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妊活で知った根拠のない情報の多さ。
正しい情報で、妊活をサポートしたい
【妊活支援サービスを展開・石川勇介】

目次
  1. たくさんの人の喜ぶ顔が見たくて
  2. 知ったからには見て見ぬ振りはできない
  3. 人の一生に寄り添える存在に

人はどのようにして大切にしたい価値観に気づき、人生の軸を見つけるのか。各界で活躍する方の人生ストーリーから紐解きます。今回は、妊活支援サービスを運営する株式会社ファミワンの代表・石川勇介さんをご紹介。

30歳の時に結婚した石川さん。子どもに恵まれず、妊活に取り組む中で、根拠のない情報が多いことに驚きを覚えます。現在は妊活支援サービスを展開されていますが、今後はそれだけでなく「ゆりかごから墓場まで」人の一生に寄り添えるサービスをつくりたいとのことです。それはなぜなのか。お話を伺いました。

1たくさんの人の喜ぶ顔が見たくて

大学卒業後、デリバリーサービスを展開する飲食系のベンチャー企業に就職しました。
学生時代にやっていた焼き鳥屋さんでのアルバイトで、お客さんの笑顔を見ることに喜びを感じていて、お客さんと直接やり取りできる仕事がしたいと思ったんです。

ところが、店舗スタッフから昇格して店長になると、徐々にお客さんとやり取りする時間が減っていきました。
物足りなさを感じる一方で、自分の想いを社員やスタッフを通じて間接的にお客さまに届けるのも大切だと思うようになりました。
間接的なら、今の仕事よりも多くの人が喜んでくれる仕事があるのではと思い、転職活動を始めました。

リサーチを重ねる中で「システム」という言葉にたどり着きました。
企業や組織のシステム改善を提案して、業務の効率化を図ればより多くの人が喜んでくれるのではないかと思ったんです。
私はベンチャー企業を辞め、システム系のコンサルタント会社に転職しました。

仕事をする中で経営層や従業員など多くの人が喜んでくれました。
サービスやシステムを改善すると、こんなに多くの人が喜んでくれるのかと驚きましたね。

システム改善の提案を進めていくうちに、自分もシステムのようなサービスづくりをしてみたい気持ちが強くなっていきました。
自分がつくったサービスでもっと多くの人が喜んでくれたら、こんなに幸せなことはありません。

また、その中でも、もっとも人の役に立ち、人から感謝されるのは、命や健康など人生の根幹に関わる仕事なのではとも思いました。
そこで、医療従事者向けの情報サイトなどを運営している医療系のIT企業に、新規事業開発担当として転職しました。

2知ったからには見て見ぬ振りはできない

30歳のときに結婚しました。
自然の流れで子どもができると思っていたのですが、半年たっても奥さんに妊娠の兆候がありませんでした。
これは、思っていたより簡単なことではないのかもしれないと思い、妊娠するための情報を集めました。

奥さんとお子さんと公園にて

奥さんとお子さんと公園にて

ネット上には妊活に関する情報があふれかえっていて、どれが正しい情報か判断できませんでした。
同じ頃、ヘルスケア関連の情報サイトで信ぴょう性に欠ける記事が公開されていて、社会問題になっていたこともあり、私は一つひとつの情報の科学的根拠などを丁寧に確認していきました。

すると、世の中に出回っている情報のなかには、根拠がないものも多かったんです。
驚きましたね。

その中から私たちに合った情報をきちんと選び、医療機関への通院などの妊活をした結果、妻は妊娠、子どもを産むことができました。

妊活をした経験から、ネット上には根拠のない妊活情報があふれていることを知りました。
このままだと、妊活に取り組む夫婦が間違った情報をもとに遠回りしてしまう可能性がある。
これはなんとかしなければと思いました。

