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介護に関心を持つ若い世代が少なすぎる。
人や組織の葛藤を可能性に変える
【株式会社Blanket代表取締役・秋本可愛】

目次
  1. 身近な人の死から今を生きることを意識する
  2. 介護の世界に携わる若い世代を増やしたい
  3. 介護業界の人や組織が抱える葛藤を可能性に変える

人はどのようにして大切にしたい価値観に気づき、人生の軸を見つけるのか。各界で活躍する方の人生ストーリーから紐解きます。今回は、介護事業者の採用活動や人材育成の支援、介護に志を持つ若い世代が集まるコミュニティを運営する秋本可愛さんをご紹介。

大学生のときに介護の面白さを知る中で、課題も感じた秋本さん。そんな秋本さんが目指す未来とは?お話を伺いました。

1身近な人の死から今を生きることを意識する

小学生のとき、20歳だったいとこが亡くなりました。
私を可愛がってくれていたとても身近な存在で、悲しかったですが、どこか実感がわかない部分もありました。

20歳に近づくにつれ「自分もいとこと同じように死んでしまうんだろうか」と意識するようになり、その結果、遠い先の未来を考えるのではなく、今やりたいことを考え、思い立てば行動に移すようになりました。

大学二年生のとき、何か打ち込めるものがほしいと、起業サークルに入りました。
たまたま介護領域で事業を考えるチームになりましたが、自分の祖父母は元気に暮らしていたのもあり、介護にはまったく興味はありませんでした。

ですが、チーム内に認知症の祖母をもつメンバーがいて、そのメンバーの強い思いから、認知症の人とのコミュニケーションツールになるフリーペーパーの制作に挑戦しました。
仲間と新しいものを作り上げる活動は楽しかったです。

大学時代の可愛さん(中央左)

大学時代の可愛さん(中央左)

もっと介護について知りたいと思うようになり、小規模のデイサービスでアルバイトを始め、食事や入浴、排泄の介助、夜勤など、全般的な業務に携わりました。
関係性ができてくるとおじいさんやおばあさんの笑顔が増え、私の方がいろいろと教えてもらえるようになり、介護の仕事を面白いと感じるようになりました。

「生きているのが申し訳ない」と死を願う方との出会いや、家族からの虐待や介護放棄の現場を見ることもありました。
年を重ねた先が、必ずしも幸せではなく、人生の終わりを迎える人が苦しんでいる場面を目の当たりにし、そんな悲しいことがあってはならない、どうにかしたいと感じるようになりました。

訪れた20歳。
いとこの亡くなった年であり、自分にとっては人生の節目の年を迎えるにあたり、人生が有限だと改めて意識しました。
同時にこれから何のために生きていくかを考えるようになり、もっと介護の領域に携わりたいと思うようになりました。

2介護の世界に携わる若い世代を増やしたい

大学三年生のとき、フリーペーパーで賞をもらい、社会問題に対して意欲的な同世代との繋がりも増えていきました。
そうした同世代の多くは、東日本大震災があったこともあり、復興支援や国際協力などの社会貢献活動をしていましたが、刻一刻と深刻化している介護の課題には関心すら持たれていない現状に気づきました。

東日本大震災という、多くの方の命が奪われた悲しい体験は、人々の誰かのために何かしたい思いに火をつけました。
介護に関しては、私たちが幼いころから超高齢社会だと言われていたり、毎日のようにニュースで高齢化の問題が報道されるなどしていて、若者にとってはどこか慣れがあり、危機感の薄い領域です。
課題があると知られてはいますが、自分ごととして捉えられておらず、その結果、家族の問題だと片付けられてしまっていると感じました。

介護は、誰もが人生の中で関わる領域です。
自分のように関わるきっかけさえあれば、課題意識を持つようになるかもしれない。
若い世代が関心を持てるような介護の世界への入り口をつくり、課題解決に関わる人を増やしていきたいと思うようになりました。

そんな思いから大学四年生のとき、介護に関心を持っている仲間を集めて飲み会を開催しました。
ただの集まりがいつしか、介護の領域の課題ややりたいことといったアイディアを持ち寄って発表し、そのテーマを話しあうイベントになっていきました。

イベントを開催する中で、本当は一人ひとり「課題を解決したい」「本当はこうしたい」という思いを抱いていると感じました。
ただ、忙しい毎日の中でその思いを共有する仲間がいなかったり、利用者と職員だけの閉じた空間で閉塞感が強くなったりする現状があるのもよくわかりました。
組織や職業の垣根を超えて介護に志を持つ人が集まり、情報交換をして学びあう場所をつくるべきだと思い、大学卒業後、介護業界に携わる若者のコミュニティを立ち上げました。

活動を続ける中で、介護施設の方が「我々の仕事は、お年寄りを要介護者にするのではなく、社会資源にすること」と言っているのを聞いて、衝撃を受けました。
私は、「介護=お世話すること」だと考えていましたが、確かにお年寄りが活躍できる場所を作れば、その力を地域社会に活かせると考えるようになりました。

人の人生や老いに向きあっている介護業界のプレーヤーは、とても魅力的な人ばかり。
介護は知れば知るほど奥深く、虜になっていきました。

コミュニティ活動中の様子

コミュニティ活動中の様子

3介護業界の人や組織が抱える葛藤を可能性に変える

現在は、株式会社Blanketの代表取締役を務めています。
事業としては大きく三つ展開していて、コミュニティ「KAIGO LEADERS」の運営、採用と人材育成の支援、介護に関するPRやコラボレーションです。

介護事業者向けの採用セミナーの様子

介護事業者向けの採用セミナーの様子

これからの介護業界では、深刻な人材不足が大きな社会課題になっています。
2040年には69万人が不足するといわれており、就業人口の5人に1人の割合です。
それだけの人手の確保は難しいので、いろいろな産業が介護や福祉の領域に携わるなど、産業自体が福祉化している社会を目指したいです。

介護業界でたくさんの人や組織と関わってきて、皆さん強い志を持っていると確信しました。
組織が夢を実現しようとするとき、いろいろな葛藤があります。
しかし葛藤が生まれる場所には、未来を良くする可能性もあるんです。
それに、現場にいる個人だからこそ気付ける問題や違和感にも、社会を良くする可能性があると思っています。
そういった人や組織に寄り添える会社でありたいと思い、温かく包み込む毛布を表す「Blanket」という社名にしています。

これからも私は、名前「可愛」のとおり、人の可能性を愛せる人でありたいと思っています。
多くの人は、誰かに共感してもらえたり、背中を押してもらえれば、自分を信じられると思うんです。
可能性を愛し、人や組織が持っている力を最大限発揮できる環境をつくれる会社であり続けます。
介護業界の人事面の課題を一緒に解決し、希望を持ち続けられる人や組織を増やしていきたいです。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2022年3月)のものです

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