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育児を「大変だった」で終わらせない。
シェアリングエコノミーで助け合える社会を
【ママシェアワーカー・大川美希】

目次
  1. 「知ってもらう・伝える」に興味があった
  2. 壁に直面した産休と育休
  3. 人やサービスに頼ることが当たり前の世の中に

人はどのようにして大切にしたい価値観に気づき、人生の軸を見つけるのか。各界で活躍する方の人生ストーリーから紐解きます。今回は、ママシェアワーカーとして活躍する大川美希さんをご紹介。

大手IT企業で働いてきた大川さん。第1子を授かり迎えた産休育休期間中、社会との断絶や育児の壁に直面し、シェアリングエコノミーサービスに助けられたと言います。大川さんがママシェアワーカーの活動に込める思いとは。お話を伺いました。

1「知ってもらう・伝える」に興味があった

小学生時代に両親が離婚し、母に引き取られました。
母は出版関係の仕事をしていて、楽しそうに働く姿が印象的でしたね。
そんな母を見ていたので、いつか自分が働くときには母のように楽しく仕事ができたらいいなと思うようになりました。

母は、私の好きなことをいつも応援してくれ、ピアノや英語などの習い事をさせてくれましたし、私が好きなバンドの話も一緒に楽しんでくれました。
小学生のころに演劇に興味を持ち、中高生時代は演劇部に所属。
観客から拍手や声援など、リアクションをもらえることがうれしかったです。

大学は英文学科に属していましたが、ある音楽を知らない人に届けるにはどのようにプロモーションをすればいいのかといったことに興味を抱き、学校とは別にミュージックビジネススクールで音楽のプロモーション手法や伝え方、舞台演出について学びました。

誰かに何かを伝える、知ってもらうことへの興味が強く、夏休みのインターン先に広告代理店を選択。
ある商品に対し、それを知ってほしい人に広告で伝える際にはいろいろな表現方法やアプローチがあることを知り、その奥深さに面白味を感じました。

卒業論文は「人気少女漫画がなぜそこまで売れたのか」というテーマで執筆。
人の心に影響を及ぼす理由や背景を考えることが好きでしたね。

卒業後は広告代理店に入社しました。
広告代理店の仕事は、他社の商品を他社の何らかの媒体で紹介するときの繋ぎ役です。
利用する媒体は新聞やテレビ、雑誌、ラジオなど。
仕事をするうちに、私の興味関心は「誰が広告を見て、見た結果どう行動したのか」という点にあると気づきました。
私の目的は、知らないことを知ってもらうきっかけをつくること。
きっかけをつくるにはどう行動すればいいのか、ウェブ上ならデータを集めて数値で結果を見ることができるのではないかと思うようになり、社会人3年目で大手IT企業に転職を決めました。

ウェブマーケティングの仕事は楽しく、スキルが上がれば評価され、表彰され、役職をもらえ…といったキャリアアップにモチベーションを感じていました。
数字を追って、結果を出して、評価をもらう。
そのサイクルで仕事に熱心に取り組んでいました。
いつかは結婚して出産したいなと思いつつ、具体的なライフプランは立てていませんでした。

20代後半で結婚。
結婚前に、夫と一緒に「いつごろに子どもがほしいか」「仕事でどんなチャレンジをしたいか」など、互いのライフプランについて話し合いました。
いつか子どもを授かっても、変わらずなんでもできるだろう、産後もどうとでも時間を使えるだろうと思っていて、実際産んだあとにどうなるのかといったイメージはあまり描けていませんでした。

2壁に直面した産休と育休

念願叶い、第1子を妊娠。
職場でチームリーダーを務めていたので、仕事をどう回していこうか、引継ぎはどうしようかといったことで頭がいっぱいで、慌ただしく産休開始までの日々を過ごしました。
そうして迎えた産休。
突然やるべき仕事がなくなってしまい、急に寂しさを覚えました。
私がいなくてもチームは円滑に回っています。
当然のことではあるのですが、ふと自分がいた意味って何だったのだろうと思ってしまいました。

時間ができたことで、今まで私がモチベーションにしてきた数字の達成や出世についても見つめ直しました。
「私がやりたい仕事ってこれでいいんだっけ」と考える余裕が生まれ、同時に「あれ、ここから先、自分のキャリアはどうなるんだろう」と思うようになりました。
社内でバリバリ働き続けている女性は独身者がメインで、出産後に復帰して以前と同じように働いている人はほぼいませんでした。
子どもの発熱で早退や欠勤をする際に申しわけなさそうにする姿を見て、自分事として考えてみると大変そうだなと感じました。

そもそも、産休育休で一年ほどブランクができてしまったあと、元のキャリアに戻れるのかも不安でした。
育児と仕事の両立のために、キャリアアップする機会がなくなる、いわゆるマミートラックに乗るしかなくなってしまうのではと思い、自信が消失。
客観的に「産休育休期間中、私はこれをしてきました」と言えることをして自信をつけたいと思い、オンラインでの講座や、新しい学びに出会える自由大学の講座、育休プチMBAなどの勉強会にも通いました。

