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まず、自分をハッピーに。
周りにもポジティブな気持ちを伝播させる生き方を
【IT企業のマーケター/大阪の一棟貸し長屋CONTEXTED共同代表・森原まや】

目次
  1. 仕事にのめり込んだ日々
  2. 世界の広がりと価値観の変化
  3. 自分を喜ばせる働き方と暮らし方の実践

人はどのようにして大切にしたい価値観に気づき、人生の軸を見つけるのか。各界で活躍する方の人生ストーリーから紐解きます。今回は、外資系IT企業で働きながら、一棟貸し宿を共同経営する森原まやさんをご紹介。

仕事にのめり込んだり、コミュニティが広がり価値観が変わったりしながら、ハッピーな自分でいられる暮らし方や働き方を模索し、実践されています。森原さんが自分らしく生きるために、どんなことを大切にしているのか、お話を伺いました。

1仕事にのめり込んだ日々

新卒で、電機メーカーに就職しました。
祖母が童話作家、母がイラストレーターで、創作が身近な環境で育ったことや、大学の研究室での取り組みで、町工場に通って作品づくりやプロダクト開発をした経験をきっかけに、世界を舞台にした日本のものづくりに携わりたいと思ったのがメーカーを選んだ理由でした。

入社して2年は法人営業を経験し、パソコンのグローバルマーケティング業務に4年携わりました。
30代を間近に控えた29歳のとき、まったく新しい何かに挑戦してみたいと、当時新設されたばかりの新規事業室の室長に「人を募集していないですか?」と直接連絡をして、社内異動しました。
個人に与えられる業務の幅や裁量が大きく、配属初日からアメリカ出張に行き、その後、新商品のローンチ準備を任され一人でニューヨークに派遣されました。

高校生のころに10ヶ月の交換留学でアメリカに住んだ経験はありましたが、ビジネスシーンでの言語には不安がありましたし、いざ仕事をするとなると、知らないことばかり。
現地に自分しかいなかった分、大きな責任も感じながらも、「やらないと何も始まらないから、とりあえずなんでもやってみよう!」と、思いついたことから始めていきました。

賃貸物件を探して契約し、デスクもなかったので空いているオフィススペースを探したりと、活動の基盤をつくるところからのスタートでした。
環境が整ってきてからは、マーケットリサーチや販路開拓、パートナー探しやイベント企画といった、さまざまな業務に取り組みました。
新商品のローンチが近づいてくると日本から他のチームメンバーも現地に来て、最後は合宿みたいでしたね。

日中はアメリカ現地の仕事をして、夜中は日本の仕事をする生活で、27時間働いていると冗談で言われることもありましたが、まさにそのくらい働いていたと思います。
大変でしたが、やりがいがありました。
初めての海外で働く経験はありとあらゆる点が新鮮で、楽しかったですね。

重要な仕事を任され張り切って働けたことや、与えられた仕事ではなく自分で考えて行動し、馴染みのない海外の土地でも肌感覚を持って仕事ができたことは、自信になりました。
思いついたら、なんでも思いっきりやってみる!ことを実践して、フルスイングで挑戦する楽しさを知り、それによってたくさん良い経験ができたんです。
「やってみたい」と提案すると「やってみなよ」と背中を押してくれる上司、戦うように共に働いた同僚の存在も、かけがえのないものでした。

ブルックリンで借りていた部屋のオーナーと
マンハッタンの風景

ブルックリンで借りていた部屋のオーナーと、マンハッタンの風景

2世界の広がりと価値観の変化

アメリカの仕事が一段落してから、30歳のときには、経済産業省が主催する、イノベーション人材の育成プログラム「始動 Next Innovator」に一期生として参加しました。
学生起業家や、大企業で新規事業に携わる人、自治体で働く人など日本全国で100人以上の熱い思いをもった仲間と出会うことができました。

