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1番大切なのは演技力じゃない?
声優になるには、IKKANさんに聞いてみた
【声優/演出家/芸人/脚本家/漫画家・IKKAN】 <前編>

目次
  1. 声優を目指したきっかけは?
  2. 声優にはどのような進路を歩んできた人が多いのでしょうか?
  3. 声優になるためにはどのような練習が必要でしょうか?
  4. 声優としての仕事内容とやりがいは?
  5. 声優に向いている人はどのような人だと思いますか?

人はどのようにして人生の道を選択し、壁を乗り越え進むのか。各界で活躍する方の人生ストーリーから紐解きます。今回は、声優のIKKANさんをご紹介。

声優、演出家、漫画家、脚本家と幅広く活動しているIKKANさん。どのような道を歩み、声優の仕事をするに至ったのでしょうか。活躍するためのヒントも伺いました。

1声優を目指したきっかけは?

IKKANさんが声優を目指したきっかけについて教えてください。

僕は声優を目指していたわけではありません。
劇団を作るのが高校時代からの夢で、演劇の演出家になりたいと思っていました。

演出家になりたいと思うようになったのはなぜですか?

高校演劇にのめり込んだからです。
当時の僕は人とコミュニケーションを取るのが苦手な、友だちの少ないタイプだったのですが、当時流行していたアニメのキャラクターの物まねをしていたのが良かったのか、台詞を読むという行為は割と得意な方でした。
祖母と従姉が詩吟の師範で、実家がカラオケスナックだったこともあり、毎日歌を歌っていて、声色を変えて歌うことも比較的得意でした。

当時の僕は自分のことがあまり好きではなく、「演劇で他人を演じる」という作業は、他人の人生を生きているようでとても楽しかったのです。
また、中学の頃から小説を書くのが好きだったので、自分の訴えたいことを創作し、それを演劇部で上演するようになりました。
俳優は、一つの作品で自分の役しか演じられませんが、脚本や演出であれば、全ての登場人物の人生を作ることが出来ます。
それが魅力でもありました。

小学生の頃から漫画も描いていたので舞台の美術でも応用ができます。
高校に入ってからはバンドを組んで作詞・作曲もしてきたので、自分の曲でミュージカルも作れるし、自分で歌うこともできます。
ジャズダンスも習っていたので振り付けだってできる。
照明や音響など裏方の仕事にも興味があり、この演劇というジャンルは、自分の好きなことが全部できるという夢のような場所でした。
それが演劇の道を志すきっかけとなっています。

そこから声優の仕事をするようになった経緯をお聞かせください。

演出をしたいなら、裏方である音響や照明、舞台美術などをもっと学んだ方がいいと思い、高校卒業後に旭川から上京し、テレビや舞台の裏方を学ぶ専門学校に入りました。
しかし、残念ながらその専門学校では僕が期待するほどの知識は手に入れられませんでした。
高校演劇で培った知識を超える学びがそこにはなかったのです。
3ヶ月もしたら専門学校には行かなくなってしまいました。

そこからは、新聞配達のアルバイトをしながら東京の演劇を観る毎日でした。
当時は小劇場ブーム。
今やテレビで大活躍する錚々たる顔ぶれが小さな劇場でキラキラ輝いていました。
僕も早く自分の劇団を作りたいと目を輝かせていましたね。
そこで、演出家として仕事をするのであれば裏方だけではなく演技も学んだ方がいいだろうと考え、現在も所属する劇団テアトル・エコーの俳優養成所に入ることにしたのです。

養成所では2年間学んだあとに卒業公演を迎えます。
卒業公演は昇級試験のようなもので、その中から、何人かが劇団へ入団の誘いを受けるのですが、そのうちの1人として、声をかけていただきました。

しかし、当時の僕は自分自身の作品を上演する劇団を作りたかったので、入団はお断りするつもりでした。
劇団に所属してしまうと、新人の場合、他の劇団などへの外部出演は基本的には許されないと先輩方から聞いていたためです。

