1働く女性のモヤモヤを解消したい
本や雑誌を読むことが好きな子どもでした。
そこからだんだんと、自分も雑誌をつくってみたいと興味を持ち始めます。
雑誌の制作を通して、人がアクションを起こすきっかけづくりに貢献できたら、という想いが芽生えていきました。
大学卒業後は、大手出版社に就職。配属されたのは、20〜30代の働く女性向けメディアの編集記者でした。
そこでは連日のように、取材やアンケート調査をしていましたね。
どんな生活をし、どんなことを感じながら働いているのか、率直な意見を聞き続けました。
そんな日々を積み重ねるうち、会社でモヤモヤや葛藤を抱えながら働いている女性が多くいる、と気がつきました。
よく話を聞いてみると、主に働く時間や場所に関して悩みを抱えていることがわかりました。
例えば、育児と仕事を両立するために時短勤務に切り替えた女性は、大きな仕事を任せてもらえなくなったり、限られた時間内で成果を出してもフルタイムで働いていないという理由でなかなか評価してもらえなかったり。
そんな先輩の姿を見ている20代の女性たちは、これから結婚・出産などのライフイベントを迎えるにあたり「本当にいまの職場で、仕事と出産・育児の両立ができるのだろうか? 」と不安を抱えているようでした。
どの世代の女性も、それぞれにモヤモヤを抱え働いていたのです。
その現実を知ったとき、疑問や違和感を持ちました。
ライフステージによって日常のサイクルが変化することが多い女性こそ、もっと働く場所や時間を自由に選べてもいいのでは?と。
そしてその想いはだんだんと、もっと女性一人ひとりが生き生きと働き続けられる社会をつくりたい!という目指したい社会像へと変わっていきました。
違和感や理想は膨らむものの、日々の仕事に追われる毎日。
そんな中、起こったのが東日本大震災でした。
ああ人生って、本当に突然終わってしまうこともあるんだ。
なんとなく、今日も明日も、当たり前のように続いていく気がしていたけれど、人生はいつ終わるかわからない。
その現実を突きつけられたとき「本当にやりたいことをやって後悔のないように生きたい」という想いが込み上げてきました。
女性が生き生きと働き続けられる社会をつくりたい。
ぼんやりと抱いていた「やりたいこと」を、今やろうと思えた瞬間でした。
会社を退職し、フリーランスとしてやっていく道を検討し始めました。
とはいえ、大手出版社という安定した企業を辞める不安もありました。
本当に生きていけるかな。
老後は大丈夫かな。
そんな不安に襲われるたび、自分で自分に問いかけました。
「結局、何を大事にして生きたいんだっけ?」すると答えは自然と出てきました。
これまで10年以上、メディアを通じて「伝える」仕事をしてきた。
次の10年・20年は、メディアを通じて見えた課題を、実際に「解決する」ことを仕事にしたい。
その決意は揺るがず、退職届を出し、自分が目指す社会をつくる道を選びました。
退職を決意した頃の田中さん。チャリティマラソンの事務局にて
退職してすぐはフリーランスのライター・編集者・キャリアアドバイザーとして活動を始めました。
フリーランスになって実感したことは、働く時間と場所の自由度の高さです。
どこで・いつ・誰と・どんな仕事をするか全て自分で決められる。
自己決定の幅の広さは、やりがいや達成感にもつながりました。
働きながら、「こういう自由度の高い働き方をしたい女性たちは、他にもいるんじゃないかな?」そんなことも感じていました。
フリーランスならではの良さを感じると同時に、女性たちが生き生きと働き続ける社会をつくりたいと掲げたビジョンに対して、具体的に何をしたらいいのか、なかなか見えてこない苦しさもありました。
悶々と考える数ヶ月が続きましたね。
2働き方の選択肢が広がり、人生が変わりました!