こういった社外活動やニューヨークでの経験を通して、自分が関わる世界がどんどん広がり、さまざまな経験や人との出会いを通して、自分の価値観が変わっていくのを感じました。

25歳のときに結婚しましたが、仕事が面白くて、どんどんのめりこむうちにパートナーとすれ違うようになり、まわりの友だちは第一子や第二子が生まれるタイミングだったのですごく悩みましたが、相談して離婚を決めました。
32歳のときでした。
その後、一人になってしばらくしてから、私はまた幸せになれるんだろうか?という将来への不安や焦り、寂しさがじわじわと襲ってきました。

小さいころから、困ってもわりと自分で解決してきたタイプだったので、友だちから相談はされても、自分が相談するのには慣れてなかったんですよね。
今は意識して話せるようになりましたが、当時は周りにSOSもうまく出せず、人前では元気にしていたので誰かに気づかれもせず、一人になると泣いてばかりいました。
心もまったくワクワクしなくなっていました。

そんなある日、急に何もせずにずっと悩んでいるのは私らしくない、とはっとしたんです。
思いついたらなんでもやってみたり、フルスイングして楽しんだり、私らしくいられるのはそういうときだったじゃないか、と。

まずは何かを新しく始めようと思い立ちました。
そのころ副業が徐々に話題になっていて、「私もやってみたい!」と周りに話すようになりました。
考えを口に出すのは大事だなとよく思うのですが、たまたま話した起業家の友だちが興味を持ってくれて、マーケティングやブランディングのお手伝いを始めました。
ご縁があって、ベンチャー企業などからもお声掛けいただいて、コミュニケーションデザインのサポートをするといった機会もいただきました。

自分らしくいられるようにしようと動き出したら、自然と良いサイクルが回り始めて、気づけば気持ちも上向きになっていました。

同じ時期、会社の後輩から、面白い人がいるから紹介したいと声をかけてもらったのがきっかけで、「拡張家族」をコンセプトにした、渋谷のコレクティブハウスに住み始めました。
血の繋がりや土地の繋がりでなく、価値観で繋がった仲間たちを家族と捉えて共に暮らす社会実験のような感じで、40人ほどいたメンバーは、作家や映画監督、起業家や弁護士など、さまざまな肩書きを持ち、違うジャンルの複数の仕事をしている人、国内外に生活拠点がいくつもある人もいました。

ずっと大企業勤めだった私の周りにはいなかったような、ユニークな生き方をしているメンバーばかり。
みんなとの暮らしや対話を通して、働き方も暮らし方も生き方も、自分が当たり前に思っていたことはただの固定概念で、もっと自由で良いんだと考えるようになりました。

それから、「暮らしそのものを実験する」という考えを持つようになりました。
もっと自分がハッピーでいるには、どのような暮らしをしたらよいか。
理想の暮らしを想像してみると、大好きな自然に囲まれてのんびり暮らしたいなと。
でも、東京での仕事もあるし、家族や友だちもいるので離れたくはない。
そこで、渋谷でのシェア暮らしに加えて、仲間と千葉に古民家を借りて、2拠点生活を始めました。

千葉の酒々井で借りていた古民家

千葉の酒々井で借りていた古民家

平日は東京で仕事をして友だちと遊んで、週末は千葉でのんびりと畑仕事をして…都会と田舎を行ったり来たりしながら、その両方の良さを楽しむバランスが面白かったですね。
OSが切り替わるような、心のスイッチが変わるような。
週末は定期的に畑イベントを開いて友だちを呼んで、みんなで収穫した野菜で料理を作って、大広間でゴハンを食べて。
とても楽しかったです。

