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成長が全てだと思っていたけど。
「成長の呪縛」から脱し、自由になれたきっかけとは
【コーチ/ファシリテーター・鎌倉貴志】

目次
  1. いい企業で働く=成功
  2. やりたいことができれば成長は求めなくていい
  3. 個性を発揮し合える組織作りをしたい

人はどのようにして大切にしたい価値観に気づき、人生の軸を見つけるのか。各界で活躍する方の人生ストーリーから紐解きます。今回は、会社員として働きながら副業でコーチングをしている鎌倉貴志さんをご紹介。

いい会社に入って、社会的に認められることが成功で、そのためには成長を続けるしかないと思っていた鎌倉さん。ある出会いがきっかけで、「必ずしも成長しなくてもいい」と気づき、自分のやりたいことを軸に活動を始めます。お話を伺いました。

1いい企業で働く=成功

3歳のとき、母親を病気で亡くし、父親と祖父母に育てられました。
父親は自然が好きで、よくキャンプに連れていってくれました。
森の中で過ごす時間はとても心地よく、いつも楽しみでした。

小学6年生のとき、クラスでいじめが起きました。
誰か1人が対象ではなく、時期によっていじめられる子が変わっていきました。
僕もいじめられました。
塾に通っていたことで目をつけられたんです。
しばらくすると、僕へのいじめが収まり、別の子がいじめられるようになりました。
僕はいじめの対象になりたくないと思い、その子をいじめました。
そんなことをしている自分がとても恥ずかしかったですが、いじめられるよりは良いと思っていました。
結局、いじめは根本的に解決せず、いついじめられるのかドキドキしながら小学校を卒業しました。

卒業後は私立の中高一貫校に進みました。
高校では友達とよく遊び、楽しい学校生活を送っていました。
高校3年生になって大学受験に挑みました。
1日14時間勉強しましたが、結果は不合格。
このとき、人生で初めて挫折を味わいました。

一浪して希望の大学に合格し、地元の高知県から上京しました。
大学ではサークルに入り、友達もできて、充実した学生生活を送っていました。

大学3年のとき、友達に誘われ、就職活動の情報交換コミュニティに参加しました。
そこには都内の有名大学に通う優秀な学生が多く参加していました。
彼らは就職に対する意識が高く、給料が良くて責任のある仕事を新人にも任せてくれる外資系のコンサルタントや金融関係の会社を第一志望に掲げていました。

僕の通っていた横浜の大学は他の学生とあまり交流する機会がなく、有名大学の学生がこんなに就職活動に一生懸命になっていることに驚きました。
それまで僕はどこか良い会社に入れればいいやと、将来を深く考えていなかったんです。
このままではいけない、彼らみたいなイケてる人間になりたい。
就職に対する意識がぐっと上がりました。

彼らが志望する外資系のコンサルタント会社で働けたらカッコいいなと思い、コンサルティングやビジネスの戦略立案の本を読みあさりました。
コミュニティにも週4~5日参加して、たくさん情報を集めました。
知識を入れれば、彼らに追いつけると思ったんです。

大学4年生になると、もっと早く成長しなければと焦りはじめました。
付き合っていた彼女がIT企業のインターンで活躍していて、彼女の成長度合いに後れを取っていると感じたんです。
就職活動に関するあらゆる講演やガイダンスに足を運びました。
企業選びもカッコいいだけでなく、とにかく自分が成長できそうなところを意識して行いました。

いい企業に入って、努力して結果を出して、社会的に認められる。
それが「成長」であり「成功」だと思っていました。
福利厚生や働きやすさで会社を選ぶ同級生をバカにしていましたね。

