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どんな生い立ちでも人生は切り拓ける。
子どもたちの「可能性の種」を育む
【一般社団法人HASSYADAI.social理事・三浦宗一郎】

目次
  1. 人の人生に影響を与えられる人でありたい
  2. 人との出会いが人生を変える
  3. 自分の人生は自分で選べると伝えたい

人はどのようにして大切にしたい価値観に気づき、人生の軸を見つけるのか。各界で活躍する方の人生ストーリーから紐解きます。今回は、一般社団法人HASSYADAI.socialの理事として高校生・少年院の若者に対するキャリア教育に従事する三浦宗一郎さんをご紹介。

裕福な家庭でなかった幼少期を振り返り、それでも人との出会いによって人生が変わったという三浦さん。支援する学生には、自分の生き方を自分で選ぶ大切さを伝えたいと話します。その背景とは?お話を伺いました。

1人の人生に影響を与えられる人でありたい

人と話すのが大好きな子どもでした。
そんな自分を手放しで応援してくれたのは母です。
たくさんの尊敬できる大人と会う機会をつくってくれました。
サッカーのコーチ、学校の先生など、素敵だなと思う大人の生き方や想い、考え方を聞くのは楽しかったですね。
刺激を受けました。

こんなカッコいい大人になりたい!と憧れを抱いて過ごしていましたね。

人と話すことで、楽しい気持ちになれる。
人生を面白く感じられる。
そのことに感化され、だんだんと人の人生に関わる仕事をしたいと思うようになっていきました。

尊敬できる大人たちに刺激を受けたように、自分も人に影響を与える存在になりたい。
中学生になると、学校の先生になりたいと思うようになっていきました。

ただ、高校・大学と進学できるほど裕福な家庭ではないことは理解していました。
サッカーの道具を次々に買い換える余裕もなかったので、ボロボロになるまで同じものを使い続けていました。

進学する余裕がないと知りながら、母親に大学に行きたいと言うのは申しわけない。
そう思い、進学先・就職先に選んだのは、トヨタ自動車の企業内訓練校であるトヨタ工業学園でした。
学費がかからず、入学した4月から勉強をしながら給料をもらえる。
そして16歳になると配属が決まり工場で働き始められる学校でした。

中学校のクラスメイトが普通科の高校へ進学する中、工場勤務という人生の方向性が決まってしまうこと、寮生活なため、親元を離れなければならないことは不安でした。
でもそれ以上に、自分で働いたお金で大学へ進学できるかもしれない!もしかするとトヨタ工業学園で先生になれるかもしれない!と、希望を感じ自分の意思で進学を決断しました。
なので家庭環境を嘆いたり、マイナスに考えたりすることはなく、むしろ道が拓けた!という感じでうれしかったですね。

でも、いざ工場勤務が始まると、だるいな…しんどいな…という気持ちばかりが増していきました。
毎日8時間、同じ部品を付け続ける淡々としたライン作業。
夜勤もあり、精神的にも体力的にもつらかったですね。
人の人生に関わる仕事がしたい、学校の先生になりたい。
でも自分が目の前でやらなければならないのは、工場のライン作業。
そのギャップに、つまらなさは増していくばかりでした。

あるとき、期間従業員として3ヶ月だけ沖縄から働きにきていた社員さんに出会いました。
自分と同じような作業をしているにもかかわらず、なぜか鼻歌を歌いニコニコしながら楽しそうに働いている。
その姿に衝撃を受けました。
なんでそんなに楽しそうに仕事ができるんだろう?と聞くと、「どうせやるなら、楽しい方がいいと思っているんですよね」と答えが返ってきました。

ハッとさせられましたね。
やりたい仕事じゃないからつまらないのではなく、自分自身が楽しもうとしないからつまらないんだ。

そう気づかされる一言でした。
次の日からさっそく、仕事を楽しむ工夫を始めることに。
メモ帳を用意し、作業中に思いついたことをメモする。
職場を明るくするため元気に挨拶をする。
後輩には、仕事がつらいことと人生がつらいことは別だ、ということをよく話していましたね。

小さな心がけを積み重ねると、職場も少しずつ明るくなり自分自身も仕事を楽しめるようになっていきました。
人の人生に関わる仕事がしたい。
そう思い学校の先生を目指していたけれど、職業はあくまで手段でしかないと気づかされました。
目の前の人を幸せにできるかどうかは、自分の生き方次第なんだ。
それなら職業にとらわれず、自分の生き方を通して人の人生に影響を与えられる人になりたい。

そんな気持ちの変化が生まれていきました。

2人との出会いが人生を変える

休みの日には、執着するように世界中・日本中を旅していました。
仕事が終わったらバスで寮に戻り、寝て朝また仕事をする。
10メートルのラインを行き来する作業を繰り返す。
そんな限られた生活のエリアから飛び出したい気持ちが大きかったですね。

