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「俺は俺っしょ!」と言える人を増やす。
大好きな故郷・日本のキャリア教育改革に挑む
【新しいキャリア教育を作るべく人事領域で活躍・シャルマ ボニー 仁】

目次
  1. 自分の故郷は日本なんだ!
  2. キャリア教育の改革を決意した学生時代
  3. 日本人がもっと自信と誇りを持っていけるように

人はどのようにして大切にしたい価値観に気づき、人生の軸を見つけるのか。各界で活躍する方の人生ストーリーから紐解きます。今回は、株式会社ミライロの人事部兼新規事業開発の部署で働くシャルマボニー仁さんをご紹介。

インド人と日本人の「ダブル」で、海外暮らしが長かったシャルマさん。大学入学時に日本に戻ってきたとき、日本の教育システムに疑問を感じ、キャリア教育を変えようと決意します。その背景にある想いとは。お話を伺いました。

1自分の故郷は日本なんだ!

インド人の父と日本人の母のもとに生まれました。
幼少期は大阪で暮らしました。
父親の仕事や両親の教育方針で、小学校のときからカナダ、アメリカ、インドネシアなどさまざまな国で暮らしました。
中学までは勉強が苦手で、徹夜で勉強したのにテストは0点のときもありましたね。
勉強しないとダメだと先生に言われましたが、徹夜でやってもできないんだから勉強する意味なんてないと思っていました。

高校はインドにある全寮制の学校に進みました。
「インドで生きていけたら、世界中のどこでも生きていける」というのが父親の教育方針です。
親元を離れ一人になって自由な時間も増えましたが、大変でした。
学校は標高2,000メートルの場所にあって冬は寒いのに、停電でお湯が出ない日がよくあるんです。
寮の食堂は1日3食カレーの日もあって、インドでの生活に慣れるのに1年以上かかりました。

でも慣れると楽しかったです。
友達と遊んでいて「次は何するの?」と聞いたら、「なんで次のことを考えるんだい?したいときにするんだよ」と言われる。
そんなインド人の気質や文化も好きになっていきました。

成績が伸びず、モチベーションもどん底に落ちていたある日、勉強の仕方を先生と話し合いました。
先生は「それは勉強を教える私たち大人にも原因があるかもしれない。どうしたらきみが勉強できるようになるか、一緒に考えよう」と言ってくれたんです。
そんなことを言ってくれた先生は初めてだったので、すごくうれしかったですね。
それから先生と二人三脚で勉強するようになりました。
だんだんと思考が整理され、少しずつ成績が上がっていきました。

大学進学にあたり、どの国の大学に行くか考えました。
世界各国を転々としてきて、自信をもって「故郷」と呼べる国がなかったので、この機会にどの国が自分にとっての故郷なのか考え、大学選びの基準にしようと思いました。
考えた末に出てきた国は日本でした。
一番好きな食べ物はお寿司だし、暮らしてきた国の中で最も心が落ち着いた国が日本だったんです。

日本に一時帰国したとき、祖母にこのことを伝えました。
祖母は「漢字の読み書きができない、まともな敬語も話せない、下手したら標準語も怪しい。それでも自分は日本人だと名乗って恥ずかしくないの?」と叱られたんです。
確かにと思いました。
それから日本語を猛勉強して、関西の大学に進学しました。

2キャリア教育の改革を決意した学生時代

大学では室内管弦楽団部に入りました。
2年生になると後輩ができたのですが、誰に言われるでもなく自発的に毎日練習する真面目な後輩でした。
しかし後輩は周りに認められたい気持ちが強く、常にどう見られるかを気にして場に合わせるなどするタイプでした。
「やりたいことがわからない」と相談されることも多く、夜遅くまで電話で話を聞いたこともありましたね。
後輩と対話する中で、家庭環境、学校教育、さまざまな要素が絡み合って、自分らしさを内に閉じ込めてしまう人もいるのだと感じました。

大学3年のとき、教育系のベンチャー企業でインターンとして働きました。
その中で、日本の教育システムに本質的な課題があると気づきました。
画一的で受け身一辺倒な授業、問題に対する正解が一つしかないテスト。
主体性を持って考える授業がほとんどないことを知りました。
受け身の考えは思考停止をもたらし、思考停止になれば常識や慣習にとらわれて行動します。
常識や慣習から外れてしまうと、目的を見失ったり、自信をなくしたりする人もでてきます。

僕は日本が大好きです。
これから日本を背負っていく若い世代の人たちが思考停止の人生を送ったら、日本の未来はどうなってしまうのか。
憤りを感じました。
どれだけ小さくても自分も何かしなければ。
日本の若い世代が自分らしい生き方を見つけ、実現する力を育んでもらうため、「新しいキャリア教育」を作ろうと決意しました。

