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震災をきっかけに、生き方を考え直す。
今好きなことを全力でやり続ける人生に
【会社員/ライター/「劇団雌猫」メンバー・ひらりさ】

目次
  1. 弁護士を目指し勉強の日々…震災で揺れた気持ち
  2. 趣味を形に。同人サークル「劇団雌猫」結成
  3. 好きなことを全力でやり続ける

人はどのようにして大切にしたい価値観に気づき、人生の軸を見つけるのか。各界で活躍する方の人生ストーリーから紐解きます。今回は、平成元年生まれのオタク女性4人のサークル「劇団雌猫」メンバー・ひらりささんをご紹介。

弁護士を目指して勉強を重ねていたひらりささん。予備校の模試中に起きた東日本大震災をきっかけに、思い描いていた将来像が揺らぎ始めます。ひらりささんが会社員、ライター、劇団雌猫と三足のわらじをはくようになった背景には何があるのか。お話を伺いました。

1弁護士を目指し勉強の日々…震災で揺れた気持ち

小さいときから漫画を読むのが好きでした。
「美少女戦士セーラームーン」のアニメにハマったのを機に、お小遣いで少女漫画雑誌を買うようになり、あらゆるジャンルの漫画を夢中になって読んでいましたね。

中学生になってからは、友達と一緒にコミックマーケットに足を運びました。
同人誌を買って楽しんだり、自らも創作活動をしたりしていました。

好きなものには夢中になる一方、優柔不断な性格で、お昼ご飯を決めるのにすら時間がかかるところもありました。
ご飯を買いにコンビニに行っても、もっと良いのがあるかもしれないと、別のコンビニをハシゴし、4軒のコンビニを回ったあげく、最初のコンビニまで戻ってご飯を買うなんてこともありましたね(笑)。

母親から「手に職をつけておいたほうがいいよ」と言われていたので、コツコツ勉強はしていました。
勉強をして資格を取って将来の選択肢の幅を広げるのが良いことだ、と思っていましたね。
そんな中で、親の離婚調停・訴訟に巻き込まれたのを機に身近になった、弁護士の仕事に興味を持ちました。

大学は法学部に入り、司法試験に向けて勉強を続けていました。
しかし、学年を経るごとに焦りが生まれました。
大学では息を吸うようにたくさん勉強している人が大勢いて、「あの人の方がもっと良い成績だった」と落ち込むことが増えたんです。

本当にその仕事に就きたかったら、実力が上の人がいようと頑張れるはず。
私の場合は、本当は試験で良い点を取って褒められたかっただけなのかもしれない。

そんな理由で一生頑張り続けられるのか?と考えるようになりました。

葛藤を抱えたまま、大学3年生になり就職活動の時期を迎えました。
法科大学院の試験勉強をしつつ、本や漫画が好きなので出版社の説明会に行きました。
1~2社エントリーをしてみましたが、書類選考で落ちましたね。
ろくに就活準備をしてなかったので、当然です。

将来について見通しが持てず、モヤモヤしたまま予備校で模試を受けていたとき、東日本大震災が起きました。

これからどうなるのか心配で、不安でたまらなくなりました。
早く帰りたいなと思いながら周りを見ると、次の試験に備えて勉強している人がいたんです。
驚きましたね。
この人はなんとしてでも弁護士になりたくて頑張っている。
私はここまでして弁護士になりたいわけではないなと、改めて思いました。

震災を経験して、世の中に確実なものは存在しない。
今日死んでしまう可能性があるなら、一日も早く社会に出たほうがいい
と思うようになりました。

2趣味を形に。同人サークル「劇団雌猫」結成

しばらく気持ちが揺れる日々を過ごしていましたが、せっかくこれまで勉強したのだからと、法科大学院合格に向けた試験勉強は続けました。

2012年12月、無事に試験をパスし、合格通知をいただきました。
でも、どこか大学院に行きたくないと思う自分もいました。
やはり社会に出て働いたほうがいいのかな…。
大学4年の冬なのですでに就職活動は終わっています。
どうしようかと迷っていたとき、ウェブメディアを運営するベンチャー企業がインターンを募集しているのを見つけ、連絡してみることに。
ちょうど人手不足だったのもあり、「いま大学4年なの?じゃあうち来たら?」とほぼ面接なしで社員に誘われました。

