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パラレルキャリアでわがままな人生を歩む
自分のやりたいことを言葉にして変わった人生
【パラレルキャリア研究所代表・高村エリナ】

目次
  1. 自分ひとりでいても、自分は見つからない
  2. 自分のキャリアは自分で作る
  3. 金曜日の居酒屋で愚痴を言う人を減らしたい

人はどのようにして大切にしたい価値観に気づき、人生の軸を見つけるのか。各界で活躍する方の人生ストーリーから紐解きます。今回は、「パラレルキャリア研究所」の代表・高村エリナさんをご紹介。

好きだった文章を書くことをずっと内に秘めたままだった高村さん。学生時代に先生がくれた「自分ひとりでいても、自分は見つからない」という言葉をきっかけに、行動的な人生を歩んでいます。高村さんがパラレルキャリアを推進する理由とは。お話を伺いました。

1自分ひとりでいても、自分は見つからない

小学生のときから日記をつけたり、作文を書いたりするのが好きで、将来は文章を書く仕事をしたいと決めていました。
ただ、作文に関する賞などは一度も取ったことがなく、自分には才能がないのかもしれないと思っていました。
とても内気な性格で、人に希望とか夢を語ることはできず、文章への思いは密かに持っているだけでしたね。

国立大学の附属小学校に通っていて、放課後は塾と習い事で予定が詰まっていました。
低学年のうちから塾の模試を受けて、偏差値を気にするような環境でした。
それなりに楽しい学校生活は送りつつも、「いつまで勉強すればいいんだろう」と常にイライラしていました。
小学3年生のときには「学歴ってバカバカしいな」と思っていましたね。
ただ、大手企業に勤める親からの期待も感じていたし、系列の中学・高校に進学できないのも怖かったので、勉強に嫌気がさしても投げ出す勇気はありませんでした。

中学・高校時代も同じ系列の附属校に進みましたが、部活もせず、かといってガリ勉というわけでもなく、何にも打ち込みませんでした。
親が決めた小学校受験の延長で進学したので「自分で選んだ居場所じゃない、でもそれを捨ててまでやりたいこともない」と悩み、部活を楽しむ心境になれなかったんです。
敷かれたレールを不満に感じつつも、やりたいことを見つけて飛び出すこともできない自分に、コンプレックスを抱えていました。
同級生には特技を見つけて活躍している人も多かったので、自分と比べて眩しく感じていましたね。

高校2年生のとき、都内の私立大学の学園祭に行ったら、学生たちがイキイキと輝いていて、こんな大学に入れたら毎日楽しそうだと思い、受験して進学しました。
初めて能動的に選んだ進路でした。
大学は自由な校風で、奔放で個性的な友人と過ごす中で「人生、自由でいいんだな」と肩の力が抜けました。

入学直後、コミュニケーションをテーマにした授業を受けました。
その中で先生が言った「自分ひとりでいても、自分は見つからない。いろいろな人と群れ合いなさい」という言葉を聞いたとき、「私に足りなかったのはこれだ」とハッとしました。
文章が好きなことも人に言わず、コミュニティにも属さず、人とぶつかることをしてきませんでした。
他人に自己開示しないから、自分が見つからない。
自分に足りないものをまるで先生に言い当てられているような気がしました。

2自分のキャリアは自分で作る

大学時代には食わず嫌いをせずたくさんの人と関わって経験を増やしたいと思い、まず大学受験の予備校で高校生向けに小論文を教えるインターンに参加しました。
将来、文章に携わる仕事を目指すときに可能性を広げたい気持ちもありました。

大学に入るきっかけになった学園祭の運営団体にも参加して、社会貢献関連のプロジェクトを立ち上げました。
当初は学園祭の趣旨にそぐわないと内部で反対されましたが、メンバーのうち約80人と一人ひとり話し合いました。
どうしたら反対理由を解消できるか、じっくりと対話を重ねた結果、組織の中で承認が下りて企画を通すことができました。
人と何かを作り上げる喜びを知れた経験でした。

文章を書くことにもそれ以外のことにも挑戦した大学生活も終わりに近づき、いよいよ進路を決める時期になりました。
22歳の誕生日、同じゼミの先輩で小説家志望の男性から「きみ、将来どうしたいの?」と聞かれました。
私は「文章に関わる仕事がしたいです」と即答しました。
色々なことを試しても、やはり文章への思いは変わりませんでした。

その先輩は書籍の執筆をした経験があり、その制作を手がけたプロダクションには70代の敏腕女性社長がいました。
その社長が若いライターを探しているということで、紹介してもらい彼女の元でライターとしてのキャリアを始めることになりました。
やりたい気持ちを伝えたことで、チャンスが舞い込みました。

