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自分の顔が嫌いだった私
自信を与えてくれたのは服でした
【イメージコンサルタント/パーソナルスタイリスト・原山葵】

目次
  1. 「一生に一度の毎日」を支える仕事をしたい
  2. 預金81円、イメージコンサルティングに懸ける日々
  3. 仕事を通して「みんなちがって、みんないい」を証明する

人はどのようにして大切にしたい価値観に気づき、人生の軸を見つけるのか。各界で活躍する方の人生ストーリーから紐解きます。今回は、イメージコンサルタント・パーソナルスタイリストとして活動する原山葵さんをご紹介。

小さい頃は自分の顔が嫌いで、自信がなかった原山さん。「一生に一度の毎日」を支える仕事をしたいと思い、イメージコンサルタントとして独立。お客さまの服選びを通じて自信がついたといいます。お話を伺いました。

1「一生に一度の毎日」を支える仕事をしたい

小さい頃は自分の顔が嫌いでした。
目が小さくて、鼻が低くて、口が大きくて、鏡を見るたびに嫌なところばかりに目がいき、自信が持てず、それが原因で人見知りになりました。

学校でも周りの友達とうまくなじめず、自分からは怖くて話しかけられませんでした。
小学校低学年のとき授業でグループワークをする際に、私は意思が示せず必ず余りました。
先生に促されて申し訳なく仲間に入れてもらうのが、とてもつらかったです。

父親は海外に単身赴任をしていて現地に住んでいたので、ほとんど一緒に暮らしたことがありませんでした。
母親はマイペースな楽天家で、私にいつも自由な選択肢を与えてくれました。
社会的なステータスを得るよりも、私自身が幸せになるにはどんな選択肢がよいのか、一緒に考えてくれる人でした。

高校2年生のとき、好きだった男性に振られました。
翌日は親族の結婚式があって楽しみにしていたので、こんなタイミングで振られて最悪だと落ち込みました。
暗い気持ちのまま結婚式場に行くと、今まで触れたことのない雰囲気や空気感に、一気に気持ちが明るくなりました。
こんなに温かい空間が世の中にあって、一瞬で人の感情が動くものかと感動しました。
将来は人の感情が動く場所で働いてみたい、一生に一度の結婚式を作る仕事がしたいと、高校卒業後は地元の長野県から上京し、ブライダルの専門学校に通い始めました。

昼間は結婚式場でアルバイトをして、夜は専門学校に通う生活でした。
式場では主に新郎新婦のご両親を案内する業務を担当していました。
式で父親が喜んだり泣いたりする姿を見て、「私がもし結婚したら、私の父親はこんなに喜んだり泣いたりしてくれるだろうか。私は父親に愛されているだろうか」と思いました。

就職活動の時期になり、ブライダル業界への就職を目指して活動していたある日、お世話になっていた上司がふと、「結婚式は一生に一度の晴れ舞台と言われているけれど、そもそも毎日が一生に一度の繰り返しだよね」と言ったんです。
当たり前に過ごしているけれど、忘れてはいけないことに気づかされました。
この言葉をきっかけに「一生に一度の毎日を一番近くで支える仕事をしたい」と思うようになりました。

私には何ができるだろう。
たどり着いた答えは、人間の暮らしの基盤となる「衣・食・住」に関する仕事でした。
私は将来、スキルを身につけて独立し、自分の名前で仕事をしたいと思っていました。
海外、長野、東京と離れて暮らす家族のつなぎ役になるために、時間や働く場所を自分で選べる働き方がしたかったんです。

自分の名前で仕事をするには、どの分野が一番早くたどり着けるだろうか。
知識やスキルもない中、得意なことで成長できる環境はどこだろう。
考えた結果、私はアパレル会社に就職し、表参道の店舗で販売員として社会人をスタートしました。

2預金81円、イメージコンサルティングに懸ける日々

アパレル業界に就職して思ったのは「全部似ている」ということでした。
お店に来てくれるお客さまを間近で見ていると、当たり前ですが一人ひとり違うんですよ。
肌の色、顔立ち、骨格、体型、キャラクター…。
そもそも同じ人間はこの世に一人もいないはずなのに、なぜ似たようなデザインの服が多いのだろう?と思いました。

接客方法も同じで、どの店舗も似た印象でした。
現場で働く前は気にならなかった販売員さんの「お似合いですね」という言葉も、自分が伝える立場になった瞬間に「そもそも似合うってなんだろう?」と疑問に変わりました。
根拠をきちんと言語化してお客さまに伝えたい気持ちが日に日に強くなっていきました。

