1介護福祉士になってから一番苦労した経験は何ですか?また、それをどう乗り越えましたか?
しろねこさんが介護福祉士として働き始めてから、一番苦労した経験は何ですか?
約5年前に経験した、夜勤中の早朝に起きた転倒事故ですね。
利用者さんがベッドから転げてしまい、頭を打ってしまったんです。
頭部は血が多く出るので、あたりが血だらけになってしまって。
事故対応の方法は知っていたので、すぐに適切な対応をし、看護師さんを呼んで指示も仰ぎました。
そのときにできる最大限のことはしたつもりでした。
しかし、利用者さんのご家族から「何でちゃんと見てなかったんだ」とお叱りの言葉をいただいてしまいました。
「そうだよな」と納得する一方で、当時の夜勤は一人で30人ほどを見ていたため、状況的に一人の利用者さんをずっと見ているのは無理だという気持ちにもなりました。
でも、けがをした利用者さんのご家族にそんなことを言えるわけもなく、気持ちが追い詰められてしまいました。
責任の重さに耐えられなくなってしまったのでしょうか。
はい。
このときの利用者さんは、幸い命に別状はありませんでしたが、当たりどころが悪かったら亡くなっていた可能性もあるわけですから。
その状況からどう気持ちを立て直していったのですか?
周りの同僚たちが助けてくれました。
「大丈夫だからね」と何度も声をかけてくれ、少しずつ平静を取り戻せました。
あのときは本当にこの仕事を辞めようとまで思い詰めていたので、介護の仕事を今も続けられているのはまわりのおかげですね。
しかし、気持ちを立て直したところで、責任の重さが軽くなるわけではありません。
そして、やはり100%事故を防げる方法がないことにも変わりはない。
ですから、せめて自分の不備は絶対にないようにすると心を引き締め直しました。
決められた安全対策は徹底的に守り、厚生労働省が公開している、事故を未然に防ぐための事例集「ヒヤリ・ハット」も活用しています。
夜勤中はまわりの目が少ないですから、つい気を抜いてしまいがちですが、私は常に緊張感を持って夜勤に臨んでいます。
今は転倒同意書のようなものをご家族にお渡ししている施設も増えています。
万一のときのための同意書なのですが、同意してもらっているからといって事故が起きていいわけではありませんから、最善を尽くすことに変わりはないんですけどね。
前回、適性について「短気で感情が表に出てしまう人は向いていないかもしれない」とお話がありました。
しろねこさんも、感情コントロールの部分での苦労はありますか?
私はあまり短気な方ではないですが、それでもひどい暴言を吐かれるとムッとします。
長く勤めるなかで、そういう方の発言はスルーできるようになりました。
まともに受け止めていると心がもたなくなってしまいますから、右から左に受け流すスキルが必要です。
介護職を志す方はやさしい人が多いからこそ、スルースキルは自分を守るために身に付けておきたいものだと思っています。
利用者さんは自分とは違う人間なんだという割り切りは、決して悪いことではありません。
きれいごとだけでは済まない仕事なんです。