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お金の知識格差を教育でなくしたい。
努力が成果として報われる社会を目指す
【お金の教育者・大河内薫】

目次
  1. お金持ちになって格好をつけたかった
  2. お金の知識を平等に与えたい
  3. 努力次第で成果を出せる社会をつくる

人はどのようにして大切にしたい価値観に気づき、人生の軸を見つけるのか。各界で活躍する方の人生ストーリーから紐解きます。今回は、お金の教育者であり税理士の大河内薫さんをご紹介。

「お金持ちになって格好をつけたい」との思いから、税理士を目指した大河内さん。税理士として始めた発信活動の中で、その思想は徐々に変化し社会に貢献したい気持ちに変わったといいます。そのきっかけはなんだったのか。お話を伺いました。

1お金持ちになって格好をつけたかった

子どものころから「有名になりたい」と思っていました。
全国で名の知られる存在になるのが目的で、その手段はなんでもよかった。
有名になるには東京に出なければと、高校卒業後に上京。
親からの「大学に行くなら東京に行っていい」との言葉から、芸術学部演劇学科を進路に選びました。

演劇を極めたいと思っていたわけではなく、有名になる手段として選んだだけですから、本気で夢を追っている人たちとは差が出ます。
結局、学生時代に花開くことはなく、卒業を迎えました。

学生時代に芽が出なかった人の多くは、アルバイトで食いつなぎながら夢を追います。
しかし、私は地道にがんばれなかった。
かといって、地元に戻るのも尻尾を巻いて帰るみたいで嫌でした。
東京には残りたい。
「ビッグになる」と言って出てきたんだから、就職して細々と働くのは避けたい。
人よりも稼いで格好を付けたいと考えたところ、弁護士、税理士、司法書士、会計士が選択肢に上りました。

家賃を払う必要があるから、働きながら目指せるものでなければいけません。
調べた結果、働きながら合格できそうなのは税理士だけだと感じました。
ただ、税理士の仕事内容はよくわかっていませんでした。
最難関国家資格と言われていると知り、「合格できたら金持ちになれるだろう」と。
貯金50数万円のうち、50万円を専門学校に思い切って払い、勉強を始めました。

税理士を目指すと決めた時点で、有名になりたい夢には一旦ふたをしました。
しかし、捨てたつもりはありませんでした。
士業らしからぬ格好をした弁護士がテレビで活躍している姿を見ていて、そうした道もあるかもなと漠然と思っていました。

税理士資格を取るには、11個の科目から5科目に合格する必要があります。
受験のペースは1年に1個ずつでも可能です。
正社員として働きながら勉強に励み、着々と試験を継続。
科目が揃ってきたところで、大手税理士法人に転職しました。
働きながら勉強を進めるのはかなり大変でしたが、「税理士資格を取らないと僕の人生は始まらない」と感じていたからがんばれたんだと思います。

勉強を始めて4年後、念願叶って税理士になれました。
税理士は資格を取ったら独立するものと漠然と考えていたので、経験を積んだのち、5年ほどで独立を決意。
税理士には真面目、堅苦しいといったイメージがあると感じていて、その印象を変えたくてスーツを着ないことをポリシーにしました。

税理士事務所としてどうありたいかを考えたときに浮かんだのは、クリエイターに特化した事務所でした。
芸術学部出身の夢追い人だった背景から、クリエイターを税金部分から支えたいと思ったんです。

私はアルバイトで食いつないで夢を目指す道を歩めませんでしたが、多くの夢追い人はそうやって日々努力をしています。
しかし、それは本来あるべき姿ではないのではないか、変えていくべきものなのではないかと思いました。
彼らに必要なものは夢を叶えるスキルとお金の知識で、コンビニのパンしか食べられない生活に対する我慢ではない。
私は起業後、自分のために投資などお金周りの勉強をし始め、必要性を感じるようになっていきました。
知識があれば変わる現状もあると感じていたんです。

過去の税金ミスが発覚して活躍できなくなってしまう芸能人のニュースを見聞きする中で、悪意があったわけではなく、知識がなかったせいでミスをしてしまう場合もあると感じていました。
せっかく有名になったのに、過去の自分のせいで活躍の場を失うのは悲しいことです。
下積み時代から適正に税金と向きあうためのサポートをしたいと思いました。

