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コーヒー、サウナ、クラフトビール。
食わず嫌いの人に分かりやすい情報発信を
【文筆家/イラストレーター・岩田リョウコ】

目次
  1. 後回しにしたら、できなくなるかも
  2. 食わず嫌いから著書出版
  3. 食わず嫌いの人の後押しを

人はどのようにして大切にしたい価値観に気づき、人生の軸を見つけるのか。各界で活躍する方の人生ストーリーから紐解きます。今回は、文筆家の岩田リョウコさんをご紹介。

コーヒー、サウナ、クラフトビールと、好きなものの魅力をウェブメディアや著書を通じて伝える岩田さん。でも、これらはいずれも「食わず嫌い」していたそう。挑戦してみて、その魅力に気づく体験をしてから、食わず嫌いをしている人に一歩踏み出す機会を提供できればと情報発信を続けています。そんな岩田さんが大切にしている価値観とは。お話を伺いました。

1後回しにしたら、できなくなるかも

自分が英語で苦労したのもあって、英語を教える仕事に就きたいと、大学卒業後はアメリカの大学に行き、英語教育の免許を取りました。
ただ、勉強しているうちに日本語を外国人に教えるのに興味を持ち始め、日本語教育を学べるアメリカの大学院に進学しました。

大学院で学生として勉強をしながら、学部生の日本語クラスの講師として教鞭をとっていました。
日本語を教えるのは大変でした。
現地の学生に日本語の仕組みがうまく説明できないんです。
答えはわかるのに、「どうして?」と聞かれると論理的に答えられない。
常にもどかしい気持ちを抱えていましたね。

生徒から質問されるたびに、私自身、日本語を一から勉強するような気持ちでした。
どうやったらわかりやすく学生に説明できるのか、一生懸命考える毎日。
自分なりに説明して、学生が理解してくれたときは、めちゃくちゃ爽快感がありました。
わかりやすく教える大切さを実感しましたね。

大学院卒業後は2年間の任期で外務省のシアトル総領事館に勤めました。
シアトルの生活は楽しかったのですが、最初はシアトルの「コーヒー文化」に慣れませんでした。
私は小学生の頃にコーヒーをお茶と間違えてご飯にかけて食べたトラウマがあり、コーヒーが大嫌いでした。
コーヒーを飲みに行こうと誘われても、私はお茶を注文していましたね。

でも、コーヒー文化が根付いた街に住んでいるのに、コーヒーが飲めないってダサいなと思うようになりました。
思い切って、家の近くのコーヒーショップでカフェラテを飲んでみたら…食わず嫌いは良くないなと思いましたね(笑)。
それからカフェラテにハマり、ブラックコーヒーも飲めるようになっていきました。

任期終了が近づいて将来はどうしようか考えていた頃、テクノロジー系のイベントに行き、日本人プログラマーと交流する機会がありました。
外務省で働いていた私にとって、どこでも、どんな格好でも働けるプログラマーのワーキングスタイルに衝撃を受けました。

プログラミングを学んで、日本語教師向けのウェブサイトを作ろうと考えました。
日本語教育の現場で働く先生たちは忙しくて自分で教材を作る時間がないので、最新の日本語教材が簡単に手に入るサイトを作れば、役に立てると思ったんです。

プログラミングを勉強したいと思いつつ、仕事が忙しくて手をつけられていませんでした。
そんなときに起きたのが東日本大震災でした。
今まであったものが消え、元気に暮らしていた人が突然亡くなる。
そんな日本の様子を見て、やりたいことを後回しにしたら、できなくなるかもしれないと思いました。
やりたいことがあったらとりあえずやってみる!任期終了後、すぐにプログラミングの学校に入りました。

2食わず嫌いから著書出版

プログラミングとデザインの練習がてら、「I LOVE COFFEE」というブログを立ち上げました。
すっかりコーヒーにハマっていて、発信したいこともあったんです。
コーヒーは年齢も国も関係なく世界中で飲まれている飲み物なので、トピックとしていいかなと思いましたね。

2ヶ月たってブログのアクセス数が急激に伸びました。
コーヒーのトリビアをイラストを使って表現してみたら、SNSで画像をシェアするブームにマッチしたんです。
予想外のことに驚きましたが、アクセス数が伸びるのがとにかく楽しくて毎日数字を見るたびに高揚感がありましたね。
生活するには十分の広告収入も得られるようになり、プログラミングスクールをやめてブログに専念することにしました。

