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漢方や中医学の魅力をもっと広めたい。
掛け合わせで、多くの人に知るきっかけを
【漢方薬剤師/合同会社Takuya kanpo consulting代表/一般社団法人tamari中医学養生学院オーナー兼理事長・杉山卓也】 <後編>

目次
  1. 薬剤師と漢方薬剤師の違いって何?
  2. 漢方薬剤師になって苦労したことは?また、それをどう乗り越えましたか?
  3. 漢方薬剤師になってうれしかった瞬間は?
  4. 今後の展望やご自身の将来のビジョンは?

人はどのようにして人生の道を選択し、壁を乗り越え進むのか。各界で活躍する方の人生ストーリーから紐解きます。今回は、漢方薬剤師の杉山卓也さんをご紹介。

前編では、薬剤師になった経緯や、薬剤師に向いている人の特徴などを伺いました。後編となる今回は、そもそも漢方薬剤師とはどんな仕事なのか、仕事をする上で大切にしていることやうれしかった瞬間、今後のビジョンについて伺いました。

1薬剤師と漢方薬剤師の違いって何?

杉山さんは、漢方薬剤師として漢方と中医学に関する情報発信や、魅力を伝える活動をされています。
はじめに、漢方と西洋医学との違いを教えてください。

漢方・中医学は体の内側からの根本的な治療が主体で、西洋医学は体の悪い部分に直接、早くアプローチする治療が主体です。

例えば、高血圧に悩んでいる方がいるとします。
病院で処方された西洋薬を飲めば、すぐに血圧は下がります。
しかし必要以上に下がってしまったり、飲まなくなるとまた上がったりしてしまうことがあるのです。
一方、漢方・中医学では、血管や血液に問題が起きていると考え、その状態を直すことで、血圧を自然に下げていこうと考えます。

漢方・中医学で大事にしている根本治療とは、体を負荷のない正常な状態、心地のよい状態に戻していくことです。
漢方・中医学が根本治療を主体にしているという点に共感し、漢方薬剤師として活動しています。

漢方薬剤師として、漢方専門店やスクールの経営もされるようになったのはどのようなきっかけがあったのですか?

漢方相談を薬局で受けていたとき、一方的に薬をもらうのではなく、自分で知識を身につけたいというお客さまが多くいらっしゃいました。
まずはセミナーを開くようになり、だんだんと参加者が増えて規模が大きくなっていきました。
一人でやることに限界を感じ、40歳のときに会社を立ち上げ、同じ思いをもった仲間と一緒に、漢方専門店やスクールを運営するようになりました。

漢方薬剤師になるためにも、国家資格が必要なのでしょうか?また、どのような勉強が必要なのか教えてください。

漢方薬剤師には国家資格は必要ありません。
漢方薬・生薬認定薬剤師制度という認定制度がありますが絶対条件ではなく、認定を受けているからといって、漢方薬剤師になれるわけではないと考えています。

勉強に関しては独学で学びつつ、ある先生に師事し、実際の臨床で学ぶこともしていました。
座学で学びながら、漢方の専門店で実際の臨床を見て勉強していくことで、経験を積み、相談に乗れるようになっていきましたね。

ほかにも、卒業後の就職先まで斡旋している専門学校やスクールに通う方法もあると思います。

2漢方薬剤師になって苦労したことは?また、それをどう乗り越えましたか?

これまでに苦労したことはありますか?

これといって苦労したことはなく、あえて挙げるなら漢方相談で、自分が伝えたかった意図と違った受け取り方をされたときに「どのように伝えればよかったのだろうか」と悩むことがたまにあります。
ですが私は、うまくいかないことがあっても、落ち込むよりも次にどうしようかと前向きに考えるタイプなので、苦労したと自覚していることはあまりないです。

意図がうまく伝わらなかったとき、どのような改善をするのでしょうか?

伝え方の方法を変えてみます。
もう少し同調してみよう、共感していることを伝えてみよう、といった感じです。
また、人によっては、もっと踏み込んだアドバイスをしてみよう、と思うこともあります。

相談に乗る際、とくに気をつけていることを教えてください。

相談後にどのようにしてほしいのか、まず尋ねることです。
どうしても気持ちは言わないとわからないものです。
お互いのためにも、最初にズバッと聞いたほうがいいと思っています。

コロナ禍で、心の相談は増えたのでしょうか?

