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やりたいことがなくてもいい。
自分を必要とする人の期待に応え続ければ
【組織活性化コンサルタント・前川由希子】

目次
  1. もっと私を褒めて!
  2. 練習→成果→褒められるのスパイラル
  3. 私を必要とする人の期待に応えたい!

人はどのようにして大切にしたい価値観に気づき、人生の軸を見つけるのか。各界で活躍する方の人生ストーリーから紐解きます。今回は、組織活性化コンサルタントの前川由希子さんをご紹介。

会社員、司会業、企業研修の講師と多種多様な仕事を経験してきた前川さん。やりたいことを決めず、自分を必要とする人の期待に応えることだったらなんでもやるのだと語ります。なぜその考えに至ったのか。お話を伺いました。

1もっと私を褒めて!

福岡県の生まれです。
2歳下の妹がいて、母親からは「お姉ちゃんなんだから」と小さいときから厳しくしつけられました。
冷蔵庫を開けるときは「開けてもいいですか?」と聞く、朝起きたら掃除をするなど、家にはいろいろなルールがあって、守れないと叱られました。
やりたいことができなくて自由がない、母親が怖いと思っていましたね。
母親としては、長女に対する私への期待があったんだと思います。

私は褒められないと存在意義がない、結果を出さないといけないと思っていましたね。

母親の期待に応えるために、何事も一生懸命頑張っていました。
「もっと私を褒めて!」とずっと思っていました。

でも、母親は完璧主義でなかなか褒めてくれませんでした。
テストでクラス3番目の点数だったのに「なんで1番になれなかったの?」と言われたりもしました。

小学1年生のときにピアノを始めました。
ピアニストになって世界中で演奏したいと思っていて、文集には「東京の音楽大学に入ってピアニストになる」と書いていました。
学校では、ピアノのためにバスケットボールやバレーボールなど突き指の危険がある球技はしませんでした。
遠足などの行事もピアノを練習するためにキャンセルしていたし、家族で旅行に行くときはピアノのある宿泊先を選んでいました。
小学校と中学校は、学校とピアノ練習以外の記憶がないほどです。

高校は200年以上の伝統がある県内の進学校に入りました。
校則や生徒手帳がない自由な校風で、部活に入る義務もなかったので、学校生活をそつなくこなしてピアノに集中しようと思っていました。

学校生活はとても楽しいものでした。
毎年春の文化祭と秋の運動会の準備がすごくて、生徒たちが自主的にやりたいことを、知恵を絞って試行錯誤しながら作り上げていくんです。
一人で演奏して自分の表現を磨くピアノと違い、みんなで何かを作り上げていく経験をして、人には個性があるんだ、一人じゃない世界って楽しいんだと思いました。

帰りが遅くなってもピアノの練習は毎日続けていました。
でも、高校3年生の夏、ふと「私はピアノの先生にはなれるかもしれないけど、きっとピアニストにはなれない。聞く人を魅了できない。才能が足りない」と思ったんです。
誰に何を言われたわけでもなく、はっと気づいたんです。
不思議な感覚でしたが、自分の中から湧き出る気持ちだったので、すがすがしかったですね。

2練習→成果→褒められるのスパイラル

高校卒業後は、都内の有名私立大学に進みました。
当時は就職氷河期で先輩たちの就職が決まらなかったり、入った会社が潰れてしまったりしていました。
学生生活は楽しかったのですが、大学で4年間勉強してもまともに就職できないことに大きな不安を感じていました。
そんな不安から、働かずに生きていくにはどうすればいいか本気で考え、大学3年生から公認会計士の専門学校に通い始めました。
資格を取るための学校に通っていれば、大学を卒業しても「資格を取る勉強をしています」と理由をつけて就職までの時間を延ばせると思ったからです。

ほとんど就職活動をせず大学を卒業し、学生時代からしていたコールセンターのアルバイトを続けながら専門学校に通っていました。
そんな生活が1年半ほど続いた頃、大学のゼミの先輩から連絡があり、「もし何もしてないなら、うちの会社で働いてみない?」と誘いを受けました。
この生活をしていて、やりたいことが見つかったわけでも、結婚が決まったわけでもない、このままじゃどうしようもないなと思い、この会社の正社員になりました。

人生最初の会社勤めは、死ぬほどつらかったです。
今までコールセンターでしか働いたことがなかったので、仕事一つするのにもちんぷんかんぷんでしたね。
普通、新卒で入社したら業務研修を経て職場に配属されますが、私は中途採用で入社したので、何もわからないまま営業の部署に配属されました。

