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母「だけ」では終われない。
普通の主婦が、音楽で世界の子ども達をつなぐ理由
【NPO法人Heart&Earth主宰・磯野共余】

目次
  1. 母であること「だけ」で終わってしまう人生で良いのか
  2. 突然浮かんだ男の子の顔
  3. 子どもたちに安心な未来を

人はどのようにして大切にしたい価値観に気づき、人生の軸を見つけるのか。各界で活躍する方の人生ストーリーから紐解きます。今回は、音楽で世界の子どもたちをつなげ、子どもたちの夢をサポートする NPO法人 Heart & Earth の代表、磯野共余さんをご紹介。

学生時代から自分の使命を追い求めるも見つからず、「私の人生はこんなもんなんだ」と諦めたこともある磯野さん。52歳の誕生日目前。突然「世界の子どもたちに音楽を届けたい、子どもたちの笑顔がみたい」と思い立ち現在の活動を始めます。感覚派だという磯野さんにどのようにして使命が「降ってきた」のか、お話を伺いました。

1母であること「だけ」で終わってしまう人生で良いのか

私は学生時代から40代までずっと、自分の使命を探し続けてきました。

両親から望まれるままに音大に入ったものの、自分の居場所を見つけることが出来ず、他の可能性を模索して動いてはみるものの、心動くものには出会えず、悶々としながら過ごしていました。

大学を卒業するまでの間に好きなことを成功させないともう夢は追えず、家庭に入るしかないと思い込んでいた20代、そこで一度人生を諦めました。
私の人生こんなものかと思いましたね。

結婚し、子どもが生まれてからは子育てに専念しましたが、下の子が小学校に上がった頃、少し落ち着くと再び「私の人生はこのままでいいのかしら?」と思うようになりました。
自分が心踊る何かを探すため、習い事や勉強も始めました。
でも、何をやってもしっくりこなかったんですよね。
地球の回転から、社会の流れから取り残されているという感覚がありました。
夫や子どもに恵まれ幸せでしたが、「自分自身」を満たしてくれるものを探していました。

もがいてももがいても、何がしたいのかわからなくて、私の人生は、このまま妻であり母であること「だけ」で終わってしまうのだと、再び人生を諦めてしまいました。

そんな中、子どもが反抗期をむかえ、接し方を学ぶため、コーチング教室に通い始めました。
あるクラスで「私は自分のことが好きじゃない」と話をしました。
何がしたいのかわからず、このままの自分ではダメだと思っていました。
すると、ある女性が「私は自分のことが大好きでたまらない」と発言。
私は驚いて、彼女の顔を見入ってしまい、自分のことを好きってみんなの前で言ってもいいんだ、と思いました。

そして、「いいところも悪いところも全部含めて、自分を好きになればいいんだ」と気づき、随分楽になりました。
また、自分を好きでなかった時間がすごくもったいないと感じました。

それからは、昔の自分と同じように何がやりたいのかわからず、同じような思いで悩んでいる女性のサポートをしたいと思うようになりました
人は生まれ育った環境や両親の性格、体験したことによって、それぞれ制限的な思考や思い込みを持っています。
そんな中で「お母さんが元気になれば子どもも自然に元気になる」ことに気付き、同年代の女性の背中を押すことができたらいいなという気持ちがわいてきました。

そんな想いを実現するため、プライベートサロンをオープンすることにしました。
探し続けていた「やりたいこと」が、やっと見つかったなと思いましたね。

同年代の女性をコーチング中の磯野さん

同年代の女性をコーチング中の磯野さん

2突然浮かんだ男の子の顔

52歳の誕生日まであと3日と迫った日の朝、いつものように家で出かける準備をしていると突然、頭の中に貧しい国で暮らす男の子の顔が浮かびました。
よくユニセフのポスターなんかで見かけるような、4、5歳くらいで目がぱちっとしていて、鼻水の跡が鼻の下に残ってる黒人の小さな男の子。
気づけば、「この子たちに音楽を届けたい、子どもたちの笑顔がみたい」と、何か大きな力に突き動かされる感覚になりました。

特に子どもに興味があったわけでもなく、黒人の男の子に会ったこともありませんでした。
途上国に行ったこともありませんでしたね。
唐突な思いつきだったにも関わらず、自然と涙が溢れ、これをやらないと死ねないとまで思いました。
ただ、数年前にコンサートに行った時、「こんな綺麗な音色を聞いたことのない子どもたちに音楽を聞かせてあげたいな」と思ったことが何回かありました。
もしかしたらその思いが蘇ったのかもしれません。

