シェアする
Twitterでシェア Facebookでシェア

保育業界をぶっ壊すくらいの気持ちで。
理想の保育の実現に向けてアップデートを促す
【保育士YouTuber・てぃ先生】

目次
  1. 給与だけで選んだ保育園は「失敗した」
  2. 保育業界サイコー!Twitterで発信
  3. 子どもたちのために「てぃ先生」をまっとうする

人はどのようにして大切にしたい価値観に気づき、人生の軸を見つけるのか。各界で活躍する方の人生ストーリーから紐解きます。今回は、保育士でYouTuberのてぃ先生をご紹介。

20歳で保育士になり、保育士や保育業界の明るい話題を発信しようと、YouTubeやTwitterなどSNSでの発信も行っています。保育業界の価値観をアップデートしないといけないと語るてぃ先生。その考えに至った経緯とは。お話を伺いました。

1給与だけで選んだ保育園は「失敗した」

両親と祖父母、2歳年下の妹に囲まれて育ちました。
両親は共働きだったので、妹と遊ぶ時間が多かったですね。
友達の家に遊びに行ったとき、友達と遊ぶよりも友達の弟や妹と遊ぶ方が楽しかったです。

高校2年生のとき、将来の進路を考えました。
周りの友達は「とりあえず大学に行くわ」と、「とりあえず」で大学を志望する人が多かったんです。
自分の興味の湧かない学校に行ってもモチベーションが続かないし、何より時間の無駄だと思いましたね。

興味のある分野を考えたとき、小さいときから子どもと遊ぶのが好きだったのを思い出しました。
そこで、子どもと関わり、かつ専門的な知識が必要な仕事をしたいと思いました。
サラリーマンの父親を見ていて、あまり楽しくなさそうで、専門職に憧れていたこともあります。
考えた末に浮かんだのは、子どもと直接触れあえる保育士の仕事でした。
高校卒業後、保育士の資格を取るべく専門学校に入りました。

保育士の仕事は、子どもと遊ぶのがメインだと思っていました。
でも、学校の授業や保育園での実習の中で、子どもの成長を考えながら、適切な教育プログラムを作ることがメインだと知りました。
狙いや目標を定め、それを達成するために遊びを考えるんです。
公園で走り回る遊び一つ取っても、脚力やバランス感覚、競争心を養うためにしています。
その考えがとても面白いなと思いました。

就職先は、学校に来ている求人票で最も給与が高い保育園を選びました。
保育園を調べたり、見学に行っても保育園のカラーが見えなかったので、少しでも自分の人生が潤うようにお金や福利厚生面で選んだんです。

就職先の保育園は、一日の半分以上働くのが当たり前でした。
早く帰りたいな、休みたいなと思っても、長時間働くのが当たり前だという空気だったので言い出せず、休憩もままなりませんでした。
残業代もありません。
就職前にいくつかアルバイトをしましたが、休憩時間はあったし、就業時間を延長すれば賃金が発生しました。
いくら子どものためとはいえ、長時間労働で休憩も取れない、いわばブラック体質な状況に「就職先を失敗した。給料で選ぶもんじゃないな」と思いましたね。

仕事も非効率的だと思いました。
行事で使う飾り付けは保育士が手作りしないといけないし、保育園からのお便りや掲示物は手書き・手作りが当たり前でした。
園長や同僚の先生にパソコンの導入など業務改善を提案しましたが、何一つ変わりませんでした。
もっといい環境の保育園で働きたいと思い、1年で退職しました。

2保育業界サイコー!Twitterで発信

次は給与だけで決めるのではなく、職場環境も重視しようと多くの保育園を見学し、ここならいいかもと感じたところに転職しました。
しかし、実際に就職してみると、前の職場と労働環境は変わりませんでした。
改善提案をしても、「そんな楽なことをしている保育園はない」「手書きのほうが子どもや親たちに愛情が伝わる」と、ほとんどが却下されました。

僕は苦労を美徳とする保育業界の考え方に問題があるんだと気づきました。
保育業界にいる人は効率化して楽をすることが悪だと捉える風潮があります。
でも保育士が休みなく働いた結果、疲れ果ててしまい、子どもたちと笑顔で向き合う余力が残らない…。
これは本末転倒だと思いましたね。
子どもたちのためにも、保育士が笑顔で働ける環境を作らなければと決意しました。

しかし、保育に関するニュースは「保育士の給料が安い」「休みがない」などネガティブなものばかり。
保育士が保育の様子をポジティブに発信することもまずありません。
保育業界を変えるためにも、保育士が「保育サイコー!」と言えるようなポジティブコンテンツがあってもいいのではと思ったんです。
26歳のとき、園児とのほっこりしたエピソードや子育てに関する情報をTwitterで発信し始めました。