「こんな簡単に決まるものなの?」と驚きましたが、悩んだ末、せっかくのチャンスだから挑戦してみようと、就職する決断を下しました。
大学卒業後、早く社会に出たほうがいいという気持ちと、これまでやってきた勉強がムダになってしまうのが嫌だなという気持ちとの板挟みからようやく解放された瞬間でした。
とはいえ事前準備なく入社してしまったので、その後は何度もミスをし、一人前になるまでは大変でしたね(笑)。

ベンチャー企業に就職し、ウェブメディアの編集を初めて3年ほどたった頃、もっと仕事の幅を広げたくなって、IT系ソーシャルゲーム会社にプランナーとして転職しました。
本業で編集をしなくなった分、自分の創作物を外に発信したいと思うようになり、ライター活動を始めました。

学生のときから、漫画やアニメの感想をブログやTwitterで発信していて、就職してからも続けていました。
発信を続けているうちに自分と同い年のオタク女子たちと仲良くなり、コンサートやミュージカルを一緒に見に行くようになりました。

その中でも、私を含めた平成元年生まれのオタク女子4人で遊ぶ機会が増えていきましたね。
ある日、「結局、オタ活にいくら使ってるの?」とお金の話になったことがありました。
仲が良い人同士でもなかなか面と向かって話せるテーマではありませんし、ジャンルによって違いがあります。
そこで、「お金」を軸に一人ひとりのオタク活動の話を聞いてみたい、というアイディアが生まれました。

早速、4人のLINEグループから名前を取り、「劇団雌猫」という同人サークルを結成。
匿名でエピソードを集め、同人誌作成に取りかかりました。

寄せられた話は面白かったです。
オタクの視点でつづられた文章が形に残るのっていいなと思いました。

編集作業を経て、2016年、いろいろなジャンルに愛情とお金を注ぐオタク女性たちの想いをつづった同人誌「悪友 vol.1」を刊行しました。
本はネットを中心に話題となり、2017年8月には「浪費図鑑」として出版社からも書籍化されました。
趣味の世界を突き詰めた本が、たくさんの人の手に渡るのがうれしかったですね。

同じ頃、前職を退職した後に始めたライター活動も忙しくなっていきました。
インタビュー記事を執筆したり、私の体験や取材にもとづくコラムやエッセイを書いたりすることも始めました。

3好きなことを全力でやり続ける

現在はニュースアプリを扱うIT系企業で働きながら、兼業でライター活動を、趣味で劇団雌猫での創作活動を行っています。
本業も良い環境で働けていて、ライター業も好きなことだけやれている。
締め切りが重なると「なぜこんなことを…」と思うときもありますが、案件を選ぶ自由はかなりありますし、理想の働き方ができていると思います。

劇団雌猫としてはこれまでに同人誌を7冊作っています。
2020年秋には劇団雌猫で作った『だから私はメイクする』がテレビドラマとして放送されました。
たくさんの人に協力してもらって出来上がった同人誌が、マンガになり、ドラマになったのは、感慨深いですね。

今後は、今まで生きてきた中で出会わなかった分野を勉強したいです。
30歳を過ぎて、勉強ができることへの喜びを感じるようになりました。
ある程度社会で働いてみたからこそ、アウトプットよりもインプットの時間をもっと取って、日々の経験だけでは獲得できない知識や視野を得たいと思っています。
人文科学などの学術書にもチャレンジしたいと思っていますが、今のところは英語の勉強を頑張っています。
将来は海外の著名人の取材や同人誌の海外出版を実現させたいですね。

震災を経て、「将来のために何かをやる」というスタンスから、「今やりたいことに全力で取り組む」というスタンスに切り替わりました。
これからも好きなことを全力でやり続け、情熱を傾けて生きていこうと思います。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2020年11月)のものです

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