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諦めなければ失敗じゃない
劣等感があった会計士が挑戦者を応援するワケ
【公認会計士・三浦伸太郎】

目次
  1. 自分は何者なのか。劣等感を抱えた日々
  2. 現地へ足を運び、目で見て判断する重要性
  3. チャンスの格差が起きている

人はどのようにして大切にしたい価値観に気づき、人生の軸を見つけるのか。各界で活躍する方の人生ストーリーから紐解きます。今回は、愛知県名古屋市で公認会計士として働く三浦伸太郎さんをご紹介。

公認会計士とは思えない行動力で、地元の活性化や中小企業の支援をする三浦さん。劣等感を抱えていた学生時代から、どのように変化していったのか。お話を伺いました。

1自分は何者なのか。劣等感を抱えた日々

子どもの頃から経営に関する本や成功者の本をよく読んでいました。
父親が株式投資をしていて、父親の話を聞いているうちに、儲け話に興味が湧いてきましたね。
小学生の時は野球をしていました。
野球をしている友達が「夢はプロ野球選手!」と言っているときに、自分は「この実力じゃ、僕はプロにはなれないな」と達観した考えを持っていましたね。

大学生になって就職の事を考え始めました。
父親が獣医だったんですが、私は子どもの頃から犬や猫が苦手だったので、獣医にはなれません。
おじ2人が作曲家でしたが、音楽を仕事にして楽しいのだろうかと疑問を感じていました。

こうして自分のことを考えたとき、一体自分は何者なのかと劣等感を感じるようになりました。
勉強は努力しなくても、人並み以上にできたので頑張った経験がない。
そう思ったとき、そもそも自分は人生で何も頑張ってないのではと自己嫌悪に陥ったんです。

ただ、子どもの頃から読んでいた経営に関する本は大学生になっても読んでいました。
そのことを考えたとき、財務資料が読めたらいいなと思うようになりました。
せっかくなら、もっとちゃんと勉強してスキルを身につけたいと思い、公認会計士を目指すことを決意。
勉強を始めました。

大学の授業の合間に会計士試験の勉強に励みました。
1日平均で10時間以上は勉強していましたね。
しかし、猛勉強を重ねたにもかかわらず、試験に落ちてしまいました。
凄く悔しかったので、さらに勉強して2回目の試験で見事合格しました。
努力すれば願いは叶うんだと、成功体験を得ることができました。

大学卒業後、大手の監査法人に就職しました。
大手なので、担当するのは大企業が多かったです。
でも、大企業は財務担当の人材に優秀な人が多く、サポートしている実感がなく、自分がやりたいような業務ができませんでした。
仕事を重ねるうち、財務や経営指導に多く関われる中小企業と一緒に仕事をしたいと思うようになりました。

2現地へ足を運び、目で見て判断する重要性

行動するためのキッカケを作ろうと、監査法人に勤務しながら、芸能プロダクションの放送作家養成スクールに通ったこともありました。
スクールでは、自分の足で一次情報を取りにいくことの大切さを教わりました。
インターネットが発達した社会では、知りたい情報は簡単に手に入ります。
そんな時代だからこそ、実際に現地へ足を運んで、目で見て判断することの重要性を痛感しましたね。
だけど、自分が働く監査法人の依頼主は大企業がほとんど。
このままだと、自分のやりたい仕事ができないと思い、数年勤めた監査法人を辞めて自身の会計士事務所を設立しました。
2014年、35歳の時でした。

独立したての頃、アメリカのポートランドに短期留学に行きました。
35歳以下の人が仕事を辞めてリタイアしに来る街と聞いて興味が湧いたのと、会計士だけではない人物になりたくて現地で知見を得て帰りたかったからです。

現地の人たちと交流して話を聞いていくうちに、ポートランドにはいろんな生き方をしている人がいて、それぞれが挑戦をしているのが羨ましいと感じました。
趣味が高じて仕事を辞めてブルワリーを開く人、互いが互いを認め合い、それを受けいれている。
そんな街の姿勢に感動しましたね。

