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育休復帰で感じた時短勤務の難しさ。
時間ではなく、成果で評価される社会を
【子育てママ・パパの転職支援サービスを運営・松栄友希】

目次
  1. 育休復帰しても減らない業務量
  2. 私だからこそ…子育てママ支援の会社立ち上げ
  3. 子育てママにもっと活躍の場を

人はどのようにして大切にしたい価値観に気づき、人生の軸を見つけるのか。各界で活躍する方の人生ストーリーから紐解きます。今回は、子育てママ・パパの転職支援サービスを運営するXTalent株式会社で執行役員を務める松栄友希さんをご紹介。

2人の子どもを育てながら時短勤務で働いている松栄さん。ご自身が時短勤務の難しさや課題を感じながら働いていた経験から、子育てママがもっと活躍できる社会をつくるべく、子育てママ・パパの転職支援サービスを始めました。子育てママ・パパの働き方に対する思いとは。お話を伺いました。

1育休復帰しても減らない業務量

大学卒業後、何度かの転職を経て、IT企業で新規サービス立ち上げのディレクターになりました。
仕事は自己成長につながると思っていたし、ステージが上がっていく感覚が楽しくて生きがいでした。
毎日夜遅くまで働いていましたね。

結婚して30歳で出産し、育休に入りました。
育休後は、新規事業立ち上げを担当するプロダクトマネージャー(事業開発責任者)として職場に復帰。
子育ての時間を取るために、16時半には退社する時短勤務にしてもらいました。
ただ、私の業務量は育休前と変わりませんでした。
時短ママでプロダクトマネージャーをする人材がそれまでいなかったので、会社も対応のしようがなかったんです。
仕事が終わらず、家に帰ってから子どもを寝かしつけて夜中に仕事をすることもありましたね。

睡眠時間を削って子育てと仕事の両立を図るなか、復帰してから3ヶ月で体調を崩してしまいました。
このままこの生活を続けていたら本当に体を壊してしまうし、職場にも家族にも迷惑をかけてしまう。
私は時短勤務でいかに仕事の成果を出すか考えました。

考え抜いた末、「プロダクトマネージャーは●●でなければならない」という常識や固定概念にとらわれて、自分で自分を苦しめてしまっているのではと思いました。
そこで、自分が考えている「●●でなければならない」を言語化して、ひとつずつ取り払う作業をしました。
作業をしながら私は「どんな仕事がしたいのか」よりも「何をつくりたいか、何を成し遂げたいのか」を大事にしていると気づきました。

自分のやりたいことがはっきり見えたところで、プロダクトマネージャーとしての裁量権を、部下に少しずつ移譲していくことにしました。
これまでは、全ての開発内容・進捗を把握し、次に何をすべきか私が指示を出していました。
しかし、そのやり方を変え、ある程度の判断はチームメンバーたちに任せるようにしたんです。
その結果、メンバー各自の自走レベルが上がり物事が早く進むようになりました。

当初は戸惑いもありましたが、トライアンドエラーを繰り返し、限られた時間でもちゃんと成果を出せるようになりました。
働く時間ではなく、働き方の工夫が大事なんだと思えるようになりましたね。

2私だからこそ…子育てママ支援の会社立ち上げ

数年たって2人目の子どもを出産し、再び育休に。
子育てをしながら、私は今後どんなキャリア・人生を歩んでいくのだろうと考える時間がありました。
同じ会社に8年いて新しいサービスを立ち上げるのは得意だけど、それ以外の分野での視野や物の見方は狭いのかもしれないとなんとなく感じました。

縁あって知り合った男性から連絡をもらい、カフェでお茶をする機会がありました。
男性は私に、子育てママの転職支援サービスを立ち上げるので、一緒に会社をつくらないかと言ったんです。
なぜそのサービスを立ち上げるのか聞くと、男性は「中小企業に勤めている妻が育休から会社に復帰し、難しい選択を迫られた。時短にすると給与が大幅に下がるし、フルタイムで頑張っても評価は高くない。共働きで子育てしながら普通の生活を送るのはなんて難しいのかと」と言いました。
男性はそのことに憤りを感じ、この社会課題を解決するために起業することにしたと言うんです。

その上で私のような、子育てママでありながら、新規事業の責任者ができる人となら、この社会課題を一緒に解決できると思ったとのことでした。

XTalent代表取締役、上原さんと

XTalent代表取締役、上原さんと

話を聞いて、なんて面白そうなんだろうと思いました。
私自身、時短勤務で働くことに多くの課題を感じていました。
仕事をするための下調べの時間もつくれないし、メンバーとのコミュニケーションも足りない。
夕方以降も仕事をしたいけど、子どもを保育園に迎えに行かないといけない。
このサービスを通じて私と同じような子育てママのサポートができるかもと思いました。

誘ってくれた男性の人柄にも好感を覚えました。
奥さんがきっかけで起業するなんて誠実だなと思ったんです。
この人とだったら、子育てママの働く環境をもっと良くすることができるかもしれない。
私は8年近くいた会社を辞め、「XTalent(クロスタレント)株式会社」の立ち上げメンバーとして参加しました。

3子育てママにもっと活躍の場を

XTalentは子育てママ・パパの転職支援サービス「withwork」を運営しています。
私は執行役員を務めながら時短勤務で働いていて、企業側の求人と市場のニーズを把握し、子育てママ・パパのスキルにマッチした求人の案内と業務改善をメインで担当しています。

会社を立ち上げてから、改めて子育てママが働くことへの社会課題は根深いなと感じています。

例えば仕事や勤務時間に制限があるからといって、裁量のある仕事を任せられないと考えている経営者もいます。
確かに、子育て中はこれまでより仕事に使える時間は減るのかもしれませんが、仕事の能力自体が下がるわけではありません。
環境さえあれば、十分に成果を出すことができます。
時代が変わって、IT化も進んでいるのだから、環境次第でいくらでも仕事はできて成果を出すことは可能です。
働いた時間よりもスキルやパフォーマンスで評価される世の中にしていけたら、子育てママにもっと活躍の場が増えると思います。

現在は子育てパパの転職支援もしています。
男性が育休を取ることへの理解もまだまだ浸透していないため、育休を取ったパパは組織の中で白い目で見られたり、出世街道から外れたりすることもあります。
子育てパパに対する価値観も変えていきたいですね。

XTalentメンバーと迎えた1周年記念日

XTalentメンバーと迎えた1周年記念日

社会の価値観を変えるには会社の経営陣の価値観を変えることも大切だと思っています。
そのためのアプローチとして、IT業界の最前線で実績をあげた優秀な女性リーダーを社外取締役・アドバイザーとして中小企業向けに紹介するサービスを2020年10月に始めました。

働き方改革などで子育てママの働く環境は整いつつありますが、大小さまざまな企業で子育てと仕事の両立に課題を抱えている女性はたくさんいます。
経営層に優秀な女性が入ることで、時代の変化を経営層の方々に感じてもらいたいですし、経営陣に女性が参画すれば、新しい価値観を受け入れてもらいやすいと思うんです。

個人としては、人が成長するプロセスを突き詰めたいです。
会社にはスキルを教える土台はありますが、心の成長を教える土台がないと感じています。
私は自分と向き合って働く環境をつくっていきましたが、それができない人もいます。
自分の生きている意味を考えて追求できる社会になれば、幸せに働く環境も増えると思っています。

自分自身に向き合って、何が人生で大切なのか、大切なものを守りながら生きていくにはどうしたらいいのか。
みんなが考えられる社会になるよう、子育てママの支援を通じてアプローチしていきたいです。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2020年11月)のものです

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