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真田幸村が紡ぐご縁、
子どもたちに郷土愛を伝える歴史プロデューサー
【歴史プロデューサー・早川 知佐】

目次
  1. 「死ぬまで生きよ」真田一族の信念に感銘
  2. 幸村さまへの愛を語り、観光大使に
  3. 歴史を通じて、地元への愛を育んで

人はどのようにして大切にしたい価値観に気づき、人生の軸を見つけるのか。各界で活躍する方の人生ストーリーから紐解きます。今回は、歴史プロデューサーとして活動する早川知佐さんをご紹介。

元々歴史好きだった早川さんは、勤めていた古書店で、歴史を扱う書店の初代店長を任され、退職した後、独立して歴史プロデューサーとして活動します。特に、戦国武将・真田幸村への思いが強い早川さん。半生を伺いました。

1「死ぬまで生きよ」真田一族の信念に感銘

祖母がテレビの時代劇好きで、小さいときからよく一緒に見ていました。
元々オタク気質で本を読むのが好きだったのもあり、歴史上の人物を勉強するのが好きになっていきました。

一方で、1980年~90年代の洋楽が好きで、音楽もよく聞いていました。
歴史を仕事にするつもりはなかったので、高校卒業後はミュージシャンをサポートする音楽プロデューサーを目指して音楽の専門学校に進学しました。
ただ、当時は音楽業界も下降気味で、特に洋楽関連の仕事は狭き門だと講師に言われ、目的が定まらないまま日々を過ごしていました。

成人式の前日、アルバイト先でガラスが刺さり、太ももを7針縫うケガをしました。
成人式には出席できず、しばらく歩行が不便になりました。
専門学校卒業後の進路を決める時期になり、進路を選択する決断に迫られました。
音楽業界も視野に入れたのですが、新人は雑用が多く走り回るので、私では使い物にならないと思ったんです。
結局、音楽業界への就職は諦めました。

卒業後、家の近所にある古書店がアルバイトを募集していたので、働き始めました。
本が好きだったし、古い歴史の本もあっていいかなと思ったんです。
仕事は面白く、頑張った結果、アルバイトから社員となり、22歳の頃には店長を任されるまでになりました。

店長になってしばらくして、友人とアメリカ旅行に行く機会がありました。
機内での長い時間を過ごすため、話が長くて読むのに躊躇していた池波正太郎の歴史小説「真田太平記」を持参し、行きと帰りの機内で読破したんです。

それまで真田一族のことは知っていましたが、小説を読んで真田一族の生きざまに触れ、心が揺さぶられました。
諦めが悪く、何が何でも戦国の世を生き残ろうと信念を貫き通すところに感銘を受けたんです。
特に真田幸村さまに惚れ込んだ私は、帰国してから真田ゆかりの地である長野県の上田市など、幸村さまの聖地巡りをするようになりました。

ある日、勤めていた古書店が歴史好きに向けた新しい店を出す計画を打ち出しました。
歴史の本だけでなく、カフェの運営、雑貨の販売など、これまでにない新業態を展開するというんです。
会社側は歴史好きだった私に白羽の矢を立て、企画・立ち上げを任せてくれました。
歴史が仕事になると思っていなかったので、非常にうれしくてやり甲斐を持って取り組みました。

2006年、私は店舗の初代店長に抜擢されましたが、オープンから半年ほどで会社を退職しました。
店長の経験があるから販売はできるし、新店舗もきっといけるだろうと軽い気持ちで店舗運営にあたっていました。
しかし、雑貨は販売と開発、カフェはメニュー制作から衛生管理まで、扱う書籍も古書から通常の書籍に変わり、これまで経験してきた店舗運営とは勝手が違いました。
こうした業務に一からほぼ一人で取り組み、自分の理想と会社の要求に挟まれ行き詰まり、体を壊してしまいました。

仕事に取り組む中で、もっと早くくじけそうなときもありました。
そんなとき、「幸村さまがあれだけ頑張ったんだから…」と自らを鼓舞し、企画・立ち上げから初代店長業務まで約1年半務められました。
9年勤めた会社を退職するとき、周りの歴史好きの方々が「早川さんが歴史の仕事を辞めるのはもったいないから、辞めないでほしい」と言ってくれたのは、うれしかったですね。

2幸村さまへの愛を語り、観光大使に

会社を辞めたタイミングで歴史プロデューサーとして独立、「六龍堂」という屋号を名乗り始めました。
歴史好きの人たちとイベントを開いたり、歴史で地域を盛り上げたい人のアドバイスをするようになりました。
若い女性に歴史を知ってもえるような、飲食メニューの開発のお手伝いもしましたね。

