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視野を広げるため、とにかく人に会う。
その先で見つけた、大切な家族と夢
【車いすYouTuberの妻・寺田真弓】

目次
  1. 人にたくさん会えば視野が広がる
  2. 面白い人・印象に残る人になりたい
  3. 障がいのある人たちの選択肢が増える社会にしたい

人はどのようにして大切にしたい価値観に気づき、人生の軸を見つけるのか。各界で活躍する方の人生ストーリーから紐解きます。今回は、車いすYouTuberの夫を支える寺田真弓さんをご紹介。

面白い人と出会うことで自分の視野が広がると気づき、人との出会いを大切にしてきた寺田さん。車いす生活を送る男性と結婚し、車いすYouTuberの妻として夫を支える寺田さんが思うこととは。お話を伺いました。

1人にたくさん会えば視野が広がる

中学卒業後、高校の特進クラスに進学しました。
中学では勉強ができるほうだと思っていましたが、授業の内容が格段に難しくなって、ついていくのに必死でした。
迎えた大学受験、第1志望だった東京の大学に落ちてしまいました。
周りの友達のほとんどは、有名大学に合格していました。
浪人してもう一度受験をしようと思いましたが、友人たちには勉強では追いつけないと思いました。
大学では勉強ではなく、自分のやりたいことを見つけて思いきりやろうと決意しました。

地元の長野から、神奈川の大学に進学しました。
知り合った友人たちは、私の知らないことをたくさん話してくれました。
彼らと話すと自分の視野が広がっていく感じがして楽しかったですね。
もっとたくさんの人に会って話をすれば自分の視野が広がると思い、アルバイトを複数掛け持ちして学内のサークル活動、学外のコミュニティにも積極的に関わり始めました。
とにかくスケジュールを詰めて、常に人と関わっていましたね。

大学3年生のとき、広告代理店が主催したイベントでアルバイトをしました。
一緒に仕事をした代理店の社員の多くは新卒1年目で年齢が近いのに、有名国立・私立大学の出身な上にそれぞれが個性的な経験をしていて、自分との圧倒的な差を感じました。
このまま就職活動をしても、自分はいい会社には入れないと思いましたね。

どうしようか考えたとき、小さいときからカフェが好きで、いつかカフェを開きたいという夢があったことを思い出しました。
カフェを開くのは自分の努力があればできるし、学歴は関係ないと思いました。
学生時代に知り合った方に相談すると、新卒の春に、表参道に新しいカフェがオープンすることを教えていただき、オープニングスタッフとして就職しました。

オープニングスタッフとしてお店づくりから関わり、すごく楽しかったです。
朝から晩まで働く生活になりましたが、気の合う仲間たちと工夫しながら、大好きな空間で働けていたのでつらさはありませんでしたね。
毎日が文化祭みたいに賑やかでした。

就職してからも休みの日など限られた時間の中でいろいろな人に会うことは続けていました。
あるイベントで、サロンなどを開いている少し年上の女性経営者と話す機会がありました。
「カフェを開きたくて、カフェで働いているんです」と自分の状況を伝えました。
すると、「カフェで働くだけじゃ、カフェの経営はできないよね」と言われました。
このまま店舗スタッフとして働くだけではきっとダメなんだなと思うようになりました。

もっとカフェの運営を勉強しようと、希望して会社の内勤部門に異動しました。
経理の仕事などをしながらカフェ運営のノウハウを吸収していきました。
でも、女性経営者の言葉がずっと頭の片隅に残っていて、カフェ運営をするには外の世界も知らないといけないと思うようになっていきました。

そんな思いを持っていたとき、レストランやカフェに食器を卸している会社の社長さんがSNSで社員を募集しているのを見つけました。
この会社で働けば、カフェを開く役に立つかもしれないと思い、その会社に転職しました。

2面白い人・印象に残る人になりたい

前職と違い、仕事は午後6時には終わり、休日も曜日が決まっていたので、自分の時間が持てるようになりました。
この時間でもっといろいろな人に会おうと、イベントや交流会、勉強会に積極的に参加しました。
この頃、同世代が集まるコミュニティに入ってまったくやったことのなかった撮影や動画編集を一から教えてもらいました。

ある日、カメラマンの仕事に同行すると面白い活動をしている男性クリエイターと出会いました。
彼の仕事仲間や友人はみんな面白い人たちばかりです。
私はそんな人たちにまた声をかけてもらうにはどうしたらいいかと考えました。
まずは、気遣いができて役に立てる人になることが大事だと思いました。