会社の新規事業として妊活サービスを提案できないか考えてみたこともあります。
でも、マネタイズなどを考える中で、難しいなと感じたんです。

ただ、妊活で苦しむ人をサポートしていきたい想いはどんどん強くなりました。
問題を知ってしまったからには、見て見ぬ振りはできませんでした。

調べてみると、世の中には妊活という課題を充分にサポートできているサービスはない。
それなら会社を飛び出して、自分がゼロから立ち上げるしかない。
2015年、私は会社を辞めて「株式会社ファミワン」を立ち上げました。

まず一つ目のサービスとして、10ヶ月の期間を区切り、夫婦で妊活に向き合うサポートをするサービスをつくりました。
ただ、妊活には正解がないためパートナーとうまく話し合うことができず、時間だけが過ぎてしまうケースが非常に多かったです。

10ヶ月で妊娠しなければ全額返金する約束でしたが、その背景には、仮に子どもを授からなかったとしても、それをもって次のステップに進んで欲しいという願いがありました。
そのお金は、検査の受診や体外受精の費用に使ってもいいですし、妊活から少し離れるための気分転換に使ってもいい。
夫婦で向き合う期間を具体的に区切って、2人の人生を進めるための設計でした。

誰であっても「こうすれば妊娠できる」とは言い切れません。
それはみなさん分かってはいつつも、「必ず妊娠させる自信があるから、成果報酬のような全額返金制度をとっているんだろう」と思ってやってくる夫婦もいました。

どうしたら私たちのサービスの価値を正しく伝えられるのか、妊活・不妊治療の経験がある夫婦からたくさん聞き取りを行いました。
ヒアリングをもとにたくさんのサービスをつくっては提供していきました。
正解がない課題なので、あらゆる角度でアプローチを続けてみたんです。

いくつかのサービスを提供する中で、妊活に取り組む人の悩みは大きく分けて「情報があふれすぎていて、何から始めたらいいかわからない」「誰にも相談できない。相談しようと思わない」「周囲から理解を得られず、孤独感やストレスを抱えてしまう」の3つあることがわかりました。
こうした悩みに対し、不妊症看護認定看護師を中心に妊活・不妊の専門家がLINE上で適宜情報提供やアドバイスなど、メッセージ送信を行うサービスを2018年に始めました。

3人の一生に寄り添える存在に

現在はLINEを活用した妊活コンシェルジュサービス「ファミワン」を主に展開しています。
サービス開始2年でユーザーは2万人を超えています。

石川さん、ファミワンのロゴとともに

石川さん、ファミワンのロゴとともに

企業への福利厚生として従業員向けの妊活支援も行っており、セミナーや研修を提供することもあります。
妊活当事者向けの支援だけではなく、妊活に対する意識を変える取り組みとして管理職や若手社員向けに啓発活動もしています。

自治体との連携も進めています。
近年は少子化対策として妊活へのサポートに取り組む自治体が増えていて、2020年には神奈川県横須賀市が「ファミワン」を導入してくれました。

起業当初は妊活サービスがほとんどなく、かつ何が正解かわからなかったので苦労しました。
それでも根気よく続けることができたのは、妊活をした夫婦にヒアリングする度に課題の深刻さを目の当たりにしたからです。
いくら妊活しても子どもができない、妊娠しても流産を繰り返す、夫婦仲が悪くなって離婚してしまう。
ここで自分達「ファミワン」が諦めたら、誰も妊活の課題に取り組まなくなるんじゃないかという危機感が常にありましたね。
まだ一歩ずつ進み始めたばかりなので、これからも妊活支援を通して社会に貢献していきたいです。

事業を展開していて、ファミワンのサービスは妊活以外の分野に応用できると感じるようにもなりました。
子どもを産んだ後の産後うつ、生理、更年期など、心身の悩みを抱える女性は多いです。

こうした課題にも根拠のない情報があふれています。

今後は妊活以外の情報も提供できる仕組みをつくり、人の人生に寄り添える存在になっていきたいです。
ゆりかごから墓場まで、人の一生をファミワンが支えていけるようになると良いなと思います。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2020年12月)のものです

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