また、音楽を届けたいという気持ちと同時に、子どもたちがまだ自分では気づいていない可能性を引き出す手伝いがしたいとも思いました。
子どもたちが小さな時から自分の好きなことをみつけてくれたら自分自身の人生を楽しむことができると思いましたね。
昔の私みたいに悶々とした日々を過ごさなくてもいいと思いました。

これが私が探し求めていた使命かもしれない。理屈ではなく、感覚的にそんな衝撃が身体に走りました。
それからは全力で使命を成し遂げるべく動き出しました。
オープン準備をしていたプライベートサロンはレンタルスペースとして同じ志を持つ人たちに貸し出すことにしました。

最初は何をすればいいのか全くわからなかったので、とにかくスタディーツアーに参加してカンボジアの孤児院に行き、生まれて初めて途上国の子どもとふれあいました。
また、会う人会う人に自分のやりたいことを話すことでご縁をいただいたり、同じ志を持つ人と繋がり、仲間もできていきました。

使命が降ってきてから1年半後、同じ志を持つバイオリニストと共に、タイ北部のチェンライの卒業式で1,000人の子どもたちの前で演奏できることになりました。
タイに向けて飛行機が離陸するとき、嬉しくて涙が出ました。
本当に音楽を届けることができる!夢の一歩が叶う!と。
卒業式では、お互いの音が聞こえないくらいの歓声で、喜んでもらえているのが伝わってきました。

アカ族の村での演奏会

アカ族の村での演奏会

タイでの演奏を皮切りに、少数民族アカ族の村の広場での演奏、ウガンダでの音楽交流など途上国の子どもたちに音楽を届け続けました。
子どもたちが初めてのものに触れた瞬間の表情がたまりませんでした。
まるで新しい可能性への扉が今、目の前で開かれたといった印象を持ちました。

3子どもたちに安心な未来を

現在は Heart&Earth という NPO法人を主宰していて、「未来を担う子どもたちが安心して暮せる地球」をビションに掲げて活動しています。
具体的には、色々な国の子どもたちに音楽を届けたり、夢を引きだすためのお手伝いをしています。
特に、可能性を引き出すべき存在である親がいない子どもたちと交流を続けています。

また、世界の子どもたちにつながってほしいという想いから「五大陸交流祭」の開催も行なっています。
過去に2回開催していて、タイ、ウガンダ、バングラディッシュ、日本といろいろな国々の子どもたちに集まってもらいました。
全く異なる背景を持つ子どもたちが触れ合うことで、世界の広さや人の多様性を知り、刺激や相互理解を感じてもらうことができました。
次はより多くの国の子どもたちに集まってもらう予定です。

子ども達が安心して住める未来にするため、やりたいことはまだまだたくさんあります。
「平和」や「地球」をテーマに組み込んだ五大陸に住む人全員で歌える「Earth Harmony project」を完成させること。
それは五大陸の子どもたちや人々がハーモニーでつながるプロジェクトです。
私の中ではハーモニーとは調和のこと。
世界中の人達がハーモニーでつながったら素敵だと思いませんか。

また、世界の課題に取り組むいろんな団体の資金源になるような基金「世界平和基金(仮)」の設立。
さらには、国際サミットなど各国のリーダーが集まる場で子どもたちの歌を披露するなど、やりたいことは尽きません。

やりたいことを実現するには私たちだけではできません。
思想に共感しお手伝いいただける方を探しつつ、夢の実現に近づいていきたいです。
これまでは、特定の地域の子どもたちのためにという気持ちが強かったですが、最近は世界のため、地球のためへと、考える範囲が広がっている気がします。
さらに「これからの子どもたちが安心して暮らせる世界に貢献したい」という気持ちも強くなってきました。

若い時に夢を諦めた私でしたが、これまでもがいてきた経験、音楽やコーチングなどのスキルは全て今の活動につながっています。
無駄なことなんてひとつもない、必要な物はすでに持っているんですね
私には特別な才能はありません。
英語も未だに話せません。
あるのは平和への想いと活動を続ける覚悟だけです。

「自分なんて・・・」と必要のない思い込みや制限により、やりたいことを諦めている人、或いは最初の一歩がでない人が、私の生き様を知ってもらうことで小さな一歩を踏み出していただけたら嬉しく思います。

どうぞ自分の人生を生きてください。

※掲載している情報は、記事執筆時点(2020年3月)のものです

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ご協力ありがとうございました
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