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年齢に縛られず、やりたいことをやる。
見出したのは人の心を癒す自分の役割
【中国茶と癒やしの空間tea therapy Chaの香り主宰・北原弘子】

目次
  1. 50歳で決意したやりたいことをやる人生
  2. 自分ならでは、の役割を見出す
  3. そうなんだね、と受け止められる社会へ

人はどのようにして大切にしたい価値観に気づき、人生の軸を見つけるのか。各界で活躍する方の人生ストーリーから紐解きます。今回は、産業カウンセラーをしながら中国茶と癒やしの空間「tea therapy Chaの香り」を主宰する北原弘子さんをご紹介。

50歳で会社を早期退職し、やりたいことをやろうと切り拓いてきた第二の人生。産業カウンセラー・お茶会の主宰と新しい領域へチャレンジし続ける背景には、「私たちの世代だからこそ、なんでも挑戦できる」という想いがあったといいます。その背景とは?お話を伺いました。

150歳で決意したやりたいことをやる人生

戦後10年の昭和30年に生まれました。
親族には戦争未亡人の方もいて、女性も働き続けるのが当たり前な環境で育ちました。
小学校時代からなんとなく、福祉への関心がありましたね。
難聴学級の先生がにこやかに生徒と接している様子が印象的だったり、近所にあった精神科の看板を見て「なんだろう?」と疑問に思ったり。
ただそれほど気には留めず、学校生活を過ごしていました。

社会に出てからは、一度も転職をせず同じ会社で働き続けました。
今思うと、女性も働きやすい環境でしたし、一つの会社で勤め上げるのが当たり前な時代でした。
でも好奇心は旺盛だったので、仕事とは別に、外部の講座を受講しに行くこともしばしば。
特に興味を持ったのは「内面から美しくなるメイク講座」など、自分らしく健やかに生きるためにはといったテーマでした。

ただ家族もいたため、仕事をしながら講座に出るのは一苦労でした。
講座を受けに行く日は、朝早く起きて、家族の晩ご飯用にカレーを用意してから出勤します。
忙しく大変でしたが、それ以上に学びたい気持ちが大きかったですね。

50歳を迎えた年、勤めていた会社から早期退職者をつのるという情報を耳にしました。
それと同時に、友人から「産業カウンセラー」の資格が取れる講座がある、と教えてもらったんです。
幼少期から福祉へ興味があったこと、内面から美しくなるための講座に参加していたことなどちょっとした積み重ねが脳裏に残っていたのかもしれません。
心理学への興味と紐付き、産業カウンセラーについて学んでみたい気持ちが湧いてきました。

これを機に会社を辞め、やりたいことに挑戦しよう。
そう一度は決めたものの、やはり18歳から勤めてきた会社を辞めることへの抵抗は大きかったです。
本当に悩みましたね。
わらにもすがる思いで占い師に相談したい…と思うほど。
やってみたい気持ちと、会社を辞める不安との間で揺れ続けました。
どうしようかと葛藤する中、夫に気持ちを打ち明け相談しました。
すると「子どもたちを大学に行かせるお金はあるよ」と、背中を押す一言をかけてくれました。

そうか、これからたくさん稼いで暮らす必要もない年齢なら、別に失敗してもいいじゃない。
私たちの年齢だからこそ、なんだって挑戦できるんじゃないか。

そんな前向きな気持ちが心に広がっていきました。
そもそも、どんなことでもまずはやってみないと、それが本当にやりたいことなのかさえわからない。
やってみて違うと思ったら潔く辞めて、別のことにチャレンジしたっていい。

そんな「辞める勇気」を持つと、挑戦への一歩を軽やかに踏み出せました。
50歳の節目を迎えた年、会社へ辞表を出して新しい世界へ踏み出すことに決めました。

2自分ならでは、の役割を見出す

会社を退職した後、さっそく産業カウンセラーの講座を受講し始めました。
でもいざ受講をしてみると、仕事にするにはハードルが高いかもしれない、という発見がありました。
クライアント(相談者)から「死にたい…」などのヘビーな相談を受けると、自分もネガティブな感情に引っ張られ苦しくなってしまうと思ったんです。
そのため資格取得後も、なかなか活動には結び付けられず。
せっかくお金を払ったのに…と、モヤモヤを抱くこともありました。