自由大学講義の教室

自由大学講義の教室

情報収集を得意としていましたが、それでも出産後は壁に直面しました。
子育ては、本やインターネットで得た情報通りにはいきませんでした。
また、正解とされている情報が複数あり、そこから自分が選び取らなければならないケースも少なくありません。
一回孤独に陥ると、ミルクのタイミング、離乳食の開始時期など、何もかも正解がわからなくて不安ばかりのループにはまってしまうと感じました。

不安から抜け出すための情報も探し、自治体による保健師訪問や、一日ホテルで赤ちゃんを見てもらいながらランチを食べられるサービス、ベビーマッサージのイベントがあるといったことを知り、実際に試す日々を送りました。
家事代行サービスやベビーシッターサービスなど、人に頼る大切さも痛感。
SNSやママ友との雑談では、「大変だよね」と言い合うことはできますが、気持ちの共感で終わってしまいがちです。
そこで終わらず、楽になるサービスや自分が見つけた子育てのコツなど、情報をもっと活用したいと思うようになりました。

子育てに関するシェアリングサービスだけではなく、気分転換も兼ねて自分のキャリアに繋がるサービスも積極的に利用していました。
面白かったのは「育休インターン」。
育休中にボランティアができる企業を紹介してくれるプラットフォームを利用し、可動式授乳室事業を手がけている企業へインターンに行きました。
ウェブマーケティングのスキルを活かして、サービスの良さを伝えられる仕事ができるのではと思ったんです。

この会社では、赤ちゃん連れでも外出しやすくなる環境をつくるため、快適で安心な授乳室の開発とサービスを多くの人に利用してもらう取り組みをしていました。
私はこれまで数字を達成することに充実感を抱いてきましたが、インターンとして活動するうちに、数字では表せられない熱量や、「誰かに届けている」感覚を持てる仕事にやりがいを感じるようになりました。

育休インターンで家事代行サービスに携わっている様子

育休インターンで家事代行サービスに携わっている様子

続けて第2子を出産し、育休から復職後、3ヶ月後には再び育休に入りました。
次の育休期間でも、育休インターンを利用して活動。
ベビーシッター会社が家事代行サービスを立ち上げる際にインターンとして関わりました。

インターンでは「ママが料理や掃除などの家事をしなければならない」ところから脱却し、「もっと人を頼っていいんだよ」という考え方を広げていくため、サービスの認知度を上げる取り組みを行いました。
他にも、出張家族写真のマッチングサービス企業や、育休インターンのプラットフォームでインターン参加者を増やすためのプロモーション活動のお手伝いも実施しました。

育休中に社外でさまざまな活動をする一方、社内での取り組みにも関われるようになりました。
「社内の育休中ママを集めてランチ会を開いてくれませんか」という募集に手を挙げ、幹事のような役割を担ったことも。
母親の働き方に興味があると知ってもらえたからか、復職後には事務局から声をかけられました。
事務局メンバーとして育休に入るママパパ向けに、保活の仕方などを毎月紹介するなど、本職であるウェブマーケティング以外の取り組みにも携わることになりました。

3人やサービスに頼ることが当たり前の世の中に

現在は、引き続き企業でウェブマーケティングの仕事をしながら、シェアリングエコノミーを広げる活動に力を入れています。
一年ほど前にシェアリングエコノミー協会のアンバサダーになったこともあり、より発信活動を活発化させています。
あくまで本職はウェブマーケティングなので、その他の社内外の取り組みはボランティアとして行っています。

これからも、困ったときの助けになれるようなサービスを積極的に試し、よかったものを悩んでいるママにシェアしていきたいですね。
子どもが3〜4歳になり、乳児時代の大変さが「あのときは大変だったな」の一言で片づけてしまっていると感じるようになりました。
せっかく役立つ経験や情報があるのに、振り返るだけで終わらせてしまってはもったいない。
これからのママたちに「私はこうしたよ」「こんなサービスが便利だったよ」と少しでも参考になる情報を伝えたいです。

シェアリングエコノミーを通じて得た情報や経験は、本業に活かせることもあり、相乗効果を生んでいると感じています。

今後は、もっと収集力と学習力を磨きたいです。
車好きな子どもと過ごす中で、ただの「車」だった情報が「ゴミ収集車」「タクシー」と解像度が上がる体験をしました。
知りたいと思うことで、気づける情報の鮮明さが変わります。
視野を広げながら、同時にクリアな情報を集めていきたい。
そして、集めた情報を上手く伝える術も身につけていきたいと思っています。

子どもを産んだあとの選択は人それぞれ自由です。
仕事をセーブして子ども優先にしたい、産後も積極的に仕事をしたい、両方いい塩梅でやっていきたい。
どれを選んでもいいんです。
自分の選んだ道を実現するために「頼ること」を当たり前だと思える人を増やしたいですね。
私自身、選択肢が多くあることをもっと学びたいですし、実践している姿を見せることで、他の人に「あんな方法があるんだ」と知ってもらえたらうれしいなと思っています。

「これ、いいよね」を共有するのは、うれしいし楽しい。
私の母は今でも自分の好きなことをやっています。
私も母のように自身が楽しんでいる姿を子どもたちに見せていきたいですね。
私が楽しんでいると、結果的に家庭も明るくなるんじゃないでしょうか。
いい循環で回している様子をシェアしながら、社会にシェアリングエコノミーを広げていきたいと思います。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2021年9月)のものです

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