似合う理由を調べていくうちに知ったのが「イメージコンサルタント」という仕事でした。
肌や目・髪の色を元にした「パーソナルカラー分析」と、顔立ちや体つきの特徴を含めて行う「パーソナルデザイン診断」で一人ひとりに似合う服を理論的に落とし込んで提案していく職業です。
この知識があれば、お客さまに本当に似合う服が提案できるかもしれない。
私は資格を取るために勉強を始め、21歳のときに資格を取得。
販売員と並行してイメージコンサルタントの仕事を始めました。

幼い頃からずっと自分の顔立ちを悪い方向に捉えて生きてきました。
ですが、自分自身が仕事を通じて日々いろいろな人と出会い、さまざまな表現の「美しさ」に触れることで「美」の基準は人によって違うと気づきました。
私の小さい目を「優しい目元だね」と褒めてくれる人もいて、「私にとっては長年のコンプレックスだけど、そんなふうに思ってくれている人もいるんだ!」と驚きました。
美しさとは、誰かと比べて測るものではないと、ようやく気づけたのです。

販売員としては、知識を得たことでお客さまに自信を持って似合う服を提案できるようになり、売上がどんどん伸びていきました。
「原山さんがいるから、この店で買いたい」と言ってくれるお客さまもいて、うれしかったですね。

一方で、休みの日を利用して活動していたイメージコンサルタントの仕事はほとんどありませんでした。
当時、イメージコンサルタントという職業は、今よりも情報が少なく、あまり知られていませんでしたね。
知っているのはごく一部の女性くらいで、特に自分と同世代の方々には広まっていない印象でした。
販売員として実績を出していることで、なんとか自信を保っていましたが、内心焦っていました。

ある日、預金通帳を見たら残高が81円になっていました。
当時21歳、少ない給料の中でやりくりしていましたが、もろもろの自己投資の影響もあり生活は困窮していました。
でも、まったく諦めるつもりはありませんでしたね。
「この話はいつか絶対良いネタになる」と、”残高81円”と書かれた通帳の記録を写真に残しました。

イメージコンサルティングは、年齢や性別問わず、今後個人が活躍するビジネスシーンで重要になると感じていました。
「どうすれば必要としてくれる人に情報が届くだろう?」と、表参道の職場から新宿駅まで毎日歩いて帰りながら、頭の中を整理していましたね。

少しずつイメージコンサルティングの依頼が増えてきたある日、販売員の仕事を辞めて独立するべきかどうか、海外にいて何年も会っていない父に相談する機会がありました。
このとき生まれて初めて父と本気で対話したと思います。

私の相談に対し、「夢を応援したいし、好きなように生きてほしいと思う。でも、夢がかなわず、現実に直面したときの大きな苦しみを娘には味わってほしくない。応援したい気持ちはあるけど、安定した幸せを選んでほしいのが本音だ」と静かに話してくれました。
今まで父が自分をどう思っているか聞いたことがなかったので、そのときは電話越しの父に気付かれないよう泣きましたね。
「自分の娘をもっと信じなさいよ」とも思いましたが(笑)、何よりも父からの愛情を感じたことで改めて気合いが入りました。

もっとイメージコンサルティングのことを知ってもらおうと、SNSを使って発信するようにしました。
似合う服がわからなくて悩んでいる人の投稿を見つけては、私が一つずつアドバイスしたこともありました。
すると、だんだんと投稿を見てくれる人が増えてきました。

SNSでの発信を始めた数ヶ月後、新規申し込みの募集をかけたところ半年先まで一気に予約が埋まったことがありました。
こんなに多くの方々に選んでいただけたんだと本当にうれしくなりました。
「自分を必要だと思ってくれている人のために、時間とパワーを使いたい」と、23歳のときに販売員を辞めて独立しました。
その後、ありがたいことに全国からお客さまが集まり「1ヶ月の予約が4秒で埋まるイメージコンサルタント」として話題にしていただけるようになりました。

3仕事を通して「みんなちがって、みんないい」を証明する

現在は独立してイメージコンサルタントとして活動しています。

これまでに700人以上のお客さまに、似合う服を一人ひとり時間をかけて提案してきました。
お客さまからは「以前よりも前向きになりました」「誰かと会うのが楽しみになりました」「これからの人生、ますます楽しみになりました!」とご感想をいただくことが多いです。
ファッションには見た目を変える以上の可能性があるんだなと改めて感じます。

社会人になったばかりの頃は「服」はあくまで想いを体現するツールの一つでした。
しかし服をきっかけにさまざまな変化を起こしているお客さまを間近で見る中で、私自身も服が大好きになりました。
服を通じて新しい自分に出会い、少しずつ行動が変わっていくと、話す言葉が変わります。
言葉が変わると、内面にも自然と変化が現れてきます。

私も同じです。
小さい頃、自分の顔が嫌いで泣いていた私はもういません。

自信を持てない人の多くは、かつての私のように他の誰かと比べて自分を苦しめていることが多いです。
私はこの仕事を通して、「みんなちがって、みんないい」をこれからも証明していきます。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2020年5月)のものです

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