入団面接を受ける以前より、2本のダンス公演と1本の演劇。
そして自分が立ち上げようとしている「オフィス★怪人社」の公演が1本と、すでに年内に4本の作品に携わることが決まっていました。
当時の社長に、「携わりたい公演があるのですが、新人の外部公演が禁止だと聞いています。
入団したら無理ですよね?」と言った僕に対し、「もう決まっているなら仕方ないね。
やっていいよ。
その代わり空いている時は劇団の裏方をやってね」と言ってくださいました。

劇団には素晴らしい才能を持った先輩たちが大勢いらっしゃいましたし、劇団に入る魅力もたくさんありました。
そして、声をかけられた養成所の同期も、みんな僕の劇団の立ち上げに参加するメンバーでばかりであったことも大きく、僕は入団を決意することになったのです。

劇団テアトル・エコーに入ってから、声の仕事が始まりました。
最初の仕事は、ボイスオーバーというもので、海外の人の声の上に日本語をアテるという仕事です。

声の仕事をする先輩が多い劇団とはいえ、メインは顔を出して演じる俳優です。
当時はNHKの教育番組などでテレビ出演の仕事もしていましたから、自分を声優だと名乗ることはありませんでした。
30代近くなって、アニメのレギュラーや準レギュラーなどが増えだしてから、いつの間にか声優という気持ちになっていきました。

2声優にはどのような進路を歩んできた人が多いのでしょうか?

IKKANさんは紆余曲折を経て声優になられましたが、声優になりたいと思って夢を実現した方々は、どのような進路を歩んでこられたのでしょうか。

最近、現場で活躍されている方の多くは、高校在学中や卒業後に専門学校に入り、養成所に1、2年通ったあと、事務所に所属するというケースが主流だと思います。

専門学校では、1、2年間声優になるための基礎を学びます。
演技をするための基礎と言うことです。
僕にとってそれは、高校3年間死ぬほどしがみついた高校演劇の活動がそれにあたると思っています。
そして演技の基礎を学んだ後は、行きたい事務所の養成所のオーディションを受ける。
これもまた1、2年。
養成所では自分の個性を具体的に把握し、伸ばしていきます。
そこから、事務所に入れるかどうかの審査があり、ふさわしければ所属できる、という流れだと思います。

養成所に入ったからといって必ずしも事務所に入れるというわけではありませんし、事務所に入ったからといって、安心して生活できるような活躍ができるとも限りません。
会社員に例えると、事務所に入る=入社して社員になる、と勘違いされる方もいらっしゃるかもしれませんが、声優は事務所に所属できたからからといって安定した月給が貰えるわけではありません。
それぞれが歩合制の個人事業主なのです。
現場で声をアテる仕事をもらえないと、いつまで経ってもノーギャラなのです。

ですから、駆け出しの声優はアルバイトが必須かもしれません。
しばらくは親から支援を受けている人も多いです。
厳しい現実を話すと、親に支援してもらえる人は、アルバイトをする時間を演技の研鑽に当てられる分、どうしても有利になるのが事実。
とはいえ、技術があるからといって、必ず売れる職業なのかというと、そうではないというところが芸能の仕事の難しさでもあります。

3声優になるためにはどのような練習が必要でしょうか?