同級生に対して「将来のビジョン、きちんと描けてるの?あの会社に行っても成長しないよ」と言い放つこともありました。

しかし、第一希望だった外資系のコンサルティング会社に入れませんでした。
大学受験の失敗がトラウマになってしまい、入社試験を受けて落とされるのではないかと、試験すら受けられなかったんです。
結局、ITベンチャーに就職しました。
「将来のビジョン、描けているの?」と偉そうに言っていたのに、第一志望の会社を受けなかった自分が、情けなくなりました。

2やりたいことができれば成長は求めなくていい

周りよりも仕事ができる優秀な人材になりたいと思い、就職してから2ヶ月後に社会人向けのサークルに通い始めました。
高学歴の人、起業している人など輝かしいキャリアの人が多く集まっていて、ここで人脈作りをすればもっと成長できると思ったんです。

周りに「すごいね、頑張っているのね」と言われるような仕事をのやり方をしていました。
夜中2時とか3時まで会社に残ったり、サークルの人たちと最先端のビジネスの話をしたり。
努力をしている姿勢を見せて、周りに認めてもらいたかったんです。

サークルに入ってしばらくして、サークルの代表の男性から1対1のコーチングを受ける機会がありました。
コーチングは、自分が大事にしている考えや価値観を深めるために行う対話形式のコミュニケーションです。

男性は「鎌倉くんは、なぜ成長したいの?」と僕に問いかけてきました。
そのとき、高校生の頃に学校の人気者になりたかったことを思い出しました。
小学校のときに僕をいじめた友達に「鎌倉くんって人気者ですごいね。イケてるね」と言ってもらいたかったんです。

大学時代もそうでした。
高学歴の人と仲良くなって「イケてる自分」を演出したかったんです。
社会人になってからは、スマートフォンを3つ持っていました。
誰かとご飯を食べるとき、テーブルにスマートフォンを3つ並べて、忙しいと思われようとしていました。

それもこれも周りから認めてもらいたい一心での行動だったなと気がついたんです。
自分は何をやっているんだろうと思いましたね。

ある日、サークル内で自分のやりたいことを語り合うワークショップに参加しました。
これまで自分のやりたいことを話すなんて恥ずかしくてできなかったし、話したところで誰も興味を持ってくれないだろうと思っていました。
でも、せっかく参加したからと、自分が好きなキャンプの話をしました。
すると、周りのみんなが僕の話に真剣に耳を傾けてくれたんです。
こんなに興味を持って聞いてくれるんだと、驚きましたね。
このサークルなら、自分の考えを素直に話してもいいのかもしれない、と思うようになりました。

サークルで対話を重ねるうちに、成長を軸にする生活から、成長以外を軸にする生活に徐々に変化していきました。
成長を求めていたときは、やりたくないことを取り入れてしんどくなることが多かったです。
でも、自分のやりたいことや好きなことを打ち明けて行動をしていくと、そこに成長を求めなくてもいいと気づきました。
これまで縛られていた「成長の呪縛」から抜け出せた気がしましたね。

3個性を発揮し合える組織作りをしたい

現在は、会社員として新卒採用を担当しつつ、休日を使って1対1のコーチング、グループコーチングのファシリテーター(進行役)をしています。

始めたきっかけは、初めてサークルで受けたコーチングです。
対話によって自分の内面に向き合い、成長ばかりを求めていた自分から抜け出せました。
サークルに参加している人が自分の内面に向き合い、自分の大切にしている価値観に気づいて、イキイキと生きる姿を多く見てきました。
そんな人を一人でも多く増やしたいと、コーチングを勉強しています。

これまで300時間以上、コーチングをしてきました。
「自分には何もない」と言っている人が、コーチングを通じて個性に気づき、表情や仕草、雰囲気、声のトーンが変わり、自信がついていく様子を見れるのは幸せですね。

今後は組織開発をやってみたいと思っています。
コーチングを通じて個性を発揮している人が、それぞれの強みを活かし合えれば、結果的に組織の成果につながると思うんです。
そんな組織を増やして、幸せになる人が増えていく社会を作っていきたいです。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2020年5月)のものです

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