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経験ゼロで開発したアプリが日本最大級のアトピーコミュニティに。
次の挑戦へ
【アトピー患者向けのアプリ開発/公認会計士・Ryotaro Ako】

目次
  1. アレルギー体質で試験に集中できず不合格に
  2. アトピー患者のためのアプリを作りたい
  3. アトピーはみんなで治す時代へ

人はどのようにして大切にしたい価値観に気づき、人生の軸を見つけるのか。各界で活躍する方の人生ストーリーから紐解きます。今回は、公認会計士として働きながら、アトピーを持つ方を対象とした匿名の画像共有型アプリ「アトピヨ」を開発・運営するRyotaro Akoさんをご紹介。

幼少期からアトピー、ぜん息、アレルギー性鼻炎と3つのアレルギー疾患を抱えていたAkoさん。36歳のとき、家族旅行中に症状が出て、旅行が中止になったことをきっかけに、アレルギーと向き合うようになりました。アトピー患者のためのアプリを開発しようと思ったきっかけとは。お話を伺いました。

1アレルギー体質で試験に集中できず不合格に

幼少期から成長とともに、次々とアレルギー疾患を発症する「アレルギーマーチ」に悩まされました。
0歳から3歳まではアトピーの症状が出て、並行してぜん息を発症。
小学生になってからはアレルギー性鼻炎も発症しました。
ぜん息の発作が出た夜はなかなか寝付けず、苦しかったですね。
アレルギー性鼻炎のせいで蓄膿症にも悩まされ、勉強に集中できない日も多かったです。

理工系の大学院を卒業後、公認会計士になるために専門学校に通いました。
1年目は知識不足で二次試験に落ちてしまい、2年目こそはと朝から晩までさらに勉強を重ねました。
模試の結果も合格ラインに達していたので、今回は大丈夫だろうと迎えた試験でしたが、蓄膿症の症状がひどく出てしまい、問題に集中できないまま、終えてしまいました。
後日発表された試験結果は、1点足らず、まさかの一次試験落ちでした。

症状がひどくなかったら、受かっていたかもしれない。
一次試験に落ちたのは、本当にショックでした。
あれだけ勉強に打ち込んだ2年間が全部ムダになった気がして涙が出ました。

翌年の試験はこんなことがあってはならないと、耳鼻科に定期的に行き治療に努めました。
3回目の試験で無事に二次試験も合格し、27歳で公認会計士の卵として働き始めました。

社会人になってからもハウスダストに悩まされました。
出張先のホテルによっては、部屋に入った瞬間に直感でわかるのです。
案の定、翌朝から鼻炎の症状が出て、仕事に影響が出ることもありましたね。

36歳のとき、妻と子ども2人を連れ、車で熱海に旅行に行きました。
夕方、旅館に入った瞬間、「あ、これはやばいな」と思いました。
旅館は昭和時代の造りで、床はじゅうたんで、部屋には古いソファーやカーテンがありました。
そんな室内で子どもたちは飛びはねて遊ぶので、空気中埃でいっぱいに…。
しばらくすると、私の顔や腕が赤くパンパンに腫れあがり、涙も出てきました。

症状は夜になるにつれてひどくなり、動悸が激しくなり、息苦しくなりました。
寝るに寝られず、最終的には救急車を呼びました。
病院でステロイドの点滴をしてもらい、症状は治まりましたが、旅行は中止となり、妻の運転で帰宅。
この出来事をきっかけに、アレルギー疾患に対して何かできないかと考えるようになりました。

2アトピー患者のためのアプリを作りたい

旅行から帰ってきてからは、会計士の仕事をしながら、空いた時間を利用してアレルギー疾患の患者会でボランティア活動を始めました。
アレルギーに対する理解を深めるために、「環境アレルギーアドバイザー」という資格も取得しました。

アレルギー疾患は、アトピー、食物アレルギー、ぜん息、アレルギー性鼻炎などさまざまですが、自分なりに整理をした結果、アトピーが最も深刻だと考えるようになりました。
アトピーは肌に症状が出るので、見た目に直結するので精神的負担が大きく、また、ほぼ24時間かゆみが続いて日常生活や睡眠への影響が大きいと感じました。

