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自分のペースで、服をつくり続ける。
「健康的な消費」をお届けするために
【foufouデザイナー兼代表・マール・コウサカ】

目次
  1. 制限がある中でいかに楽しむかを考えるのが好き
  2. 健康的な消費のために、がコンセプト
  3. 着たい!衝動を大事にしたい

人はどのようにして大切にしたい価値観に気づき、人生の軸を見つけるのか。各界で活躍する方の人生ストーリーから紐解きます。今回は、女性に人気のファッションブランド「foufou」デザイナー兼代表のマール・コウサカさんをご紹介。

学生時代は、服を着ることで理想の自分になれることがうれしかったというコウサカさん。「foufou」立ち上げ後は、お客さんにとっての健康的な消費を意識しつつ、「着たい!」という衝動に身を任せて服を楽しんでもらえる仕組みづくりを大切にしたといいます。その背景とは?お話を伺いました。

1制限がある中でいかに楽しむかを考えるのが好き

小学生の頃から、決められた制限の中でいかに楽しむかを考えるのが好きな子どもでした。
学校にゲーム機器は持ち込めないけど、ずっとゲームをやっていたい!そんなときは、ノートにゲームを自作して楽しんでいましたね。
制限があるからできない。
ではなく、その中でいかに自由に楽しむかを考え、仕組みをつくることが楽しかったです。

決められた枠の中で工夫するからこそ、自分にしかない発想が生まれました。

両親も服が好きだったため、自然と服を好きになっていきました。
服を着ることで、理想の自分になれる。
カッコいい自分になれることがうれしかったです。

その服、似合うね!と言われるとテンションが上がるし、たった一着の服で、人の印象はガラッと変わることもある。
そんな経験を積み重ねるうち、服って楽しいなと思うようになっていきました。
大学生になると、アルバイト代のほとんどをつぎ込んで服を買っていましたね。

卒業後の進路を決める時期。
特にやりたいことが見つからず、就職活動の波にもうまく乗れずにいました。
卒業後は、アルバイト先にそのまま契約社員として入社をすることに。
働き始めてからも、このままでいいのかな?という将来への不安は抱えていましたね。

ビジネスの世界で生きていくか、ものづくりの世界で生きていくか、自分にはどっちが合っているのか、と考えたとき、どちらかといえばものづくりかなという気持ちに傾むいていき、専門学校へ通うことを検討し始めました。
そんなとき、ちょうど知人から文化服装学院を紹介してもらいました。
服に興味があったので入学を決めました。

学費を貯めるため、昼間は契約社員として働き、夜はスーパーで夜勤、朝はそのまま出社をする生活が始まりました。
ハードな生活でしたが、つらいと思うことはそれほどありませんでしたね。
大学生になるまで、のらりくらりとなんとなく過ごしてきたため、苦労を知らずに生きてきたんです。
人生経験として苦労をしておきたい。
そんな気持ちがあったため、乗り切れていました。
専門学校入学後も、昼は働き、夜は学校に行き、土日に課題をする。
めまぐるしい日々でしたが、苦ではなかったですね。

忙しい日々を踏ん張るために心がけていたのは、自分のモチベーションに期待しないことです。
どうしても、やりたい・やりたくないという感情に左右されてしまうところはありますが、そのうえでモチベーションに左右されず、ただ目の前のやるべきことを淡々とこなす。

服づくりは、一朝一夕ではうまくなりません。
今日、明日で全力を出し数年後に燃え尽きてしまうより、どうせ人生は長いのだからゆっくりやろう。
ならば、自分が長く続けられるペースを守ることが大事なのではないかと感じていました。

世の中には、「その日1日を人生の最後だと思って生きろ!」「明日死ぬかもしれないと思って生きろ!」というメッセージを受け取り人生が好転する人もいると思うんです。
でも私は1日を全力で頑張ることが難しい性格。
それを自覚していたので、ハードな生活が続いても、とりあえずコツコツ積み上げる選択をしました。

長距離ランナーのように走り続ける。
雨の日も風の日も晴れの日もとにかく、やる。
そうして何十年後もアパレル業界で服をつくり続けられる自分になろう。

そんな心構えで、学校と仕事を両立する生活を続けていきました。

2健康的な消費のために、がコンセプト

在学中に服をつくる技術が身についたため、実際にハンドメイドでつくり売ってみることに。
「foufou」と名付け、ブランドを立ち上げました。
とはいえ、店舗を持つ資金や余裕はありません。
限られた条件の中で、どのように販売していけばいいのか。
考えた結果、誰でもどこからでもアクセスができるSNSを活用するしかないと思いました。