ただ、高揚感は長く続きませんでした。
しばらくして、冷静さを取り戻すと「私は何をやっているんだろう」と焦り始めました。
それまでたくさんのお金と時間を使ってきた日本語教育を気づいたらやめていた。
日本語の教材を作るためにプログラミングの勉強したはずじゃなかったのか。
このままブロガーという不安定な仕事を続けていくのか。
そんなことを考えるうちに、「絶対に失敗してはいけない」とプレッシャーを感じるようになりました。
中途半端で終わってしまったら、日本語教師の道をやめたことを後悔すると思ったんです。

だったら、ブログをちゃんとやらなきゃいけない。
頭の中は常にコーヒーのことでいっぱいで、夢にコーヒーが出てくるほどでしたね。

コーヒーブログを3年続けて、本の出版が決まったとき、やっと安心できました。
選んだ道を正解にしていくものだとはよく言われる話ですが、やっぱり、わかりやすい形になるまでは不安でしたね。
本という明確なものができて、この道を進み続けていいんだと、心から思えるようになりました。

アメリカでの出版後に、日本で翻訳版が出版され、そのタイミングで2ヶ月ほど帰国していた間に、サウナに行かないかと友人に誘われました。
なんとなく嫌で最初は渋々ついていきました。

これも完全に食わず嫌いでした。
友人はサウナの正しい入り方や楽しみ方を教えてくれました。
冷え性に効くし、心の調子がととのう、サウナってすばらしい!衝撃でしたね。
そこからめちゃくちゃハマり、「I LOVE SAUNA」というブログを立ち上げました。
ブログがきっかけでサウナ関連の執筆の仕事も増え、サウナの本場・フィンランドのサウナアンバサダーにも任命されました。
フィンランドサウナに関する著書も出版しました。

3食わず嫌いの人の後押しを

三度目の食わず嫌いはクラフトビールでした。
私はビールが全く飲めなかったんですけど、クラフトビールのことを熱く語る友人を見て興味を持ったんです。
2020年4月には友人と共著でクラフトビールの本を出版しました。
クラフトビールはそれぞれに個性があり、手間隙かけてつくられているので、執筆しながらクラフトビールの沼にハマっていきましたね。

今後は「食わず嫌いをしている人の世界を広げられる情報」を発信していきたいです。
サウナもコーヒーもクラフトビールも、私は専門家ではありませんが、熱量には自信があります。
食わず嫌いだった世界に足を踏み入れてみたら、すばらしい世界があることを私は体験してきました。
食わず嫌いの人にわかりやすく魅力を伝え、食わず嫌いをしている人を後押しして、その人自身の生活を少しでも豊かにできればと思います。

やってみて合わないものもあります。
そういうものはやめればいいし、私も、自分が好きなものしか発信はしません。
例えば「早起き」を勧められてやってみましたが、それは私には合わなかったです(笑)。

いろいろなジャンルに手を出すと、周りからは「コーヒーに興味がなくなったの?」と聞かれます。
興味がなくなったのではなく、ハマったものが増えた感覚です。
コーヒーは、今でも朝から晩まで飲んでいます。
以前は旅行に行ったとき、おいしいコーヒーを求めてカフェ巡りをしていました。
でも、今はカフェを巡ってサウナを探し、おいしいクラフトビールを探しています。
時間が足りなくて困っていますね。

周りからはこんな質問も受けます。
「次は何をやるの?」と。
今の私にはわかりません(笑)。
ハマるものは「見つける」のではなく、日々の生活の中で張っているアンテナが察知していきなり「見つかる」からです。
最近では友人が熱く語るものに興味を持つのが多いです。
興味を持ったら体験してみて、ハマったら深掘りしていく。
クラフトビールがそうでした。

今でも忙しいのに、4つ目の食わず嫌いが見つかったらどうしようと思うこともあります。
でも、見つけてしまったら見過ごせない性格なので、きっとハマっていくでしょう。
次にハマるものは一体なんなのか、それを楽しみに日々を送りたいと思います。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2020年6月)のものです

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ご協力ありがとうございました
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