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「やりたいことが見つからない」
安定志向だった私が起業家になるまで
【株式会社ビビッドガーデン創業者/食べチョク代表・秋元里奈】

目次
  1. 「やりたいことが見つからない!」がコンプレックスに
  2. アドバイスを受けた翌日に起業を決意
  3. 人生はタイミング

人はどのようにして大切にしたい価値観に気づき、人生の軸を見つけるのか。各界で活躍する方の人生ストーリーから紐解きます。今回は、こだわりの生鮮食品を生産者から消費者に直接販売するサイト「食べチョク」を運営する秋元里奈さんをご紹介。

安定志向で金融業界を志望していた秋元さんは就職活動の説明会で衝撃を受けたIT企業に入社し、3年勤めた後に起業しました。なぜIT企業を辞めて起業したのか。お話を伺いました。

1「やりたいことが見つからない!」がコンプレックスに

祖父が神奈川県で農家を営んでいました。
家は畑があって、子どもの頃は友だちと一緒に畑で遊んでいました。
自慢の畑だったんですが、両親は農業を継がず、祖父の代で農家をやめてしまいました。

私は安定志向だった母親の影響もあって、金融業界で働きたいと思っていました。
大学では金融工学を学び、大学3年生になって就職活動をしたときも東京証券取引所や日本銀行などを志望していました。

ある日、IT企業の説明会に行きました。
説明会でお寿司が無料で食べられると聞いたので、ご飯を食べるつもりで足を運んだんです。
その説明会は衝撃的でした。
新卒1年目、2年目の若い社員が主導で運営していて、プレゼンをしたりとテキパキと動いていたんです。
この会社では1年目から裁量権を任されるプロジェクトに関わるため、自ら考えて働くことが自然に出来ているんです。
金融業界の1年目、2年目の社員でこういう人たちを見た経験はほとんどなかったので、すごく驚きましたね。

その後、女性社長が学生に向けて講演しました。
社長は「私たちは新人でも、成功確率が50%の仕事を任せる。それを必死に乗り越えることで大きく成長する。」と話していました。
金融業界とは全く違っていて、こんな仕事の仕方があるんだと思いましたね。

この説明会に行ってから、考え方が変わりました。
それまでは安定志向だったので、安定した職場に入って、一生その職場で働くことが正解だと思っていました。
でも、説明会で出会った社長や社員たちは、大変そうだけど、みんなイキイキと働いている。
私の価値観とは違う生き方をしている人たちが、輝いて見えたんです。

最終的に、金融系企業かこのIT企業かで就職先を悩んだ結果、IT企業に入社しました。
3年働いてみて、自分に生き方や働き方の選択肢が広がっているのはどっちだろうと考え、IT企業のほうが可能性があると思ったからです。

IT企業では1年目からプロジェクトをいくつか任され、成果を出しました。
やり甲斐があって面白かったですね。
部署を異動しても、与えられた仕事を忙しくも楽しくこなしていました。

しかし、働き始めて3年経ったころ、悩みを持つようになりました。
仕事は楽しいけど、これって、こなしているだけなんじゃないか。
そもそも私、何がやりたいんだろう。
働いて3年も経っているのに「やりたいことが見つかってない!」と焦りを持ち始めたんです。
それまで何も考えずに仕事をしていたことに気づき、やりたいことが見つからないのがコンプレックスになっていました。

2アドバイスを受けた翌日に起業を決意

悩みに向き合おうと、社会人向けのサークル活動に足を運び始めました。
自らの原体験に向き合ってワークショップをしたり、対話をしたりして、自分のやりたいことを探すきっかけを見つける手助けをしてくれるんです。
働き始めからの3年間は、会社の同僚たちとご飯を食べたりお酒を飲んだりする機会がほとんどだったので、外部の人の話や意見も聞いてみたかったんです。

いろんな人に自分の事を話していくと、私の実家が農家だったことに興味を持つ人が多くいることに気づきました。
農家の生まれって価値があるのかなと思い、農業に興味を持つようになりました。