週末に定期的に開催中の畑仕事のイベントの様子

週末に定期的に開催中の畑仕事のイベントの様子

ハッピーでいるには、どのような働き方をしたいかも改めて考えました。
メーカーでの仕事はとても楽しかったですが、まったく別の何かもやってみたいとの気持ちは常にあったので、会社員の仕事も続けながら、渋谷のコレクティブハウスで出会ったメンバーと起業。
築100年の大阪の長屋をフルリノベーションし、一棟貸し宿 CONTEXTED(コンテクステッド) として再生して、共同代表として経営や運営を始めました。
学生時代に建築や環境デザインを学び、暮らし方にも興味があったので、「大阪の下町で、暮らすように過ごせる場所」というコンセプトにしました。
起業や事業の立ち上げは初めての経験ばかりでしたが、自分ができることに大きな幅を与えてくれる機会になりました。

その後、新卒から勤めた会社も勤続10年でちょうど良い区切りができたと感じ、全然違う環境に飛び込んで、新しいチャレンジをしたい思いもあって、転職を決めました。

3自分を喜ばせる働き方と暮らし方の実践

現在は、外資系IT企業でアプリなどのプロダクトのマーケティングや、ソーシャルメディアを活用したマーケティングといった仕事を担当しています。
引き続き、大阪の一棟貸し長屋 CONTEXTEDの運営も続けています。

他にも、自分が楽しいと思えることに積極的に取り組んでいます。
ワインのオンラインショップを始めた幼なじみが、ウェブサイトで使うイラストを描いてほしいと相談してくれて、ワイン払いでプロジェクトメンバーの似顔絵を描きました。
イラストレーターの母の仕事は小さいころからずっと見ていましたが、自分がまさかイラストで依頼をいただくなんて!とすごくうれしかったです。

それがきっかけで、ギフトシェアやスキルシェアという方法で、お金ではないものと交換に似顔絵のイラストを描き始めました。
大阪で経営している宿の近くのコーヒー屋さんからは、ご家族の似顔絵を描く代わりに、コーヒーセットをギフトでいただきました。
今は、南三陸で、ワカメ払いの案件の相談が来ていてワクワクしています。
何かに一緒に取り組んだ経験によって、関係が深まったり、相手を深く知ることができるのが面白いと思っていて、こういった小さなプロジェクトは、ゆるやかに続けようと思っています。

共同代表を務める、大阪の一棟貸し長屋 CONTEXTED(コンテクステッド)

共同代表を務める、大阪の一棟貸し長屋 CONTEXTED(コンテクステッド)

最近特に大切にしているのは、自分がハッピーでいること。
楽しいことをして、いつもワクワクしていたい
、そんな自分でいられるようにするには、どんな働き方をして、どう暮らして、ひいては、どう生きていけばよいか。
そう考えると、自分を喜ばせるための働き方や暮らし方のイメージが湧いてきます。

たとえば、以前は寝る時間を削って働いていた時もありましたが、今は、無理をしていないか、楽しめているかを意識するようにしています。
転職をした外資の会社は、とても面白くて優秀な人ばかりですが、みんな遊び方や休み方も上手で、企業文化としてもウェルビーイングを大事にしているので、自分がどんな状態かを理解したり、どうあるべきかを考えるにあたってとても参考になります。

私の場合は、海や山に行くのが一番のリフレッシュになるので、時間があればなるべく自然を楽しみにいくようにしています。
暮らし方に関しては、コロナでリモートワーク中心の働き方にシフトしているので、まさに見直しをしているところです。
自分自身を喜ばせてあげられるように、少しずつ気づいたことを日々の生活で実践していくようにしています。

働き方や暮らし方を実験と捉えると、新しく何かにチャレンジするハードルは下がるのではないかと考えています。
実験なんだから、成功したらラッキーだし、失敗しても学びになる。
それに、何をもって成功とするか、失敗とするかも、決めるのは自分なんですよね。

私は、自分自身がハッピーであれば、家族や友だち、同僚や周りのみんなにも優しくできて、ポジティブな気持ちを送れると思うんです。
引き続き、自分を喜ばせる暮らし方や働き方を考えて実践しながら、その過程そのものも楽しんでいきたいと考えています。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2021年12月)のものです

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