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「自分以外はみんな先生」本音で語る場、
昼スナックママが語る40代・50代への想い
【ミドルシニアへのキャリア支援会社運営/「昼スナックひきだし」のママ・木下紫】

目次
  1. 多様な意見を聞く大切さ知った社会人ボランティア活動
  2. 本音を語る場が求められている
  3. 多様な価値観に触れて、自ら選択する人生を

人はどのようにして大切にしたい価値観に気づき、人生の軸を見つけるのか。各界で活躍する方の人生ストーリーから紐解きます。今回は、40代・50代のミドルシニアへのキャリア支援を展開する会社を運営する傍ら、「昼スナック」のママとしてカウンターに立つ木下紫乃さんをご紹介。

10代の頃から「自ら選ぶ選択」を続けて様々な職を経験し、企業研修をプロデュースする会社に10年近く勤めた木下さんは「多様性」の大切さに気づきます。木下さんが考える「多様性」と「選択」の大切さとは。お話を伺いました。

1多様な意見を聞く大切さ知った社会人ボランティア活動

私は家庭の事情で、高校生の時から両親と離れて生活していました。
そのため、10代から自ら選んで、自らの行動に責任を取る必要がありました。
若いときから自分の行動の責任をいちいち意識するのは大変でしたが、その分、自由があることも知りました。

和歌山の高校から東京の大学に進学し、人材サービスなどを手掛ける会社に就職しました。
最初はSE、その後いきなり広報部に異動になりました。
広報の業務は社内外の人たちとやり取りをします。
しかしSE時代に社内リレーションが広がっていなかったので、社内の人たちとのやり取りがスムーズにいかず、とても苦労しました。
広報の仕事自体もマスコミとの付き合いが夜遅くまであったりときつく、体調を崩し結局最初の会社は7年で辞めてしまいました。
その後、いくつかの会社で働き、結婚・海外駐妻、その後の離婚も経験しました。

数年の専業主婦を経て、2004年、36歳の時、大企業相手に研修設計をする会社になんとか就職しました。
企業の要望に応じて、自由に研修を設計するのが仕事です。
元々特に興味がある仕事だったわけではないのですが、研修を通じて社員がリーダーシップを持ったり、研修を受けた社員が昇進したりするのを見ることは、とても満足感がありました。
大企業の人材育成システムの構築に携わることができ、これまでの仕事で最もやり甲斐を感じていました。

そんなある日、テレビの報道番組で「プロボノ」特集を見ました。
プロボノは、社会人が働きながら副業的にNPOなどを手伝い、社会貢献活動をする取り組みです。
番組の中で、アメリカ資本などの外資企業は、社員に対してプロボノを推奨していることを知ったんです。

プロボノ活動を通して、企業内の画一的な意見だけではなく、多様な意見にふれることができる。
この経験によって、多様性のマネジメントや、様々な人とビジョンを共有するといった、これからのリーダーに必要なことが学べるんじゃないか、そう感じました。
これを仕事に生かそうと、徹夜で提案書を作って依頼先の企業にプロボノを取り入れた研修を提案しました。
しかし、当時は「なんでうちの社員がわざわざ業務外で社会貢献をしないといけないか」と、どの企業にも相手にされませんでした。
絶対に企業のためになると思っていたので、残念でしたね。

仕事自体に不満はなかったのですが、次第に行き詰まりを感じるようになりました。
研修内容が、企業の経営戦略に結びついてないと感じることが多くて。
また「リーダー候補」として研修に出てくる人たちも、「40代男性・一流大学卒業」など似たような経歴が多く、研修を通じて彼らから出てくる意見やアイデアも似通ったものばかり。
私は多様な意見を取り入れ、組織運営に活かしていくのがこれからのリーダーの在り方だと考えはじめていたので、そのギャップに悩むようになったんです。

企業側にプロボノを提案する一方、私も個人でプロボノ活動をするようになりました。
何人かでチームを組んで、あるNPOの活動に参加したんです。
カルチャーショックを受けましたね。
私はそれまで企業勤めしかしていなかったのですが、NPOの人たちの社会を良くしようという情熱に圧倒されました。
NPOは基本的に収益を目指す団体ではありません。
ビジネスでなく、志だけでなんでそんなに情熱を注げるんだろうと思いましたね。

チームを組んだ人同士とのやり取りも刺激的でした。
意見交換の中で軋轢も生まれましたが、みんなが意見に耳を傾ける。
多様な意見の中から新たな気づきも得られて、プロボノは学びが多くあると感じましたね。

2本音を語る場が求められている

そんな悶々としていたある日、前の会社の先輩が50歳で大学院に通っていることを知りました。
その大学院は学部から進学してきた20代の若者や、30代・40代の社会人が一緒になって、デザイン思考を基軸に社会課題解決を目指すことを学ぶ大学院でした。
ここなら多様性や社会の新しい動きを学べると思い、入学しました。