はい。自由に外に出られなくなって家に引きこもってしまい、気力が湧かなくなった、という方が増えている印象があります。
ただ、人が社会生活を営む中では心の悩みはこれからもずっと続くものであり、なくなることはないと思っています。

オンラインでの相談もされていますが、オフラインでの相談と比べて難しさはありますか?

特にありません。
コロナ禍の前でも、何らかの理由でオンラインでの相談しかできない方はいらっしゃったので、コロナ禍だからといって変わったこともありません。
話を聴くことがきちんとできるのであれば、どこでも、どんなときでもできる仕事です。

Twitterでは「タクヤ先生」というアカウント名で、心の悩みに関する発信を多くされていますが、情報発信ではどのようなことに気を付けているのでしょうか?

多くの人に見られていることを意識して、誰かを傷つけたり否定したりしないように言葉を選んでいます。
これは日々の生活でも同じことです。

また、ただ情報を伝えるのではなく、自分で考えた言葉や、クスっと笑える言葉を入れるようにしています。
有益な情報を並べることももちろん大事ですが、そういった情報はTwitterのいたるところにありますし、当たり前になってきつつあります。
「いいね」や「リツイート」してもらい、より多くの人に届けられるように、自分らしさを出すことを意識しています。

3漢方薬剤師になってうれしかった瞬間は?

働く中でうれしかったことは何ですか?

漢方専門店とスクールをつくるためのクラウドファンディングをやったとき、想像以上に多くの方たちから応援していただいたことです。

クラウドファンディングは、5人の仲間と一緒に挑戦しました。
一人ひとりの力も大きいのですが、皆が集まったことで大きな力になり、たくさんの方に受け入れてもらえたのだと思います。
私はそれまで、ずっと一人で活動してきたので、皆の力を結集するとこんなにも大きな力になるのだととても感動しました。

漢方専門店やスクールの活動や漢方相談など、漢方薬剤師としての仕事の原動力になっているものは何でしょうか?

自分が関わることでその方の人生が変わる瞬間が見られることです。
このような経験ができる仕事はなかなかないと思います。

メンタルが弱っている方の相談を受けたり、漢方を処方したりすることを通じて元気になる手助けができる。
そしてその方が活躍する姿を見ると、とてもやりがいを感じますし、幸せな気持ちになります。
このために仕事をしていると言っても過言ではありません。

杉山さんは、とても幅広く活動されていますが、忙しくないのでしょうか?

むしろ暇なんですよね。
暇な時間を埋めるために何かをやっているという感覚です。
SNSのライブ配信も、前日や当日に相談のキャンセルが出て、空き時間ができたからやる、といった感じです。
空き時間に何もしないよりかは、ライブ配信で健康相談会を行って新たなお客さまからの相談に繋がれば、とても意義があるじゃないですか。
自分が楽しめる範囲で取り組んでいます。

4今後の展望やご自身の将来のビジョンは?

杉山さんの今後の展望について教えてください。

漢方や中医学を軸足にして、そこに自分の興味のある領域を掛け合わせて新しいことをやっていきたいです。
現在も、漢方薬剤師でありながら、国際情勢のセミナーをしたり、お金の授業をしたりしていて、私の活動をおもしろいと思って応援してくれる人が一定数いるんです。
今後も全く違う分野での発信もしていきたいと思います。

どうして全く違う分野を掛け合わせたいと考えているのですか?

漢方や中医学のことを知らない人に、足を止めてもらえるきっかけになると思っているからです。

例えば、私が料理の発信をしていると、中医学や漢方に興味はなくても、料理に興味のある人が気づいてくれて、そこから中医学や漢方を知るようになると思います。
何か変わったことをやっている漢方家がいると周知されていくんですよ。

漢方薬剤師だから、という職業の枠に囚われずに自分の楽しいことに挑戦していきたいです。
「〇〇すべき」という考え方に固定化してしまうのではなく、枠を超えて、人生を楽しみたいと思っています。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2022年7月)のものです

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ご協力ありがとうございました
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