異文化に触れ、世界の広さを知ることは旅の醍醐味でした。
そんな中、『世界青年の船』という世界10ヶ国から集まった外国青年と船内などで共同生活をしながら、ディスカッションや文化交流を行うプロジェクトへ参加するチャンスを掴みました。
船の中でさまざまな国の人と対話をすると、多様な考え方・価値観・バックグラウンドがあることを実感しましたね。
世界の深さを、感じました。

これまでのようにただ世界中を巡るのではなく、もっといろいろな人と対話をして世界の深さを知りたいという欲求が強くなっていきました。
また多様な価値観に触れることで、このまま給料・生活が保証された安定した生活を送るよりも、新しい挑戦をしたい。
自分が想像もつかない未来へ飛び込む人生の方が、面白いんじゃないか?という気持ちも芽生えました。

海外の人たちと異文化交流をしていた頃の三浦さん。世界青年の船にて

海外の人たちと異文化交流をしていた頃の三浦さん。世界青年の船にて

新しい道へ挑戦したい気持ちと不安の狭間で揺れ、どんな生き方がしたいのか?なかなか決断できずにいましたね。
そんなとき『バガボンド』という漫画のある言葉に出会いました。

「お前の生きる道は、これまでもこれから先も、天によって完璧に決まっていて、それが故に、完全に自由だ」

すとんと腑に落ち、納得しました。
そうか、トヨタを辞めることは最初から決まっていたんだ。
自分が人生をどう生きたいか?ではなく、人生が自分に何を求めているか?の視点を持つことが大事なのかもしれない。
そんな気づきを与えてくれましたね。

「俺は人生から何を求められているんだ?」を改めて考えると、チャレンジしろ!と言われている気がしました。
そうして6年間お世話になったトヨタへ辞表を出すことに。
上司に伝えた瞬間は、本当に自分で人生を選択して未来を変えたんだな…!という高鳴る興奮を覚えました。
この決断を正解に変えてやろう、と意気込んでいましたね。

退職後は、旅をしながら自分と向きあう時間をつくりました。
「何のために生きているんだ?」「どんな生き方がしたいんだ?」そんな問いを続け、最後に残ったのは「人を元気づけたい」「目の前の人を笑顔にしたい」という想いでした。
それならと、学生時代から想い続けていた、「人の人生に関わる仕事に就くこと」を次のステージにすることに。

ご縁があり、中卒・高卒の若者を中心にキャリア教育を届けている株式会社HASSYADAIに入社を決めました。

支援する学生の中には、家庭環境で進学を諦めざるを得なかった子もたくさんいました。
過去の自分とリンクすると同時に、過去の自分よりもつらい環境にいる子もたくさんいる現実を知りました。

人の人生に関わる仕事をしていると、やりたいことができている自分と、やりたいことを諦めざるを得なかった人との違いはなんだったんだろう?と改めて考えさせられました。
自分はたまたま良い人と巡り合い、運が良かっただけだと気づきます。
いろいろな人との出会いのおかげで、今やりたいことを選択して生きられている。
だからこそ、生まれ育った環境に人生を左右されずに、自分の人生を自分で選択して生きられる社会を実現したいという想いが強くなっていきました。

自分が人との出会いで人生が変わったからこそ、本気でそう思えましたね。
夢中になって仕事をするにつれ、人生の相談に乗ったり元気づけたり、人の人生に関わることが生き甲斐になっていきました。

3自分の人生は自分で選べると伝えたい

現在は、一般社団法人HASSYADAI.socialの理事を務めています。
主に、高校生・少年院の若者に対するキャリア教育を行なっており、日本全国、北海道から沖縄まで150〜160の高校で講演会をしたり、学校では出会えない企業の方と交流する機会を提供したりしています。

活動の中で大事にしていることは、子どもたちに「人との出会いや自分次第で、人生は切り拓いていけるんだよ」と伝え続けること。
生い立ちや家庭によって自分の可能性を閉じてしまっている子がたくさんいます。
だからこそキャリア教育の中では、自分の人生を自分で選択する事の重要性や、選択していくために必要なことなど、本質的な話しをしています。

高校生に自身の経験やメッセージを伝えている

高校生に自身の経験やメッセージを伝えている

私は誰でも、「可能性の種」を持っていると思っています。
例えば、ライン作業を正確にこなすことが得意な人もいれば、介護でお年寄りに喜んでもらうことにやりがいを感じる人もいる。
それぞれが自分自身の可能性を最大限に活かせる職業や生き方をサポートしたいんです。
親や先生の期待に応えることも大事だけど、そもそも進路を自分で選んでも良いんだよ、と伝えたい。
生い立ちによる、選択格差をなくしていきたい。
そんな気持ちをエネルギーに、情熱を持って活動しています。

20代は、今の自分にしかできないチャレンジをもっとしていきたいですね。
今の仕事に留まらず、領域を広げていきたい。
海外への留学も考えています。
自分の可能性を狭めず、やりたいことを選択して生きていきたいですね。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2021年2月)のものです

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