しかし、入ってから半年も経たず社長がガンであることが判明、会社をたたむことになり、私は編集プロダクションを離れることになりました。
私はここでライターになるつもりだったので、普通の就職活動をしていません。
卒業まであと半年という時期だったのでとても焦りましたね。

ライターの仕事で出会った関係者に仕事が欲しいと相談したのですが、全く相手にされませんでした。
現役女子大生ライターということもあって、ちやほやされる場面も多かったのですが、名刺を失った瞬間に周りにいた人が去りました。
駆け出しだった私に仕事が来たのは会社の看板や肩書があったからで、私個人に価値を感じている人が誰もいなかったことに気づきました。
ショックでしたね。
結局、留年して就職活動を行い、編集プロダクション時代に企画を持ち込みたかった出版社に就職しました。

ようやく文章に携わる仕事ができると期待していたら、配属されたのは庶務の仕事でした。
辞令を聞いたときは編集に携われずショックでしたが、会社にはいろいろな仕事があるから、一生懸命やってみようと思いました。
その反面、文章の仕事を諦めきれない自分もいました。

そんな社会人1年目の6月、学生のときにお世話になったNPOの代表と再会したとき、「旅行記を書いていて、出版したいと思っている」と言われました。
これはチャンスだと思い、執筆を手伝わせてほしいとお願いしました。
平日の業務後や週末の時間を使って自力で編集作業を行い、1年かけて、電子書籍を出版。
ネット通販サイトの3部門で販売数1位を獲得しました。
2014年のことでした。

周囲からは「なんで無償で編集しているの?」「未経験なのに出版なんてできるの?」と不思議がられたこともありました。
人に何と言われても、「編プロの解散」「編集職以外への配属」と2回も文章を書く仕事に就く夢が頓挫したので、自力でチャンスを掴むしかないと必死だったんです。
出版後は、販売数1位の実績ができたことで、ライターや編集の仕事の話が舞い込むようになりました。
このとき、自分のキャリアは自分で作れるということ、仕事が仕事を呼ぶということに気づきました。

出版とほぼ同じタイミングで会社の人事異動があり、編集の部署に異動しました。
初めからその部署にいたら、他部門の仕事を経験することも、パラレルキャリアをすることもなかったはずです。
とにかくもがいて大変だった1年目でしたが、ビジネスマンとしての視野が広がったという意味で幸運でした。

3金曜日の居酒屋で愚痴を言う人を減らしたい

現在は出版社に勤めながら、2018年に立ち上げた「パラレルキャリア研究所」の代表を務めています。
月に1回程度の「パラキャリ酒場」というトークイベントや、スキルアップ講座を開催しています。
設立から1年半で、パラレルキャリアに関する情報を共有する場を50回ほど企画しました。

パラレルキャリア研究所を始めた理由は「金曜日の居酒屋で会社の愚痴を言う人を減らすため」なんです。

私自身、敷かれたレールに不満ばかり持っていた時期や、やりたくても希望の仕事ができない時期があったからこそ、愚痴を言っている人の気持ちもわかります。
「自分にはこの会社しかない」という依存心が強いと、世界が狭く不満をためがちです。
「不本意なキャリアを強いられている」というやらされ感があると、不満の矛先がいつも会社に向いてしまいます。
でも、社内でできる自己実現に限りがあるのは当たり前なので、不満があるなら社外でも自律的なキャリア形成を目指せばいいと思っています。

私は会社の外で活動することで、会社を好きな気持ちが増したんです。
社外に出たことで自社のいいところが客観的にわかったし、大きな組織だからこそできることもたくさんあるんだなと実感できたからです。
パラレルキャリアを続ける中で、会社でも社外でもイキイキ働けています。

人生は一度きり、人のせいにして不満を言っている時間なんてもったいない。
わがままに生きたほうが楽しいし、もっと自由に生き方を決めていいと思うんです。
人生を彩り豊かにできるかどうかは、自分次第。
その有益な手段の一つがパラレルキャリアだと思っています。

パラレルキャリアに興味がありつつも踏み出せない人から「年齢を重ねているから難しい」「若輩者だから早すぎる」なんて言い訳も耳にしますが、新しいことを始めるのに年齢制限なんてないと思います。
初心者が何もしなかったらずっと初心者のままです。

年齢を重ねて背負うものが増えると安定は捨てにくいし、若いときはスキル不足でチャンスが少ないかもしれません。
だからこそ、今の仕事に軸足を残しながら、自分のペースで可能性を開拓できるパラレルキャリアを試してみてほしいんです。
何かする前に諦める人を一人でも減らし、世の中からパラレルキャリアという言葉が必要なくなるまで活動を続けていきたいです。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2020年4月)のものです

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ご協力ありがとうございました
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