その頃、「世界のお茶マイスター」という資格があることをネットで見かけました。
「世界」という言葉にピンっと惹かれ、受講してみることに。
世界中のお茶の知識を学べ楽しかったですね。
健康に良いから、というよりは純粋に香りや味に惹かれて楽しんでいました。
資格を取得後、せっかくならと友人を自宅に招いて中国茶をメインとしたお茶会を計画しました。

準備のためと中国茶専門店を訪れ、店員さんに相談をしながら道具を選びます。
ところが店員さんの話を聞けば聞くほど、いかに自分が中国茶について知識不足かを思い知らされました。
率直に、まだまだ学びが足りないと感じましたね。
これまでは世界中のお茶について広く浅く学んできました。
今度はより狭く深く知識を身につけたいと意欲が湧き、そこからさらに中国茶を専門的に学べる講座を受講することにしました。
そうして納得のいく準備が整ったところで、自宅に3〜4人を招き、定期的にお茶会を開く活動を始めました。

2011年2月、自宅サロンでのお茶会の様子

2011年2月、自宅サロンでのお茶会の様子

お茶会を主催するとき最も大事にしているのは、参加者の心を癒す場づくりです。
もちろんお茶の説明や知識についても触れますが、それ以上に心理的に安心できる空間づくりを意識しました。
私自身、初めての場所や初対面の方と話すときに緊張するタイプなので、参加者の方には安心して楽しんでもらいたい気持ちがありました。

そこで役立ったのは、産業カウンセラーの資格取得のために培った知識とスキルです。
丁寧に自己紹介の時間を設けたり、悩みを抱えている様子でも根掘り葉掘り聞かず、たわいもない会話をすることで疲れを癒してもらったり。
心理療法のエッセンスを取り入れながらお茶会を催すと、参加者の緊張もだんだんとほぐれ、最後にはおしゃべりの絶えない時間を過ごしてもらえました。
日常の悩みを一旦横に置いてもらい、心を軽くして帰ってもらえたときはうれしいですね。

自然と会話を楽しむなかで、重かった気持ちが晴れやかになってくれたら。
そんな想いを込めてお茶会を続けました。
回数を重ねるにつれ、徐々に自分の役割も見出せるようになっていきました。
産業カウンセラーとして深刻な悩みを受け止めるのが苦手な私でも、日常生活のモヤモヤに寄り添いサポートすることはできるんじゃないか、と気づいたんです。

ただお茶の知識を教えるだけではない、産業カウンセラーの資格を持った「わたしならではの、お茶会」をつくることができました。

3そうなんだね、と受け止められる社会へ

現在は、中国茶と癒やしの空間「tea therapy Chaの香り」を主宰しながら、みなとみらい心の未病プロジェクト日本産業カウンセラー神奈川支部にも所属しています。
周囲の人が少しでも、気持ちよく幸せに暮らせるお手伝いができたら──。

その想いが、今までもこれからも自分を動かす原動力です。
お茶会の参加者から日常の悩みを聞くと、やっぱり力になりたい!と思うんですよね。

見守る、話を聞く、ことはもちろん。
育児の悩みなど、専門的な知識が必要と感じた場合は、講座へ足を運ぶことも怠りません。
役に立てたらいいな、という想いがあるからこそ学び続ける姿勢はいつまでも変わらないですね。

また社会全体としても、互いを尊重し認め合える世界へ変化していったらいいなと思います。
LGBTの講座を受講したとき、こんな言葉をかけてもらったんです。
「理解できなくてもいい。ただ、そうなんだね。と言ってくれればそれでいい」。
心に残りました。
自分とは違う部分・理解しきれない部分も含めてその人自身だよね、と許容する大切さに気づかせてくれた言葉です。

誰だって拒絶されたら傷つきますし、逆に「そうなんだね」と受け止めてもらえれば安心します。
私自身も不安や心配ごとを抱きやすいタイプなので、人が抱える不安やモヤモヤした気持ちには共感します。
だからこそ自分が催すお茶会では、参加者の気持ちに寄り添い、受け止め認める場であり続けたいですね。

これからも、年齢に縛られずやりたいことには意欲的に挑戦していきます。
一度は諦めた産業カウンセラーの仕事も、ご縁あって仕事を紹介していただき再チャレンジする機会に恵まれました。
いくつになっても人の心を癒す活動を続けていきたいと思っています。

現在の北原さん、新宿御苑にて

現在の北原さん、新宿御苑にて

※掲載している情報は、記事執筆時点(2020年12月)のものです

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