店舗の広さやレイアウト、コンセプトなどを踏まえてデザインを決定します。
花は生鮮品なので、仕入れルートの確保は非常に重要です。花屋の主な仕入先は、生産者、仲卸売業者、花き※市場の3つです。ただ、生産者から直接仕入れるのは、販売実績や人脈のない状態では難しいかもしれません。そのため、仲卸売業者か花き市場から仕入れるケースが大半でしょう。
なお、花き市場で花を仕入れるには、基本的に登録申請が必要です。登録申請から承認までは1か月程度かかる場合もあるので、事前に提出書類や要件などを調べて準備しておきます。
花屋を1人で営業していると、仕入れや配達のたびに店舗を空けなければいけません。従業員を雇いたい場合は、店舗の規模に応じてスタッフの募集を行いましょう。花のアレンジや花束の製作などもスタッフに任せたいなら、フラワーアレンジメントなどの資格を持っている人材を採用するのがおすすめです。研修期間なども考慮し、余裕をもって採用活動を進めていくことをおすすめします。
店舗で使用する設備や備品、消耗品などを準備します。具体的には、ディスプレイ用品や、ハサミやナイフをはじめとした花の手入れ用品、ラッピング資材、掃除用品などが挙げられます。併せて、パソコンやレジなどの設備も必要です。
開業準備と併せて検討しておきたいのが、キャッシュレス決済の導入です。花の価格は種類やシーズンなどによっても変わる上、切り花1本ごとに価格を設定するため、会計時に細かい小銭のやりとりが発生しがちです。一方、花束やアレンジメントフラワーなど、比較的高額な商品も少なくありません。キャッシュレス決済を導入すれば、どちらのケースにもスムーズに対応でき、会計作業の効率化や顧客満足度の向上をめざせます。
キャッシュレス決済には、クレジットカードや電子マネー、QRコード決済など、さまざまな種類があります。ターゲットとする層のニーズも踏まえて、導入するキャッシュレス決済を選びましょう。
開業準備がある程度進み、オープン日が決まったら、WebサイトやSNS、チラシ、ポスターなどで告知を行いましょう。地域密着型の花屋をめざすなら、地元情報紙などへの出稿や、ポスティングなども効果的です。オープン記念のキャンペーンを行うなど、まずは店舗を知ってもらう工夫を心掛けることをおすすめします。
開業日から1か月以内に、「個人事業の開業・廃業等届出書」(開業届)を所轄の税務署に提出します。確定申告で青色申告をしたい場合は、併せて「所得税の青色申告承認申請書」も提出しておきましょう。
そのほか、従業員を雇用するなら労災保険の手続き、さらに要件を満たす場合は雇用保険や社会保険の加入手続きが必要になります。それぞれ提出期限が定められているので、必要な手続きをしっかりと確認しておきます。
ステップに沿って準備を進めていけば、花屋を開業すること自体はそれほど難しいものではありません。しかし、花屋を開業後、安定して経営を続けるのは難しいといわれることがあります。花屋の経営にあたり「難しい」といわれる背景には、次のような理由があります。
花屋経営が難しいといわれる理由のひとつに、花は生鮮品なので、商品として取り扱うには専門的な知識が求められ、管理が難しいことが挙げられます。仕入れた花は、そのまま店頭に並べておけばいいというわけではありません。適切な処理を施した上で、温度や湿度、水分、日当たりなどに気を配らないと鮮度を保つことができず、状態が悪くなってしまいます。さらに、管理方法は花の種類によっても異なります。
フラワー業界は「繁忙期が短期かつ多い」という特徴があり、経営が難しいといわれる理由のひとつです。たとえば、入学式や卒業式、母の日、敬老の日、クリスマス、バレンタインデー、ホワイトデーなど、イベントごとに繁忙期があり、売れ筋の花もそのたびに変わります。イベント時期だからといって大量に仕入れすぎると売れ残りのリスクがあり、反対に仕入れが少なすぎると品切れで販売機会を逃してしまいます。短期かつ頻繁に移り変わる繁忙期に合わせて、適量の仕入れを判断しなければなりません。
特別な資格が不要で決まった販売スタイルがない花屋では、安定した売上を上げられるかどうかは戦略次第であり、経営の難しさにもつながります。近年、個人が花を購入する割合は減少傾向です。また、購入したとしても、上述したイベント時に比べ、自宅用は少ない傾向があります。そのため、個人客のみをターゲットとしていると、大きな利益は出しにくいのが実情です。安定した利益を狙うなら、学校や会社、冠婚葬祭業者、ホテルなど法人顧客の獲得をめざす必要があるでしょう。