声優になるために必要な練習について教えてください。

毎日台詞を言う。
これに尽きると思います。
台詞を読むことに慣れて下さい。
漢字が読めないとつっかえてしまいますので、漢字が得意な人の方が有利だと思います。
また、書かれている言葉の意味を知らないまま台詞として喋るということもありませんので、言葉に詳しい人の方がより良いと思います。

あと、フィジカルとしての音感や音域も大切です。
いくら演技に気持ちが入っても、自分の出したい音を出せなければ意味がありません。
歌で言えば音符から外れて歌うことと等しいかもしれません。

声優にとって1番に大切なのは声質です。
そのキャラクターにあった声でなければ仕事になりません。

例えば僕が「お姫様の役をやりたい」と言っても、それは無理な話です。
いくら多くの声色を出せたとしても、自分の出せる声質にあった役しかこないのです。
俳優だって見た目でキャスティングされるように、声優は声質でキャスティングされるものです。

声優は待ちの仕事だと思います。
たとえばテレビの俳優の世界では、視聴率の取れる人気の俳優がいて、その俳優を主演に使うためにドラマの企画が立ち、製作されることがあります。
しかし、声優はどれだけ大御所になっても、声をアテるキャラクターが先にあります。
そこが大きな違いかも知れません。

声質は持って生まれたものなので、練習でどうにかなるものではないように思えます。

そうですね。
しかし、努力次第で声の幅を広げることは不可能ではないでしょう。
僕も、子どもの頃、物まねでいろいろな声を出していたことで、声の幅が広がったと思っています。

次に大切なのは何ですか?

滑舌です。
滑舌の良さは声優の必須スキルと言っても過言ではありません。
こちらも練習で磨けます。
逆に言うと声優の世界で、とても滑舌の悪い人というのを見たことがありません。

そして、もちろん演技力は必要です。
逆に言えば、演技に気持ちが入っていても滑舌が悪ければダメですし、そもそも声質がキャラクターに合っていなければ仕事はこないのです。
オーディションは声質で一次審査されると言っても過言ではないでしょう。

4声優としての仕事内容とやりがいは?

声優さんと聞くと、アニメやゲームキャラクターの声、洋画の吹き替え、ナレーションなどが思い浮かびます。
他にお仕事はありますか?

最近は朗読劇の舞台に出ている方が多いと思います。
歌って踊るアイドルのようなライブコンサートをされる方も増えました。
僕は専門学校でも声優の講師をしていますが、そこでも歌と踊りのレッスンがありますし、「アニメの主題歌を歌う声優になってライブをやりたい」と生徒から言われることも増えました。
そして、昔から人気ですが、ラジオ番組のパーソナリティも声の仕事の1つです。

非常に幅広いのですね。

芸能にまつわる仕事と考えると、無限大です。
今は声優さんもテレビなどで顔を出すようになってきましたし。

どんなところにやりがいを感じていますか?

今、まだ無いものに携われるチャンスがあることだと思っています。
先ほどお話した仕事だけではなく、新たなエンターテイメントやプラットフォームが生まれれば、そこでも声優が活躍できるかもしれない。
実際に、いろいろな人と「こういう可能性が出てくるんじゃない?」と話してもいます。

5声優に向いている人はどのような人だと思いますか?

IKKANさんが思う、声優に向いている人はどのような人でしょうか。

声質はもちろんですが、喉が強い人はいいですね。
これは本当に大切です。
アニメの場合、契約期間中は同じ声を出し続けなければなりません。
一時的な不調であれば病院の治療で何とかなるかもしれませんが、もしずっと出なくなったらどうしようというプレッシャーは常にあります。
日頃のケアは当然してますし、鍛えることもできますが、遺伝的なものもあると思います。

また、どんな職業でも同じかも知れませんが、きついダメ出しが来てもくじけない心を持つ人はいいですね。
どんなにダメを出されても、よい作品作りのためだと捉えて楽しめる人でしょうか。
声優が仕事をする現場では最終的な判断をするのは音響監督です。
新人声優だろうとベテラン声優だろうと、音響監督の指示を受けながらよりよい作品作りに取り組むことに変わりはありません。

そしてなによりも、サービス精神があって、お客さんに対しての「演技」を第一に考えられる人。
どんなにきつくても、お客様の幸せに繋がるのであれば自分の幸せに繋がる。
そう思える人が良いのではないでしょうか。

<後編はこちら

※掲載している情報は、記事執筆時点(2022年8月)のものです

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