Twitterには多くの反響がありました。
「子育ては大変だけど、てぃ先生のツイートを見てイライラが減りました」という保護者のコメントや、「うちの保育園の労働環境はきついけど、てぃ先生から勇気をもらいました」という感想をいただきました。
発信をするたび、フォロワーもどんどん増えていきました。
保育や子育てに関するポジティブな情報が思った以上に求められていると驚きましたね。
ツイートをまとめた書籍や漫画も売り出されました。
もっと自分ができることをして、保育士さんや保護者に喜んでもらおうと思いましたね。

反響が広がる中、保育園からの講演依頼も増えていきました。
僕が先生たちの前で話をして、モチベーションが上がるならと、時間のある限り講演に行きました。
講演会を繰り返すうちに、「定期的にてぃ先生に来てもらって、保育園の課題を解決してもらえないか」という依頼を頂くようになりました。
保育園の課題を見つけて解決する保育園コンサルティングの仕事も始めました。

いろいろな保育園の話を聞いていくと、労働環境や人間関係など、似たような課題が多いことに気づきました。
保育士は、保育に関してそれぞれの正解を持っています。
例えばランチの時間、ご飯を残している園児がいたとき、「残すなんてダメ。食べなさい」という先生と、「今は嫌いなものを無理して食べなくてもいい」という先生が同じクラスにいるんです。
先生たちは「あなたの考えはおかしい」と非難しあい、人間関係が悪くなります。

こうしたことは日常茶飯事で、どこの保育園にもあるんだなと感じましたし、子どもも大事ですが、まずは働く保育士の幸せを考えるべきだと思いました。
SNSでの発信も大切ですが、業界をぶっ壊すつもりで保育園自体もよくしていかないとだめだと感じましたね。

3子どもたちのために「てぃ先生」をまっとうする

現在は関東圏内の保育園に勤めながら、講演活動や保育園コンサルティングの他、SNSでの発信を続けています。

Twitterで発信した当初は、自分の周りのコミュニティの人に自分の思いが届けばいいなと思っていました。
しかしフォロワーが増えるにつれ、一人の保育士ではなく、「てぃ先生」として、多くの人のお役に立てるような活動を心がけるようになりました。
保育士や業界の垣根を越え、子育てをしているパパ・ママにも役立つ知識を提供していきたいです。

Twitterのフォロワーは50万人を超えました。
最近はYouTubeの配信に力を入れています。
忙しい現代のパパ・ママは、育児本をじっくり読む時間がなかなか取れないと思います。
保育士のてぃ先生として、根拠や裏付けのある子育てメソッドをYouTubeで見てもらって、気軽に取り入れてほしいですね。

今後は、保育士がここで働きたいと憧れるような「プロ中のプロが集まる保育園」を作りたいです。
保育士は資格を持って働く、いわば子育てのプロです。
画一的な対応をするのではなく、子ども一人ひとりに合った対応を、適切な環境とタイミングで実行できることが、プロとしての最低条件だと思っています。

労働環境、給与面などロールモデルとなる保育園があれば、保育士はモチベーションが上がり、離職しないどころか、自発的に学ぶ時間を増やすでしょう。
学ぶ保育士が増えれば良い保育ができます。
良い保育ができれば親が子育てに悩む時間も減らせると思います。

子育ての環境は年々変わっています。
例えば20年前は幼稚園に通う子どもが多くいました。
幼稚園に通うということは、両親のどちらかが早い時間帯に子どもを迎えに行ける環境です。
でも今は両親ともにフルタイムで働く家庭が増えています。
子育ての在り方も価値観も変化してるのだから、保育業界や保育士の価値観もそれにあわせてアップデートしないといけないと思います。

変化するためには、情報を常にキャッチアップする必要があると思います。
勉強する余裕がないのもわかります。
だからこそ業務を効率化して、勉強できる時間を作るのが大切です。
僕は保育士の中で日本一勉強をしているという自負があります。
保育に関しては妥協したくないからです。

最終的には、日本の全ての子どもを救いたいと思っています。
自分の手の届かない、姿の見えない子どもも保育したいと本気で思っています。
YouTubeで配信した僕の子育てメソッドをいいと思ってくれたパパ・ママが実践すれば、きっと子どものためになります。
それは「てぃ先生」という保育士にしかできないと思うので、今後も日本の子どもたちのために役割をまっとうしていきます。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2020年7月)のものです

この記事は役に立ちましたか?
はい いいえ
ご協力ありがとうございました
Related Stories

関連ストーリー

この記事を読んでいる人は、こんな記事も読んでいます
シェアする
Twitterでシェア Facebookでシェア

マイマガジン

旬な情報をお届け!随時、新規ジャンル拡充中!