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「自分の花を咲かせて」生きていけ
女子学生から始める日本のリーダーシップ育成
【NPO法人ハナラボ代表・角めぐみ】

目次
  1. 「場」を与えること、学生は伸びていく
  2. 自分の可能性を信じようよ
  3. 全てのひとに「自分の花」を咲かせてほしい

人はどのようにして大切にしたい価値観に気づき、人生の軸を見つけるのか。各界で活躍する方の人生ストーリーから紐解きます。今回は、社会課題の解決を通して、女子学生の創造力やリーダーシップを育むNPO法人「ハナラボ」の代表理事・角めぐみさんをご紹介。

両親の離婚をきっかけに「女性の自立」を強く意識するようになった角さん。自立して生きていく中で、大学生たちの価値観が自分の時のままということに危機感を感じてNPO法人を立ち上げ、大学生たちのサポートを行っています。角さんの思いとは。お話を伺いました。

1「場」を与えること、学生は伸びていく

10代の時、両親が離婚しました。
人生何があるかわからないと思いましたね。
自立を目指すなら女子大だと、都内の女子大に入学しました。
女子大には女性解放運動のイメージがあって、女子大に行けば自立した女性になれると思ったんですよ。
実際には保守的な考え方の学生も多かったんですけど。
大学ではジェンダーについても学び、結果的に女性としての自立をさらに意識するようになりましたね。

もう一つ、中学生の頃から個性を潰す日本の教育に問題意識を持っていて、どうしたら個性を伸ばす教育ができるんだろうと考えていました。
高校生のときは、つまらなすぎて学校をさぼってばかりでした。
遅刻が学年1位になったり、成績がクラスで最下位になったり。

大学卒業後、手に職を付けようと、IT企業に入社しました。
ライターとして数年勤めた後、会社を辞めてフリーランスのウェブデザイナーとして独立しました。
でも、デザインを専門で学んでいなかったので、本質を理解できていないと感じていたんです。
それで、基礎からデザイン学び直したいと思い、美術大学の通信教育過程に編入しました。

美大では「社会のためのデザイン」をビジョンに掲げていました。
自分の問題意識をテーマにした課題が多く、問題意識を深く掘り下げていくと、いつも「女性の生き方・働き方」にたどり着くんです。
卒業時には「女性の可能性を広げたい」と起業を決意。
まずは女子学生を対象に女性の生き方・働き方を発信するウェブメディア「ハナジョブ」を作ろうと、会社を立ち上げました。
2007年のことでした。

美大に入学してから偶然、母校の学生と話す機会がありました。
久しぶりに女子学生たちと話す中で、私が学生だったときの生き方や働き方の価値観と彼女たちの価値観が殆ど変わっていないこと知り、衝撃を受けましたね。
例えば「就職の選択肢は、一般職か総合職か」といった価値観が、そのまま受け継がれていたんです。

彼女たちにとって身近な大人は、親か先生です。
身近な大人の価値観を「大人の価値観の全て」と見ていることに危機感を感じました。
世の中にはもっといろんな大人がいて、いろんな価値観がある。
彼女たちにもっと社会との接点を作るべきだと思いましたね。

会社を立ち上げてしばらくウェブメディアの制作・運用は、1人で行っていました。取材・執筆、サイトのデザインも手掛けました。
いいモノを作ればお金も入ってくると思っていましたがそんなわけもなく、お金だけが減っていきました。
1人では限界がある。
何か次の手を考えなければと悩んでいました。

「そうか、学生たちに取材・執筆のレクチャーをして、記者をしてもらればいいんだ」とひらめき、学生記者を募集することにしたんです。
学生記者が社会で活躍する女性たちを取材し、記事を執筆する仕組みです。
女子学生が社会人にインタビューすることで、彼女たちに新しい価値観に触れてもらう狙いがあります。