大学生活の中で、日本の教育の本質的な課題はわかりました。
でも、学校を卒業し社会人になったとき、どんな壁にぶつかるのかはわからない。
日本の社会人のキャリアについて知る必要があると考えました。

就職活動では主に人事職・コンサル業界を志望しました。
ダイバーシティの面でトップを走る外資系の大手IT企業に内定をもらい、大学卒業後は人事コンサルタントとして働き始めました。
主に、人事制度を良くするためのシステムを取引先に提案し、組織改善を図る業務を担当しました。
今まで知らなかった最先端の人事の考え方を日々社内から吸収することができ、楽しかったですね。

就職してから半年がたった頃、このまま人事コンサルタントの仕事を続けていいのかモヤモヤを感じ始めました。
就職後も学生時代から引き続き、プライベートの時間を使ってキャリア支援のイベントを企画したり、多くの20代の若者の相談を受けたりしていたのですが、それがすごく楽しかったんです。

やっぱり僕がしたいのは、人と対話し、「どんな仕事がしたいのか、なんのために生きるのか」を言語化して、その人が自分や他者に期待を持てるようにすることだ。
尊敬できる上司や同期に囲まれ、会社に不満はありませんでしたが、やりたいことをやるためにキャリアチェンジを考え始めました。

ある日、高校時代の同窓会がシカゴであり、有休を取って現地に行きました。
仕事での葛藤を仲の良かった友人たちに相談したら、「日本のキャリア教育の課題がわかっていて、それをどの領域で解決したいかもわかっているのに、なんで今しないんだい?」と言われたんです。
自己実現のために行動を惜しまない同級生たちの言葉。
だからこそ、心を突き刺されたような感覚でした。
僕はなんのために仕事しているのか、そもそも自分が変えたい「キャリア教育」とはなんなのか。
帰国するまでに、あらためて考えました。

転職、働き方、生き方、キャリア教育をさまざまな視点で見つめた結果、出てきた答えは「他者を理解する姿勢を持った人を増やすこと」でした。
人それぞれの強みや弱みを理解し、多様性を知り、期待をかけ合う環境・社会を作ることが大切だと気づきました。

帰国してから2ヶ月後、僕が参加している人事コミュニティの代表と話す機会があり、今の仕事への思いを語りました。
代表は「それならいい会社があるよ」と、ユニバーサルデザインの総合コンサルティング会社を紹介してくれました。
会社の話を聞いていくうちに、僕が大切にしている「多様性」という価値観を、「ユニバーサルデザイン」という事業で体現していると思いました。
その会社で人事ができるかもしれない、行動しないでどうするんだ、僕はすぐに会社の面接を受けにいきました。

3日本人がもっと自信と誇りを持っていけるように

現在は、株式会社ミライロというユニバーサルデザインの総合コンサルティング会社の人事担当として働いています。
新卒採用、社員育成、組織戦略、新人社員と1対1の対話を主に行っています。
最近は、取引先の障がい者雇用の支援にも取り組んでいます。

新入社員や内定者との対話では、個人の目標や働き方を一緒に考えます。
何がしたいのか、どうなりたいのかを言語化して、一緒に将来のビジョンを作っていきます。
対話のときはアドバイスやジャッジはせず、話をしっかり聞いて、社員が自ら答えを導き出せるようにしています。

会社の仕事とは別に、学生向けの就活イベントを開いたり、ゲストに呼ばれたりして、学生たちの相談に乗っています。

それまで画一的な教育を受けて受け身になり、自分のことをきちんと発信できなくなっている学生が就活で思い悩むのも無理はないと思います。
日本の画一的な教育は、高度成長時代では正解だったかもしれませんが、今の時代には適していないと思います。
そもそも、画一的な教育は「人間が画一的」という前提ですが、人ぞれぞれ強み・弱みも性格も価値観も違います。

また偏差値至上主義の教育では、勉強が苦手な人は社会のレールから外れた印象を持たせてしまい、本人も自信をなくしがちです。
自信がなくなると、他者と比べたり、貶めてたりして自信を得ようとします。
でもそれは本当の自信ではありません。
学校も社会も家庭も、個人の強みや弱みをを受け入れて理解し、やりたいことを互いに期待しあって後押しする世の中になればいいと思います。

18歳で日本に戻ってきて、この国が大好きだとあらためて思いました。
日本人がもっと自信と誇りを持って生きていける世の中になるよう尽力し、何を言われても「俺は俺っしょ!」と言える人を増やしていきたいです。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2020年6月)のものです

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