一方で、自分は世間を知らない井の中の蛙だったと感じました。
もっと別の世界を知りたい、いろいろな人を見てみたい
と思い、結婚式場のレストランで接客のアルバイトを始めました。
接客の仕事は元々好きだったし、歴史プロデューサーとしては報酬をもらっていなかったので、生活費を稼ぐ意味合いもあったんです。

歴史プロデューサーとして講演中の早川さん

歴史プロデューサーとして講演中の早川さん

徐々に歴史プロデューサーとしての活動が広がる中、素人が歴史を熱く語るNHKのテレビ番組に出演しました。
そこで幸村さまへの愛を泣きながら語ったんです。
この番組がきっかけで、上田市の市長と会う機会をいただき、私の上田と真田家への思いが認められ、2008年、上田市の観光大使に任命していただきました。
上田市に縁もゆかりもない私を、幸村さまへの愛だけで観光大使に任命してくれたのは、うれしかったですね。

その頃から歴史関連の仕事で報酬をもらうことにしました。
「いつまでも無料で引き受けていたら、その後の人間も無料で引き受けないといけない。
歴史を語る後進が育たない」とアドバイスされたんです。

観光大使を務めてから数年後、「NHKの大河ドラマに真田一族を」という気運が高まり、私は誘致のための署名活動に奔走しました。
過去の大河ドラマの最多の署名は30万ほどでしたが、私たちは真田家の家紋である六文銭にかけて66万6,666の署名を集めるのを目標に掲げました。

署名は真田ゆかりの地だけでなく、全国各地から集まりました。
集まった署名の一部を上田市の皆さんがリヤカーでひいて都内のNHKまで持参したこともありました。
上田市の方々の協力もあって、最終的には83万ほどの署名が集まりました。
真田が全国で愛されているんだと思いました。
その署名が功を奏したのか、2016年に「真田丸」として大河ドラマ化されました。
アルバイト先の従業員控え室でドラマ化の知らせを受けたときは、感極まって泣き崩れました。

結婚・出産を経てからは活動をセーブし、今は商工会議所などからお招きいただいて歴史に絡めた地域活性化の話などの講演をすることが中心です。

3歴史を通じて、地元への愛を育んで

今後は、子どもに歴史に興味を持ってもらうような活動を増やしていきたいと思っています。
大人も地元の歴史を知らない人がいますが、私は未来を担う子どもに地元の歴史を見てもらいたいし、知ってもらいたいんです。

どの土地にも、何かしら良いもの、すごいものが絶対にある。
私が地元の魅力を再発見し、歴史を探っていく。
それを子どもたちに興味を持ってもらえるようアプローチしていきたいです。
子どものうちから地元に愛着を持ってくれれば、地元から離れても、帰ってきてくれます。
地元の歴史を通じて、郷土愛を持つ子どもが一人でも増えればいいと思っています。

「知りたい」の原動力は、人への興味です。
池波正太郎のエッセイの人物描写が素晴らしく、人の行動やその背景にある考え方に興味を持つようになったんです。

人間は思った通りになると思っています。
プラス思考の人は結果もプラスになるし、マイナス思考なら、マイナスの結果になると思います。
自分がなりたいビジョン、成功するビジョンを持ちつづけ、ポジティブでいることが運を引き寄せると思います。

昔から最悪の状況を考えるクセがあったんですけど、東日本大震災があってから考えが変わりました。
人間、何があるかわからない。
人生がいつ終わるかわからない。
まずは自分が日々を楽しもうと決意したんです。

古書店を退職したとき、周りからはずいぶんと心配されました。
専門学校を卒業して、何も知らないまま古書店で数年働き、外の世界を知らないままで30歳を迎えようとしていました。
でも、ある人から「人間は35歳を過ぎたら価値観が固まってしまう」と聞いたことがあって、それなら35歳までにいろいろと吸収しようと思いました。
人の良いところは素直に吸収し、悪いと指摘されたところは直すように心がけたんです。

私は幸村さまをはじめ、様々な歴史上の人物を掘り下げてきました。
彼がどんな土地で育ち、どんな性格で、どんなものを食べてきたのか、知れば知るほど愛着が湧いてきますし、それを地元の人に伝えたくなります。
真田と敵対した人物たちにも興味があり、調べていくと、その人の半生が見えてきて、歴史を知るのがより面白くなっていくんです。

私の活動の全ては幸村さまへの恩返しだと思っています。
人との出会いやいただく仕事は、全て幸村さまが持ってきた縁だと思っています。
自分が楽しく笑顔で仕事をしていれば良いご縁に巡りあえると思いますね。
幸村さまを深く知ったことで、人への興味も、歴史への興味も深まった。
今後も幸村さまに恥じないような活動をしていきたいです。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2020年4月)のものです

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