いろんな大人の話を聞いた学生たちが、生き方や働き方に対する考え方を広げていくのを見て、うれしかったです。
最初は何をしていいかわからないまま私の元に来た学生たちも、「場」があることで、伸びていくんだと感じました。
学校教育の場では、学生が自ら考え、行動する場が少ないとも思いましたね。

2自分の可能性を信じようよ

ハナジョブを始めてから数年経って、今度は学生たちが社会課題に向き合う場を作りたいなと思いました。
美大で学んできたデザインで社会課題を解決するというアプローチが、共感力の高い女子学生たちに向いていると思ったんです。
実際に現場で感じて、試行錯誤しながらアイデアを実際に形にする。
その中で学生たちがさらに成長するだろうなと考えました。

2011年に最初のプロジェクトがスタート、その流れで2012年にNPO法人を新たに設立しました。
それが「ハナラボ」です。
「女子学生のリーダーシップと創造力を育み、未来の社会変革の担い手を輩出する!」をミッションに、企業や自治体とともに学生たちが社会課題解決に取り組みます。

例えば、横浜市の「大佛次郎記念館」は開館当初から比べると入館者数が激減。
若い世代に文学館を知ってもらいたいと、横浜市との協働が始まりました。
横浜市在住や在学の学生を中心に、3年間で11のプロジェクトを立ち上げました。
学生たちが毎年想像以上の成果を出すので、私も毎年感動していましたね。

長野県塩尻市では、地元の美味しい野菜をもっと知ってもらおうと、学生と地元のフレンチシェフとコラボして、塩尻の野菜を使ったスープの企画・製造に取り組みました。
学生たちが自分たちで企画を考え、モノを生み出す。
学生たちが変容していく姿に、彼女たちの大きな可能性を感じました。

こうした体験を通じて、自分にとって大切なこと、向いていること、あるいは向いていないことに気づき、目指す方向が変わります。
起業も身近になるようで、いつか起業したいという学生もいます。

ハナラボに参加する女子学生たちの多くは「やりたいことが見つからない」という悩みを抱えてきます。
それに対し、私は「やりたいことは無理に探すものではなく、自分の経験や感情が蓄積されて自ずと生まれるものだから、焦る必要はない」とアドバイスします。
無理にやりたいことを探す必要はないんです。

「自分に自信がない。行動できない」という悩みも、学生たちからよく聞きます。
ただ、自信というのは、行動をしないと生まれません。
だから、「自信がない。やりたいことがない」と言う学生には「まずはやってみたら?」と言いますね。
それから、やりたいことをするにはお金が必要になることもあるので、「やりたいことが見つかるまではしっかり働いて貯金しておくのもいいよ」という話をしています。
いつか自分が感じた問題意識を、自らが動いて解決できる人になってくれたらと思っています。

「誰が何と言おうと、みんなに可能性がある。必ず出来るから、自分の可能性を信じようよ」そう学生たちに伝えています。

3全てのひとに「自分の花」を咲かせてほしい

ハナラボの事業は今後、若い世代にバトンタッチするつもりです。
私自身は、また新しいことにチャレンジしたいですね。

やらないで後悔するなら、やった後悔したほうがいい。
もちろん、行動するまでは不安もあるけれど、やって後悔したことは一度もないんです。

世界経済フォーラムが発表した2019年「ジェンダー・ギャップ指数」で、日本は153か国中121位でした。
世界の中で日本はまだまだ男女格差がありますよね。
でも今後は多様性のある社会になっていきます。
その過程で、女性の力がもっと発揮されて世の中が面白くなって、一人ひとりの行動が社会に変化を与えた結果、必然的に心地よい社会になればいいなと思っています。

「ハナラボ」の名前の由来は「自分らしい花を咲かせる」です。
誰もが社会の中で自分の花を咲かせることができるんです。
女性はもちろん、男性にも「自分の花」を咲かせてほしいと願っています。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2020年3月)のものです

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