できることから始めようと、クリエイター主催のイベントがあったら自分から手伝いにいくようにして、面白い人たちに会える機会を増やしました。
お手伝いを通じてたくさんの人と関わることで、一人では絶対に会えないような人に会ったり、一人では絶対にできないような経験ができたり、自分の視野がさらに広がっていく感じがして楽しかったですね。

車いすの男性を主人公にした映画の上映会イベントで受付スタッフをしていたとき、寺田ユースケという男性と出会いました。
彼は生まれつきの脳性マヒで足が不自由のため車いすで生活をしていました。
彼は会場で元気良く、名刺をたくさん配っていました。
その時は挨拶程度の会話だけでしたが、こんな人がいるんだと印象に残りました。

3ヶ月後、ユースケが「車イスヒッチハイク」という旅企画を始めました。
道行く人に「車いすを押してくれませんか?」とお願いし、車いすを押してもらいながら全国47都道府県を旅する企画で、私はユースケに誘われて企画の発表イベントのお手伝いをしました。

ユースケに話を聞くと、具体的にどこにいくのか、どんな行程で旅をするのかの計画ができていないとのことでした。
同い年で親近感もあったため、自然とユースケの旅のサポートをするようになりました。

ユースケが旅で向かう場所のリサーチや宿泊先の手配など、東京からできることを遠隔でサポートしました。
彼と電話やLINEでやり取りを進めているうちに、同じ目線で活動できることが楽しくなっていました。
旅を始めてから3ヶ月後、私はユースケに付き合ってほしいと告白され、付き合い始めました。

旅企画を進めているうちに、旅の様子を動画で撮って発信したほうがいろいろな人に知ってもらえるのではと考えました。
でも、カメラマンや動画編集をしてもらうスタッフを雇うお金はありませんでした。
それなら私が旅に同行すれば解決できると思いました。
当時の職場には融通を利かせてもらい、日本全国を一緒にまわりました。
昼間はヒッチハイクで全国をまわり、夜は動画編集と本当に忙しかったのですが、行ったことのない場所に行けて、知らない人たちに出会う毎日は新鮮で本当に楽しかったですね。

車いすでヒッチハイクしたときの様子

車いすでヒッチハイクしたときの様子

付き合って数ヶ月後、ユースケからプロポーズを受けました。
彼との今後を考えたとき、一緒にいて面白いし、この先どんなことが待っているかわからないワクワク感があって、そんな日々が続くなら幸せだなと思いました。
私は彼のプロポーズを受け入れ、結婚。
2020年4月には長男を出産しました。

3障がいのある人たちの選択肢が増える社会にしたい

現在は「寺田家TV」というYouTubeチャンネルをユースケと運営しています。
家族3人の日常や、装着型サイボーグ「HAL」を使ったユースケのトレーニング、全盲・難聴・四肢欠損など障がいがある方とのコラボ動画なども発信しています。

これまでたくさんの人たちと出会い、多くの価値観に触れてきました。
第1志望の大学に落ちたときは落ち込みましたが、もし合格していたら、ここまでたくさんの人に会うために行動をしなかったと思うんです。
何もなかった自分が面白い時間を過ごすことができ、ユースケとも出会えた。
振り返るとすごくいい人生を歩んでいると思います。

ユースケさんとお子さんとの家族写真

ユースケさんとお子さんとの家族写真

ユースケと出会う前までは障がいのことに興味を持つ機会がありませんでした。
だけど、彼や彼の友人と接する中でいろいろな問題があって、生きづらさを抱えている人が多いことを知りました。

その反面、障がいがあっても自分の人生を心から楽しんで人を幸せにしている人もたくさんいます。
最近は障がいを持った子どもたちと会う機会も多く、そんな子どもたちが希望を持って生きられる社会になればいいなと思っています。

障がいを持っているからできることが限られるのではなく、障がいがあってもできることはあるし、障がいがあるからこそできることもたくさんある。
自分たちの発信を通して何かを感じてもらい、悩んでいる人の選択肢を少しでも増やしてもらえたら幸せだなと感じます。

YouTuberという職業は最近できたものですし、これから先ずっとあり続けるかもわかりません。
それでも、これからもいろいろな形で発信や活動をして、障がいがあってもたくさんの希望を持てる社会をつくっていきたいです。

車いすの子どもたちを対象に開催したキャンプでの集合写真

車いすの子どもたちを対象に開催したキャンプでの集合写真

※掲載している情報は、記事執筆時点(2021年1月)のものです

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