なんとか仕事を覚えて業務をこなしていきましたが、つらさは消えません。
上司によく怒られていて、寝ているときに上司に突き落とされる夢を見ていたほどです。
励ましてくれる別の上司や先輩もいましたが、結局、25歳のとき退職しました。

数年後、福岡に戻りました。
妹の結婚式に参列したとき、式の司会者の女性にくぎ付けになりました。
きれいな格好をしていて楽しそうで、「おめでとうございます」と幸せそうに言っているんです。
なんて楽しそうな仕事なんだろう、どうせ働くならハッピーな仕事がしたいと思い、結婚式の司会を派遣する事務所を探してレッスンを受け始めました。

レッスンを受けて数ヶ月後、事務所が人材不足で、レッスン途中だけど結婚式の司会をやってみないかと話をいただき、「やってみます」と返事をしました。
まだプロレベルではないけど、失敗してはいけないと思い、家で毎日「それではご注目ください。
ウェディングケーキ入刀です」と繰り返し練習しました。
練習の甲斐あって、本番は見事成功。
新郎新婦さんはとても喜んでくれて、チップを頂けたんです。
練習して、成果が出て、褒められる。
自分の中でいいスパイラルに入った感覚になって、「もっとたくさんの司会をやりたい!」と思いました。

司会のキャリアを重ねていくうちに、式場の人から「ぜひ前川さんに司会をお願いします」と指名されるようになりました。
指名されて期待されているのがうれしくて、それに応えようと、多いときは年間70本から80本の司会をこなしていましたね。

司会業のかたわら、専門学校や社員研修の講師も務めるようになりました。
そんなある日、私の家に1冊の本が送られてきました。
送り主は、従業員を褒めて育てる人材育成をしているコンサルタントの男性で、本の著者でした。

男性はその後、「よければ私の講義を受けてみませんか」と連絡してきました。
コンサルタントのパートナーを探していて、そのお誘いだというんです。
いきなり本を送りつけて、講義を受けませんか、パートナーになりませんかと連絡してくるなんて変わった人だなと思いましたが、とりあえず関西に月1回、講義を受けに行くことにしました。
この人は私に、この分野での活躍を期待して連絡をくれたのではと感じたんです。

講義は面白かったです。
人材の育て方、組織の作り方などを学び、とても勉強になりましたね。
数ヶ月後、関西での講義が終わった後、男性から「あした夜中1時から3時に飲食店の企業研修が入っているので、同行してみませんか」とお誘いを受けました。
断る理由はないと、夜中0時に道頓堀で待ちあわせて、研修に同行しました。
男性は、研修への同行を即決で決めた私を気に入り、個別に指導をしてくれるようになりました。
私は男性の期待に応えようと、講師業に本腰をいれていくようになりました。

3私を必要とする人の期待に応えたい!

現在は組織活性化コンサルタントして独立し、講師業とコンサルタント業をメインに活動しています。
コンセプトは「今いる人材で最強のチームを作る」です。
今の時代、企業が望む人材や環境を得るのは、なかなか難くなっています。
最強の組織を作るために人を育てる必要があるなら人材育成をするし、組織の仕組みを変える必要があるならコンサルティングをするし、PRが必要ならのPRの支援をしています。

私は人生で特にやりたいことを決めているわけではないんです。
私を必要としてくれる人がいて、期待してくれる人がいて、その期待に応えられるなら、どんなことでもいいんです。

相手の期待値を大きく超えて、相手が喜んでくれたら、それが私の自信になるんです。

振り返ると、私は認められること、褒められること、感謝されることを本能的に欲していたと思います。
小さいときに、母親になかなか認めてもらえなかった反動かもしれませんね。

私は運がいいと思っています。
人生の転機はいくつかありましたが、そのときに出会った人に対し、あまり考えずに惹かれるほうにふらっと行動しています。
夜中の道頓堀の待ち合わせも「夜中だからやめようかな」と考えて行動しなかったら、たぶん今の私はないと思いますね。

行動するときは「とりあえず」の感覚を大事にしています。
興味が湧いたらとりあえずやる、行こうと思ったらとりあえず行ってみる、考える前の直感を大事にしています。
考えないで行動して失敗したこともありますが、行動したほうが後悔は少ないと思います。
早く決断して、早く行動する。
じっと考えるよりは、動きながら考えたいですね。

基本的に流されて生きてきた人生だと思っています。
これからも流されて生きていくと思うんです。
でも、私は運がいいと思っているので、流されていく人生は上々なものになっていくと思いますね。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2020年6月)のものです

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ご協力ありがとうございました
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