それでもなんとか糸口を見つけようと、知り合いにやりたいことを話したり、SNSで発信をしたり地道に動いていました。
すると友人から「同じようなことを言っている人がいるから、紹介してあげるよ」と連絡をもらいます。
そうして2人の女性と会う機会をいただきました。
実際に会って話してみると、お互いが描く働く女性への想いが一致。
意気投合し、3人で一緒に活動することになりました。
とはいえ、3人ともフリーランスや会社員として仕事をしながら、家事・育児もこなす日々。
その合間をぬって集まらなければならず、ミーティングは決まって朝の渋谷のカフェでした。
わずかな時間を捻出して活動をするのは大変でしたね。
でも苦労よりも仲間と助け合える心強さの方が大きかったです。
大人になっても仲間と本気になれるものがある。
青春を楽しんでいるような気分でした。
これが私のやりたかったことだ!と光が見え、道が拓けた感じがしましたね。とても充実した時間でした。
話し合いを重ねるうち、「時間と場所にとらわれない働き方ができる、フリーランスの仕事を女性に紹介するビジネスをしよう」と事業構想が固まります。
私自身、フリーランスを経験するなかで働き方の自由度に魅了されていた実体験もありました。
だからこそモヤモヤを抱える女性たちに「こんな働き方もあるよ!」と働き方の選択肢を広げる役割を担いたいと思ったんです。
そうして、3人が共同創業者として株式会社Warisを設立しました。
株式会社Warisの3人の共同創業者
立ち上げ当初は、ご登録いただく女性や企業がなかなか集まらず、コツコツと地道な努力が続きましたね。
いきなりたくさんの人にサービスを届けるのが難しいなら、まずは友人の友人を紹介してもらったり、前職でご縁があった企業からつながりを広げていったり、できることから積み重ねていきました。
「こんなサービスを始めたんですが、良かったらどうですか?」と一人ずつ声をかけ、ご登録者数や企業数を集めていきました。
そうした努力が実を結び、だんだんとご登録者数が増えていきました。
感謝の声も多く届くようになり、やりがいも実感するように。
Warisを利用する女性から、「働き方の選択肢が広がったことで、人生が変わりました!」と言葉をもらったときは、本当にうれしかったですね。
ご登録者様には、さまざまなライフステージの方がいらっしゃいます。
例えば、子育てのため時短勤務で働いていた方、ご両親の介護をされている方、旦那さんの海外転勤にあわせて会社を退職された方など。
たとえ会社員で、フルタイムで働けない環境にあっても、働き続けたい。
仕事を通じて、やりがいや社会とのつながりを得たい。
そんな想いを持つ意欲的な女性はたくさんいます。
そうした女性が、Warisを通じて自分のライフステージにあった働き方を実現することは、毎日を生き生きと過ごすための充実感につながっているんですね。
感謝の言葉をいただくたびに、私たちが行なっている活動の意義を実感できました。
3選択肢は多様。道は自分でつくっていける
現在は、株式会社Waris共同代表と一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会理事をしています。
Warisでは、「Live Your Life すべての人に、自分らしい人生を。」というビジョンを掲げ活動をしています。
これからは人生100年時代、先行き不透明な時代であることは否めません。
でもそんな時代だからこそ、自分らしいキャリアにチャレンジする全ての人を、事業を通じて応援していきたいと思っています。
そしてWarisの活動をするなかで出会った方々と一緒に立ち上げたのが、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会です。
「誰もが自律的なキャリアを築ける世の中へ」というビジョンを掲げ、フリーランスやパラレルキャリアなど、個人の名前でお仕事をしたい方々の支援活動をしています。
今は、「現状の働き方にモヤモヤ・悩みを抱えていても、変えていける」と、多くの女性たちにお伝えし続けたいと感じています。
選択肢は「会社員として働き続ける」だけではありません。
転職・独立の道を歩まれる方、会社員とフリーランスの兼業、フリーランスから法人化する方もいらっしゃいます。
本当に多様な選択肢があるんですよね。
その中から今の自分にとって、いいなと思える働き方を選ぶことが重要です。
まずは、選べるんだと知ることが大切だと思っています。
もちろん、わざわざ転職や独立をしなくても、上司や会社にアプローチすることで、働く環境を変えていくことも可能だと思うんです。
でももし、それが叶えられない。
この会社では自分らしさが発揮できない。
そう思うのであれば、転職や独立も一つの選択だと頭の隅に置いておいてほしいです。
置かれている環境でなんとかしなきゃ、と思うと苦しくなってしまうこともあるので。
選択肢は多様だし、道はいくらでも自分でつくっていける、選べる。
そのことを、働く女性にお伝えしたいですね。
これからは、フリーランスから起業家へとライフシフトする女性たちの支援や、女性リーダーを世の中にもっと増やす活動にも挑戦したいと思っています。
女性たちが20代・30代・40代・50代と、生き生きと働き続けられるような支援を、人生をかけてし続けたいです。
※掲載している情報は、記事執筆時点(2020年12月)のものです