さらに調べていくと、最新の研究から、アトピーや肌荒れから食物アレルギーなど他のアレルギー疾患に連鎖する可能性があることも知りました。

幸いにも私のアトピーは幼少期で完治しました。
今アトピーに苦しむ人の悩みを聞いてみようと、Twitterでアトピーの悩みや治療の経過を発信している方にコンタクトを取りました。
その方が公開しているアトピーの写真付きの闘病日記ブログが、アトピーの方たちから注目されていることを知りました。
他にも100人ほどに聞き取りをして、アトピーの経過画像を共有したいというニーズがあるのもわかりました。
アトピーは治療に時間がかかり、改善と悪化を繰り返します。
自分の治療経過は他の人と比べてどうなのか、それを「画像」で見て知りたがっている人が多いと気づいたのです。
同時に、アトピーは精神的負担が大きい、ナイーブな病気であることから、アトピーの方同士の情報交換には匿名でも利用できるTwitterが使われているのも知りました。

それなら、アトピーの悩みや症状を匿名の「画像」で共有して、みんなで励まし合いながら治療に取り組めるアプリを開発すればいいのではと、早速エンジニア探しを始めました。
しかし、2ヶ月ほど探しても見つからず、もうこれは自分でやるしかないなと、オンラインのプログラミングスクールに入りました。
一日も早くアプリを形にしたいという思いからでした。

大学・大学院時代は理工系だったので多少のプログラミング経験はありましたが、ほぼゼロからのスタートでした。
空いた時間を使って猛勉強しました。
何度も壁にぶつかったのですが、現役のプログラマーにサポートいただき、なんとか克服していきました。
自分がイメージしているものが、形になっていくのは本当に楽しかったです。

半年ほどスクールでアプリ開発を学んだ後、2018年7月、アトピー見える化アプリ「アトピヨ」をリリースしました。
アトピー患者が皮膚の症状の写真を投稿して、治療記録に役立てるのと同時に、匿名のユーザー同士での情報共有・励まし合いができるアプリです。
薬や食事、石けんなど肌に触れるものも写真に撮って、記録できます。

リリース後「顔の症状記録に使いたいが、人には見せたくない」「自分だけの治療記録用に使いたい」という声を多くいただき、2019年2月、画像の非公開・公開を選択できる機能を追加しました。
2019年11月には、かゆみの記録機能も追加しました。

3アトピーはみんなで治す時代へ

現在は公認会計士として働きながら、空いた時間を使ってアトピヨの開発・運営をしています。

アトピーは、夏は汗でグジュグジュに悪化してしまい、秋に落ち着いたと思っても、冬の乾燥で今度はカサカサに悪化してしまうといったように、改善と悪化を繰り返す慢性疾患です。
アトピーの方の多くは、この経過を記録していません。
そこで、アトピヨでは、アトピーの症状経過を部位ごとに画像で記録して、治療に役立ててもらうという使い方を考えています。

また、アトピヨで撮った写真はクラウドに保存されてスマートフォン本体には残りません。
アトピヨの中に保存できるので、日常生活の写真とアトピーの経過写真を区別できます。

九州大学の調査ではアトピー患者の13%が「死んでしまいたいと思ったことがある」と答えており、実際アトピヨ内に「死にたい」という投稿が寄せられることもあります。
当事者にとっては、それほど精神的負担が重い病気です。
でも、そんな投稿に対して、「私もそうだったよ」と書き込んでくれる人がいます。
アトピヨ内のコメント3,000件を分析した結果、ユーザー同士のコミュニケーションによって、個々のユーザーがポジティブになっているのが確認できました。

患者同士が本音で話してサポートしあえる環境は、本当に大事だと思います。
アトピヨを使う人が増えれば増えるほど、患者同士の悩みも共有できます。
アトピーで悩む全ての人が安心・安全に使えるように、今後もアプリのアップデートを進めていきます。

おかげさまで、アトピヨはダウンロード数1万2,000件超え、画像投稿数1万6,000枚超えと、日本最大級のアトピーのコミュニティに育ちました。
アトピー患者は日本に600万人いると言われていますが、アトピーに困っている人は世界中にいます。
アトピーで悩む世界中の人にアトピヨを使ってほしいです。

また、今後はオンライン診療やAIを使った画像診断などの医療技術の進歩、アトピーの新薬開発も加速していきます。
医療機関や製薬会社とも連携して、将来のアトピー治療に役立てればと考えています。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2020年7月)のものです

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