1税理士になってから一番苦労した経験と乗り越え方は?
―桑田さんが税理士になってから、苦労したことについてお聞かせください。
苦労したことはたくさんあります。
はじめて税理士事務所に所属したときは、Excelの使い方すら分からなくて。
高くなっていた鼻を折られましたね。
悔しくて毎日泣いていました。
また、税理士資格を取った直後は、お客様の期待に応えようと思い、空回りしました。
税理士のような士業は、お客様からすれば馴染みがなく、「何でも知っている人」と思われています。
そのため弁護士が担当するような法律に関する専門外の相談をされることがありました。
私も資格を持っているプライドがあって、自分の専門の相続や事業承継以外も何でも答えようとしてしまったんです。
でも、さまざまな専門家の人たちとつながりができるにつれ、自分が間違っていたことに気づきました。
自分がお客様にしていたのは、100点満点中、60点ほどの回答。
これではお客様のためにはなりません。
自分の専門ではない部分は、素直にお客様に伝え、他の専門家を頼ることが大事なのだと気づきました。
―お客様からすれば、どの専門家に相談すればいいか分からないですからね。
そうなんです。
相談してくださるお客様は悪くありません。
中途半端にやろうとするのではなく、しっかりと「それはできません」とお伝えし、専門家につなぐことこそが、お客様に対して誠意のある行動なのだと思いました。
また、そうやって他職種の専門家を頼ることが、リスペクトにつながり、専門家同士の関係性の構築にもつながったと感じています。
―桑田さんは、円満相続税理士法人の代表社員を務めています。
事務所を立ち上げる上で、苦労はありましたか?
顧客を引き継いで独立したわけではなかったので、営業的には完全に0からのスタートでした。
アマゾンに放り投げられた生まれたてのライオンのような状態でしたね(笑)。
社内のメンバーと議論しながら、いろいろなやり方を試しました。
ときには意見が合わず、ぶつかることもありました。
結果的には、試行錯誤を何度も繰り返すうちに、自分たちなりのやり方が確立し、売上を伸ばすことができました。
税理士資格があるとはいっても、新しく0からお仕事を頂ける環境を作るのは大変でしたね...。
2税理士になってから一番嬉しかった瞬間は?
―税理士になってから、嬉しかった瞬間やエピソードについても教えてください。
仕事をしていて嬉しい瞬間はたくさんあります。
一緒に働く刺激的な仲間から感謝をされたとき、会社の成長を実感したとき、他のプロフェッショナルの方々から頼ってもらえたとき...。
なかでも一番喜びを感じるのは、お客様から感謝されるときです。
相続のお客様は一般の方々。
しかも、相続は人生で1~2回しか経験することがないものです。
作業の中には複雑で難しい内容も多いですが、それを一緒に乗り越えて、最後に感謝のお手紙をいただけたりすると、感無量ですね。
案件が終わった後も「今度自宅を売ろうと考えている」「いい弁護士を紹介してくれないか」などの別件でご相談をいただくケースがあります。
私を信頼してくださった方と、長期的な関係性を築けることは非常に幸せです。
3今後の展望やご自身の将来のビジョンは?
―今後の目標を教えてください。
まずは、情報発信に力を入れたいと考えています。
相続は、富裕層だけの問題ではありません。
日本国民全員が当事者になりうることです。
一方で、相続の知識を持っている人は多くありません。
それゆえに、私が祖父の相続で苦労したようなことが、全国で起きているのだと思います。
そんな苦労を減らすのが私の目標です。
ただ、税理士として私が関わることができるお客様の数は、1日24時間・年間365日しかないため、限られてしまいます。
ならば視点を変えて、情報発信をしてみたらどうかと考えました。
SNSを通じてわかりやすく相続を伝え、相続に強い人を増やしていけば、間接的に多くの人を幸せにできると思ったからです。
私は同世代からは親しみやすく感じていただけることも多いので、SNSの発信を通じて、相続を分かりやすく伝えられたらと思います。
次に力を入れたいのは、若者との交流です。
さまざまな先輩から刺激を受けたり、教えていただいたことで、今の私があります。
私自身が若者と交流をすることで、さまざまな刺激をもらうことはもちろんですが、これまで受けた恩を返す意味でも、次世代の若者に良い影響を与えられるモデルケースになりたいです。
すでに今、TikTokで税金についての話や私の経験談を伝えています。
税理士の敷居を下げるとともに、勉強することの面白さなども伝えていきたいです。
※掲載している情報は、記事執筆時点(2022年7月)のものです