大学院では自ら学ぶ傍ら、同級生の20代の若者からキャリア相談や就職相談を受ける機会がありました。
「自分が面白いと思う会社があって、そこで働きたい」と40代・50代の人たち、つまり親やその世代の人に相談しても、「そんな名も知れない会社で大丈夫か。やめたほうがいい」と言われるというんです。
自分の価値観と上の世代の価値観の違いで悩み、葛藤していたんですね。

その悩みを聞いて、私は「自分が納得して決めたのならそれでいいよ。うまくいかなかったらやり直せばいい」とアドバイスしました。
でも、私と同じ40代・50代、ミドルシニアの多くは、自分たちが生きた時代の「大企業志向・安定志向」などの価値観を元にアドバイスします。
その価値観が間違っているとは言わないけど、それを若い世代に押しつけるのは「どうよ?」と思ったんです。

私は若い人たちを応援する気持ちを持っています。
でも、私に出来るのは、自分も社会の変化に恐れを持ちながら古い価値観で若い世代を縛ろうとする40代・50代のミドルシニアに寄り添い、その人達の挑戦を支援することだ、それが結果的に若い人たちへ支援になる。
そう心に決め、2016年、会社を設立しました。

まず、ミドルシニアの人たちは、どんなことを考えているのか探ろうと思いました。
勉強会やワークショップを企画しましたが、なかなか人が集まらない。
もっとカジュアルに本音を聞ける場を開きたいと思い、知り合いが経営しているバーを借りて単発で「スナック」を開いたんです。
そしたら人があふれるようになって。そのうち「夜には行けないけど昼なら行ける」と言う人が増えてたきた。
スナックは昼間「場」が空いてるし、夜ではなく、昼の時間に営業することにしたんです。

スナックは肩書や経歴に関係なく、分け隔てなく本音を話せる場所です。
ママとして、若い世代からもミドルシニアからも、会社や家では話せない本音、悩み、願いなどを引き出すことが出来ることがわかりました。

毎週1日、木曜日だけ昼間にオープンする昼スナックを営業するようになると、珍しさもあってか、テレビなどのメディアに多く取り上げられるようになりました。
社会の中で本音を語る場が求められているんだなと、改めて思いましたね。

今の夢は昼スナックのママを増やしていくことかな。
いろんな場所に昼スナックのママがいて、そのママを囲んで、来た人が繋がり、分け隔てなく悩みや本音や夢なんかを語れる場がもっと増えればいいなと思っています。
昼スナのママやマスターをやってみたいという問い合わせもいただくようになったので「昼スナックママ講座」も開いてみたいです。

会社の本業では、ミドルシニア向けの研修やワークショップを開き、これからの人生を考えていただく機会を作ってもらおうと奮闘しています。
自分のこれまでの半生を振り返ってもらい、自分が大事にしている価値観を導きます。
そこから、これからの時代の生き方を一緒に考え抜いて、新しい価値観を見つけていきます。
1人でも多くの人が視野を広げるよう、その人が持つ価値や培ってきたものを引き出せるよう心がけています。

3多様な価値観に触れて、自ら選択する人生を

この時代、どんな道を選んだとしても、その選択肢に対して、様々な人が様々なことを言ってきます。
でも、意見を言ってくる人の誰一人として、あなたの人生の責任は取ってくれません
だから、自分で人生を選択して、自分で責任を取ることが大事なんです。
もちろん人の意見に耳を傾けることは大事です。
でも最後は自分で決めるしかない。
そしてその選択を自分で正解にしていけばいいんです。
違ったらそこでやり直せばいい。
私自身、失敗しながらも、死ぬまで自ら選び続ける人生を歩んでいくんだと思います。

「多様性」も私が大事にしていることの一つで、大学院やスナックで学びました。
社会にはいろんな人がいて、いろんな意見があります。
多様な人が違う意見を持ち、社会で生活するからこそ、多くの価値が生まれます。
「違い」は時に軋轢を生みます。
でも私たちは、その「違い」頭ごなしに否定するのではなく、まず受け入れてから議論を始めるべきだと思います
多様であることこそが、今後の社会で価値になっていくと思います。

私自身はこれまで自ら選択して、いろんな人と出会い、いろんな会社で働いてきました。
これからももっといろんな人と出会いたいし、いろんなところに行って、もっと多様な価値観に触れてみたいです。

これからの時代、自分の課題設定に他人をどう巻き込んで共感してもらえるかが大切なことだと思います。
そのためには多くの考えや価値観に触れることが大切です。
私は「自分以外はみんな先生」だと思っています。
死ぬまで学び続けたいと思っています。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2020年3月)のものです

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