2お金の知識を平等に与えたい

僕が独立した2017年当時の税理士業界は、メールマガジンを始めると驚かれる、ホームページはあるだけですごいといったアナログな業界でした。
けれど、ビジネスでTwitterを使うのは世の中的には当たり前になっていました。
そこで、誰もやっていないけれど税理士として発信しようとTwitterを始め、税理士事務所としての発信のためにアカウントを開設。
Twitterやブログでの発信が、税理士事務所の宣伝になればいいなと思ったんです。

始めてみたところ、発信内容そのものが人気を集めました。
わかりやすく伝えるのが得意で、難しい言葉を使わないところが支持を集めたのではないでしょうか。
大衆に向けてわかりやすく伝える税理士がいなかったのもあったと思います。
税理士事務所としての拡大を目指していましたが、私の役目はそちらではなく、発信することかもしれない。
税理士事務所で十分な生活費を確保できるんだから、発信活動は無収入でもいいと考え、活動を続けました。

ある日、Twitterをきっかけにフリーランス向けの税金の本の出版の話がきました。
わかりやすさを重視し、マンガ本にすることになりました。
フリーランスの人たちにリサーチをしてみたところ、私の予想以上に税金やお金に知識がない人が多いとわかったんです。
愕然としましたが、お金の教育を受けてきていないんだから、当然と言えば当然です。

私だって、税理士になるまでは彼らと同じような知識しかなかった。
しかし、消費税を毎日払い、給料から所得税や住民税が天引きされているなど、税は身近なものです。
知識が何もないまま無意識のうちに税金を納めているのは良くない、お金の教育の必要性を痛感しました。

出版後の2019年初頭、ビジネス系YouTuberというワードを聞くようになりました。
学びを発信する発信者としては絶対にこの波には乗らなければいけないと、半ば強迫観念に近い思いでチャンネルを開設。
税金だけではなくお金について発信する必要があると感じていたので、幅広くお金周りを話す動画を作り始めました。

Youtubeチャンネル「大河内薫のマネリテ学園」動画サムネイル

Youtubeチャンネル「大河内薫のマネリテ学園」動画サムネイル

2020年の初頭には音声メディアが流行りはじめたので、音声プラットフォームVoicyで発信を開始。
ちょうど始めようと思っていたオンラインサロンの集客装置になるとも思っていました。
オンラインサロンは、私を応援してくれる仲間づくりをしたいと思い開始したもの。
お金の教育に対し同じような思いを抱いている人たちと出会える場がほしかったんです。

3努力次第で成果を出せる社会をつくる

現在は、税理士事務所の経営を続けながら、お金の知識の普及活動に力を入れています。
税理士事務所ではあえて新規顧客は取らず、昔からのお客さまの顧問税理士として活動。
多くの時間をお金の知識の普及活動に割いています。

普及方法は、YouTube、Voicy、マンガ本。TwitterやInstagram、TikTokなどSNSも活用しています。
Twitterが各所での活動を知らせる拠点というイメージです。
それらで得た収益を使い、全国の学校でお金の授業を始めました。
今では先生方から声をかけてもらう機会も増えてきました。
小中高、いろいろな学校で無料授業を開いていて、ぜひ声をかけてほしいと思っています。

人生をかけての目標は、お金の教育を変えること。
それには多くの人に伝えていく必要があります。
だから取材を受けるし、テレビにも出る。
影響力を高めるために有名になりたいと思うようにもなりました。
「ただ有名になりたい」と思っていたときと比べ、揺らがない地盤ができたと感じます。

いずれは、お金の教育を義務教育に入れたい。
発信活動やメディアに出るだけでは義務教育を変えるまでにはいかないと薄々わかってきたので、今後は教育業界にも積極的に足を踏み入れていきたいと思っています。
これからも、努力では変えられない格差を少しでもなくし、努力次第で成果を出せる社会づくりに貢献していきたいです。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2022年2月)のものです

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