また、近年では、ネットショップで花を購入する人も増えてきています。実店舗で開業する場合も、店頭販売と併せてネット注文にも対応するという方法もあります。
花屋開業に必須の資格はありません。資格がなくても、開業届を提出すれば、花屋を開業することは可能ですが、「フラワー装飾技能士」「フラワーデザイナー」といった花の装飾やアレンジに関する資格や、「色彩検定」「カラーコーディネーター検定」などの色彩に関する資格を取得しておくと、花屋を運営する上で役立ちます。専門的なスキルを身につけることで、他店との差別化につなげることもできるでしょう。
「経営が難しい」といわれることも多い花屋ですが、いつくかのポイントを抑えることで成功につながります。花屋を開業して成功させるには、次のポイントを意識しましょう。
店舗運営で成功するために大切なことは、他店との差別化をはかり、多くのお客さまに来てもらうことです。とはいえ、花屋の場合、商品そのもので差別化をはかることはできません。そのため、販売方法や販売商品のラインナップ、ディスプレイなどに工夫を凝らし、自店ならではの方向性を打ち出す必要があります。すでに成功している花屋なども参考にしながら、コンセプトを設計し、しっかりと事前準備を行いましょう。
花屋に求められているのは、ただ「花を売る」ということだけではありません。お客さまの好みや予算、目的に応じたきめ細かいサービスを提供することが、花屋成功のポイントになります。たとえば、「5,000円で退院祝いの花束を作ってほしい」「30代の女性に華やかな花を贈りたい」「購入した花を長持ちさせるにはどうすればいい?」など、さまざまな依頼や質問、悩みに応え、花そのものにとどまらない付加価値を提供することが大切です。
顧客満足度を上げる方法のひとつとして検討したいのが、キャッシュレス決済の導入です。実店舗でもネットショップでも、キャッシュレス決済が利用できれば、もっと気軽に花を購入できるようになるでしょう。
新規開業する花屋でキャッシュレス決済を導入するなら、おすすめなのがd払いです。d払いは、スマートフォンのアプリを使って行うキャッシュレス決済です。d払いなら9,000万人を超えるdポイントクラブ会員に店舗の存在をアピールでき、集客・売上アップが見込めるでしょう。
また、ドコモでは、d払い加盟店で利用できる「スーパー販促プログラム」を提供しています。「スーパー販促プログラム」をつかえば、お客さまに加盟店からのメッセージやキャンペーン情報を配信でき、集客や利用単価アップといった施策ができるようになります。
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よくあるご質問
フラワーショップを開業するにはいくら必要ですか?
株式会社日本政策金融公庫の「2023年度新規開業実態調査」によると、開業資金(全業種)の平均は1,027万円、中央値は550万円です。ただ、実際に必要な資金は、開業形態などによって大きく異なります。
花屋を開くのに必要な資格は?
花屋開業に必須の資格はありません。「フラワー装飾技能士」「フラワーデザイナー」といった花の装飾やアレンジに関する資格や、「色彩検定」「カラーコーディネーター検定」などの色彩に関する資格を取得しておくと、花屋を運営する上で役立ちます。
花屋さんで大変なことは何ですか?
花屋の経営にあたり難しいといわれる背景には、生花管理が難しいことや繁忙期が短期かつ多いことが挙げられます。花は生鮮品なので、商品として取り扱うには専門的な知識が求められ、管理が難しいことが挙げられます。また、短期かつ頻繁に移り変わる繁忙期に合わせて、適量の仕入れを判断しなければなりません。
監修者プロフィール
黒川 一美
日本FP協会 AFP認定者、2級ファイナンシャル・プランニング技能士
大学院修了後、IT企業や通信事業者のセールスエンジニア兼企画職として働く。出産を機に退職し、自分に合ったお金との向き合い方を見つけるため、FP資格を取得。現在は3人の子育てをしながら、多角的な視点からアドバイスができるFPを目指して活動中。
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