興味を持つ人がいるならと思い、私の実家の農地でイベントをしようと計画を立てました。
久々に畑を見に行こうと思い、実家に戻ったのですが、その畑は手つかずで荒れ放題になっていました。
私が子どもの頃に遊んだ自慢の場所が、こんな姿になっていたのを見て、人を呼べる場所じゃないと落ち込みました。

同時に、もしかしたら全国各地の農地でもこんな状況になっているのではと思い、農業に携わってこの状況を何とかしたいと思うようになりました。
この頃、会社では「古い業界をいかに変えていくか」というプロジェクトの仕事をしていました。
そこで得た知見が、そのまま農業に活かせるかも知れないと思い、農業でビジネスをやりたいと思うようになりました。

ある日、サークルの代表の男性に「農業に携わって問題を解決したい。転職すべきか、それとも他に選択肢はあるか」と相談しました。
私の悩みを聞いた代表は「会社を立ち上げて起業すればいいのでは。それが解決に一番近いと思う」とアドバイスしてくれました。

私は、転職は考えていましたが、起業は考えていなかったので、とっさに「いやいや起業はちょっと…」とお金の面や時間の面、スキルのなさなど、否定的な部分を出して対応しました。
すると、代表は「その考えなら、一生やらないね」と言ったんです。

確かにそうだな、と思いました。
これからの人生、何があるか分からない。
年齢を重ねると、行動にも制約が出てくるかもしれない。
いまこのタイミングだからこそ、起業したほうがいいのかもしれない。
アドバイスを受けた翌日に起業を決意、すぐに会社に退職する旨を伝えました。
2016年6月のことでした。
安定志向だった私がIT企業に入って退職し、起業する考えになるとは思ってもみませんでした。

3人生はタイミング

2016年11月、会社を立ち上げ、「食べチョク」というサービスを始めました。
こだわりを持った全国の生産者が、好きなときに好きな価格で、消費者に直接販売できる「オンラインマルシェ」を展開しています。

起業すると決めてから、多くの農家さんに話を聞いていくと、中小規模の農家さんがこだわって野菜を作っても、正しく評価されていない現状があるのに気づきました。
「食べチョク」では、こうした生産者さんの課題を解決するため、特に販路開拓の支援に力を入れています。

今後は多くの農家が安定した経営を出来るよう、私たちの会社を大きくしていくのが目標です。
会社を大きくすればするほど、食べチョクで生計を立てていける農家さんも増えていきます。

一方で、食べチョクに出店していた農家さんが、廃業してしまう事態もありました。
日本の農家は減少傾向にあるのは、データでは分かっていましたが、食べチョクに出店していた農家さんが廃業してしまったのは、ショックでしたね。

こうした事態を受け、創業時よりもよりスピード感を意識するようになりました。
私たちが早く成長しないと農家さんがいなくなってしまう。
「農業待ったなし」の思いで進み、農業を後継者に継がせたいと思える産業にしていきたいです。
そのための組織作りも進めます。
2020年の私の目標は、起業家から経営者になることです。
創業時と比べて、農業の楽しさと難しさも、より深くわかってきました。
いかに会社を潰さずに持続的な会社にするかを心がけていきたいです。

これまでの半生を振り返ってみると、「人生はタイミングが重要だ」と感じますね。
20代前半の若い人たちから「やりたいことがなくて、迷っている」という相談を受けるのですが、私は「やりたいことが見つかるのは、たまたまだと思う」と話しています。

やりたいことが見つかる日は、いつやって来るか分かりません。
その日のために、とにかく成長できる環境に身を置くことが大事だと思います。
私は社会人サークルの活動に入ったのがきっかけで、起業までしてしまいました。

会社に勤めている人は、社外の交流を増やしてみるのもいいかもしれません。
いろんな人と話すことで、気づかなかった自分の特性を知ることが出来るかもしれません。
本業以外の人と関わることで、やりたいことが見つかる確率も上がると思いますし、自分と付き合う人を変えてみると、違う自分が見えてくると思いますよ。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2020年3月)のものです

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ご協力ありがとうございました
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