初めて服が売れたときは、これ以上ないくらい感動しましたね。
知らない街の、知らない人に、自分の服を買ってもらえた…。
そんな興奮と同時に、SNSで販売することへの可能性を感じました。
今はハンドメイドで一着ずつしかつくれないけれど、販売数を増やせば服屋として食べていけるかもしれない。

ワクワクする未来が見られた成功体験でもありました。

ブランドを運営するにあたり、大事にしていたのは「お客さんに、健康的な消費をしてもらいたい」という想いでした。
今の時代、服だけがファッションではありません。
お洒落なカフェや旅行先での写真をシェアすることもファッションの一つ。
そう考えたとき、働いて稼いだお金を全て服につぎ込むのではなく、生活を成り立たせる余裕を持ちつつ、あらゆるファッションを楽しむことが、時代にあった健全な消費なのではないかと考えました。

「foufou」では適度にお洒落で、適度に使い勝手のよく、適度な価格で服を楽しめるという考え方を軸に、「健康的な消費のために」というコンセプトを掲げることに。
具体的には、手が出せる価格設定。
セールで安売りを行わない。
型落ちの概念を持たず、再販をする。
暮らす場所を問わず購入できるようSNSを活用した販売方法を取り入れるなど、お客さんに満足してもらえる仕組みを構築していきました。

一方で、掲げるコンセプトをお客さんに押し付けるのは違う、という考えもありました。
ただ服が好きだった学生の頃、健康的な消費を考えて服を選んだことは一度もありません。
純粋に「この服が好き!カッコいい!」という、衝動に身を任せて服を楽しんでいました。
私はそれでいいと思うんです。

お客さんには「あ!これ、着たい!」という衝動に身を任せて服を選んでほしい。
着る服によって印象がガラリと変わる驚きや高揚感を、純粋に楽しんでほしいんです。

だからこそ、コンセプトや仕組みは前面に打ち出しません。
見たい人が見られるようにしておく程度で良いんです。

考えて服を選ばずとも、気がつくと健康的な消費になっていた。
そんな仕組みを裏側でつくるのが、私たちの仕事です。
「foufou」の服を、安心して手に取ってもらえる仕組みづくりを大事にしたい。
そんな想いで、ブランド運営を行なっていました。

少しずつ反響が大きくなるにつれ、SNSから良い反応も悪い反応もダイレクトに飛び込んでくるように。
周囲の声に一喜一憂していたら身が持たない、と感じるようになっていきました。
毎日ジェットコースターのように起こる、苦労や喜びの出来事に影響されず、長くブランドを続けていきたい。

成功しようが失敗しようが、服をつくり届けるというやるべきことは変わらない。
周りの声によって、自分の想いが変わるわけではない。
それなら「健康的な消費のために」今、自分にできることに集中しよう。
そんな心がけを大事に、感情やモチベーションに左右されないブランド運営を意識していました。

3着たい!衝動を大事にしたい

現在はファッションブランド「foufou」のデザイナー兼代表を務めています。
今後も、健康的な消費のための仕組みづくりを続けるのと同時に、つくり手である私自身が「着たい!」という衝動に身を任せた服づくりも大事にしていきたいですね。

今の時代、物の背景やサステナブルについて考えた消費を求められる場面は増えており、アパレル業界も例外ではありません。
私自身も市場やブランドのストーリーについては考えますし、SNSでの発信や著書の出版も行なっています。

でもそればかりを考えていては、買い物に疲れてしまう。
純粋に服を楽しむことから遠ざかってしまうのではと思うんです。

服屋の仕事は、意味を語ったりストーリーを知ってもらったりすることじゃない。
シンプルに、服をつくり届けることです。

ただ服を「着たい!」と思った衝動のまま買ってもらいたい。「曇天の日でも、foufouの服を着るとテンションが上がる!」そう思ってもらえたらうれしい。それだけなんです。

物の持つ意味や背景を知った上で消費することは、もちろん大事。
ですが他の誰かの意見に左右されて、ファッションを楽しめないのは本末転倒です。
もっと自由に、自分が好きと感じた服を手に取ってほしい。
好きな服を着て、好きな自分になって、服を楽しんでもらいたい。

だからこそ、「健康的な消費のために」というコンセプトは、お客さんに押し付けたり、考えてもらったりするのではなく、私たちが裏で整える。
つくり手である私自身も「着たい!」という衝動を大事に服をつくり、お客さんに胸を張ってお届けする。

そうやって常に「foufou」の服を安心して買ってもらえる仕組みづくりを、意識していきたいですね。
お客さんにとっての健康的な消費のために、「服が好き」という衝動に身を任せ、何十年先も服をつくり続けたいです。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2021年2月)のものです

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