1「場」を与えること、学生は伸びていく
10代の時、両親が離婚しました。
人生何があるかわからないと思いましたね。
自立を目指すなら女子大だと、都内の女子大に入学しました。
女子大には女性解放運動のイメージがあって、女子大に行けば自立した女性になれると思ったんですよ。
実際には保守的な考え方の学生も多かったんですけど。
大学ではジェンダーについても学び、結果的に女性としての自立をさらに意識するようになりましたね。
もう一つ、中学生の頃から個性を潰す日本の教育に問題意識を持っていて、どうしたら個性を伸ばす教育ができるんだろうと考えていました。
高校生のときは、つまらなすぎて学校をさぼってばかりでした。
遅刻が学年1位になったり、成績がクラスで最下位になったり。
大学卒業後、手に職を付けようと、IT企業に入社しました。
ライターとして数年勤めた後、会社を辞めてフリーランスのウェブデザイナーとして独立しました。
でも、デザインを専門で学んでいなかったので、本質を理解できていないと感じていたんです。
それで、基礎からデザイン学び直したいと思い、美術大学の通信教育過程に編入しました。
美大では「社会のためのデザイン」をビジョンに掲げていました。
自分の問題意識をテーマにした課題が多く、問題意識を深く掘り下げていくと、いつも「女性の生き方・働き方」にたどり着くんです。
卒業時には「女性の可能性を広げたい」と起業を決意。
まずは女子学生を対象に女性の生き方・働き方を発信するウェブメディア「ハナジョブ」を作ろうと、会社を立ち上げました。
2007年のことでした。
美大に入学してから偶然、母校の学生と話す機会がありました。
久しぶりに女子学生たちと話す中で、私が学生だったときの生き方や働き方の価値観と彼女たちの価値観が殆ど変わっていないこと知り、衝撃を受けましたね。
例えば「就職の選択肢は、一般職か総合職か」といった価値観が、そのまま受け継がれていたんです。
彼女たちにとって身近な大人は、親か先生です。
身近な大人の価値観を「大人の価値観の全て」と見ていることに危機感を感じました。
世の中にはもっといろんな大人がいて、いろんな価値観がある。
彼女たちにもっと社会との接点を作るべきだと思いましたね。
会社を立ち上げてしばらくウェブメディアの制作・運用は、1人で行っていました。取材・執筆、サイトのデザインも手掛けました。
いいモノを作ればお金も入ってくると思っていましたがそんなわけもなく、お金だけが減っていきました。
1人では限界がある。
何か次の手を考えなければと悩んでいました。
「そうか、学生たちに取材・執筆のレクチャーをして、記者をしてもらればいいんだ」とひらめき、学生記者を募集することにしたんです。
学生記者が社会で活躍する女性たちを取材し、記事を執筆する仕組みです。
女子学生が社会人にインタビューすることで、彼女たちに新しい価値観に触れてもらう狙いがあります。
いろんな大人の話を聞いた学生たちが、生き方や働き方に対する考え方を広げていくのを見て、うれしかったです。
最初は何をしていいかわからないまま私の元に来た学生たちも、「場」があることで、伸びていくんだと感じました。
学校教育の場では、学生が自ら考え、行動する場が少ないとも思いましたね。