日本で多様性というと「女性」とか「働き方」とか、大きなくくりで考えることが多いですが、この街は一人ひとりの人生に多様性を感じました。
失敗にも寛容な街だし、新しく商売を始める人に対し、同業者も応援している。
この街の空気感は自分に合っていると思いました。

ポートランドでは毎週、大学の敷地内で、農場の生産者が自分たちで作った野菜などを直接販売するファーマーズマーケットが開かれていました。
こんなコミュニティを名古屋でも作りたいと思い、帰国後、地元の人たちを巻き込んで、公園や大きな駐車場でマーケットを開きました。
野菜だけでなく、チーズケーキ屋やお肉屋とのコラボでマーケットを開催しました。
自分たちの思いに共感できる人のお手伝いをできるのは、うれしかったですね。

名古屋での活動も精力的にこなす中、前回の訪問から1年のタイミングで再びポートランドを訪れました。
現地で参加したイベントでは、地域の人たちの思いや考えをさらに理解できるようになりました。
また、1年前より盛況になっていたブルワリーを見て、自分も前に進みたい、チャレンジしたいと思うようになりました。

3チャンスの格差が起きている

2017年、人口1万人ほどの島根県邑南町が、中小企業・事業所や起業家を支援する拠点の責任者を募集すると知り、応募しました。
大手監査法人で働いていたときに思っていた中小企業の支援が直接できると思ったからです。
全国公募を経て責任者に選ばれ、2017年10月に着任しました。

業務内容は経営相談がメーンで、事業者の業績を上げて税収を増やし、雇用創出につなげることが、私の役割として求められました。
単年契約で、報酬も公開されているので、プレッシャーの中での業務でした。
でも、地元企業の経営者や個人で事業をする人から様々な相談に乗り、多くの人に喜んでもらいました。
その笑顔を見ると元気が出ましたね。

邑南町での仕事は楽しかったですが、働いていくうちに地元の愛知県への思いが強くなっていきました。
自分なりのアプローチで愛知県をもっと発展させたい。
2019年3月に邑南町を離れ、4月に愛知県に戻りました。
東京の監査法人が名古屋で拠点を作るというので、立ち上げの陣頭指揮を執り、現在は所長を務めています。

地元では、もっと自分のことを使い倒してほしいと思っています。
特に独立して、ポートランドに行ってからの5年間は、自分にしかできない体験を数多くしてきたと思います。
非常に濃いです。
楽しいし、面白いし、面白いことが起きやすい状態が巡っている感じがします。
自分の人生が楽しくてしょうがないんです。
そんな自分をもっと活用してもらい、地元の発展に役立ててほしいです。

たくさん行動していろんな人に触れ合う中で感じるのは、今の世の中は機会の格差、チャンスの格差が起きています。
この格差が広がった結果、経験値の格差が生まれていると思うんです。

人間には承認欲求があるので、求められると単純に気持ちがいいんです。
「三浦さんにこれを任せてみたい」と思われるように行動していかないと、自分のなりたい姿には到底近づけません。

究極、諦めなければ失敗はしません。
縁もゆかりもない島根県に行った当初は、田舎に馴染めずいじめられたりしないかなと不安な気持ちもありました。
でも飛び込んでみると、意外に住民の方も受け入れてくれました。
誠実に向き合っていれば、応援してくれる人は何人か現れるんだと思いましたね。
一歩踏み出してみることの大切さを、島根で学びました。
何かに迷っている人は、ぜひ最初の一歩を踏み出してほしいです。
それができれば、次のチャレンジが待っています。

チャレンジしている人、頑張っている人が報われる世の中になればいいと思っています。
世の中に対していいものを提供している人のお手伝いをしていきたいです。
資本主義経済の中で必要以上に誰かの手段にされるような生き方や働き方は見たくありません。
世の中で働く一人ひとりが輝くよう仕組みを作って行きたいですね。

私はいろんな人や景色からインプットをもらいました。
そのインプットからたくさんアウトプットをして、自分の経験したことを他人に伝えていきたいんです。
後進の育成のためにも、多くのアウトプットを残して死んでいきたいです。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2020年4月)のものです

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ご協力ありがとうございました
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